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第二章「セントエクリーガ城下町」

第八十七話「A BLACK COMPANY」

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 今日は日曜日だからなのか、レゼンタックの中はそれほど人はいなかった。

 俺は受付の脇を抜け、運動場まで進む。


 運動場のドアを開けると、昨日とは違い、ノアが身体の後ろで手を組んで柔軟している姿が見えた。

 パッと見ただけだが、あの筋肉量で後ろに手が回る時点でノアの身体はかなり柔らかいようだ。
 昨日、首根っこを掴まれた時に違和感を感じたのは、おそらくこの柔らかさが原因だろう。

 ……やばいかも。

 昨日の夜、なんとかノアに一泡吹かせてやろうと思い作戦を考えた結果、なんとか体勢を崩して関節技に持ち込むという結論に至った。


「おう、アレン!」
「5分後に始めるからウォームアップしておけ!!」

 こちらに気づいたノアは俺に声を掛けると、武器庫の方に歩いていった。

 ノアの満面の笑みに俺の中に不安が募っていく。

 しかし逃げるわけにもいかないので、淡々と準備運動を進めた。


「おいアレン!」
「生態表はどんくらい覚えた?」

 ノアはそう言いながら準備運動をしている俺に向かって短剣を放り投げる。
 俺はそれを慌ててキャッチした。

「うーん、大体60%ぐらいかな……」

 実際は40%ぐらいだが、少し見栄を張る。

 というのも、当然のように本の中に使われているが知らない単語が多すぎて覚えるのに時間がかかる。

「けっこうだ!」
「四日後にテストして初めて壁の外の仕事ができるからな!!」」
「合格しなきゃいつまで経っても給料でないぞ!」

 ノアはそう言うと俺に向かって槍を構えた。


「……俺って今、給料でてないの?」

 俺は短剣を構えずに脱力したままノアに質問する。

 それを見てノアは槍の切っ先を地面に向けた。

「研修中なんだから当たり前だろ?」
「最初に説明……ん?」
「説明して……したぞ!!!」
「そんな事いいから構えろ!!」

 ノアは誤魔化すように槍の切っ先を俺に向ける。

 ……いや、されてないよな。

 というかこの会社、研修中は無給なのか。
 トレバーさんかアメリアさんにチクったら少しは給料でるかな……

「そんなこと聞いて……」

 俺がノアに反論しようとした瞬間、ノアが真正面から突っ込んでくる。

 そして右手一本で持った槍で、俺のこめかみに向かって薙ぎ払ってきた。

 急に始まったので反応することが出来ず避けれないことを察し、短剣の柄と刃の部分を両手を使って強く握りしめ咄嗟に受け止めようとする。

 しかし力の差は歴然で、真正面に受けたせいで俺は10mほど先に吹っ飛ばされた。


 俺は落下地点で手慣れた動きで受け身を取り、しゃがんだままノアに正対して、ゆっくりと構え直そうとしたが、既にノアが俺の頭上に飛び上がっていた。

 ノアは槍を俺の脳天めがけてそのまま振り下ろしてくる。

 俺はノアの槍が頭に触れる寸前の所で身体を横に転がし、なんとか避けることが出来た。

 しかし、慌てて顔を上げようとした俺の鼻先にノアの太い脚が落ちてくる。

「安心しろ、さっきの記憶は飛ばしてやる」
「お前は何も聞かなかった」

 ノアは俺に聞こえるようにボソッとそう呟く。

 いや、テストの件は忘れちゃダ……


 ブチッ

 首の筋繊維から破裂音に似た音が聞こえた瞬間、俺の目に映る天と地がひっくり返る。

 おそらくノアは俺の顎を蹴り上げたのだろう。

 完全に頭を狙ってきてる。


 ……WOW THIS IS A BLACK COMPANY.
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