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第二章「セントエクリーガ城下町」

第八十六話「苦慮」

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 夕食を済ませ風呂にも入り終わると、ケイをダイニングに残して俺は自分の部屋に戻る。

 当然のように夕食中もケイと話をすることはなかった。


 まだ寝るには早いので、モンスターの生態表を読みながら時間を潰す。

 とにかくまずは死なないための知識は死ぬ気で詰め込もう。
 とはいえ一週間は壁の外には出ないらしいので時間はたっぷりとある。

 それにしても、夜に一人で文字を読んでいると、なんだかテスト勉強をしているような気分で寂しい。


 9時ごろになると、ケイがダイニングからトコトコと戻ってきた。

 ケイは無言のまま寝る支度をささっと済ませ、寝床に潜る。


 俺はケイが動かなくなったのを確認すると、電気を消して寝床に入った。



 ピピピピピピピピ……

 俺は目覚ましを止めるために身体を起こす。

 この音にもだいぶ慣れてきた。

 今日はかなり熟睡できたので気持ち的にはスッキリしているが、脚の疲れはまだかなり残っている。
 脇と肩の傷は、服の中を覗かなくても治っていないのが分かる。

 訓練行きたくないな……


 外の景色を眺めながら朝ごはんまでの時間を適当に潰してからダイニングに降りると、いつもの朝ごはんが用意されていた。

 今日は昨日の夕食の余りの茄子の炒め物が出ている。


 のんびりと朝ごはんを済ませて部屋に戻ると支度を始める。

 今日は昨日の教訓を生かして、生態表も持っていく。
 昨日は試しに左手にグローブを付けていたが、不審に思われることは無かったので、指輪を隠すためにも一応これは続けよう。


 少し分厚い本をUの字に曲げてなんとかポーチに入れようと試みていると、ケイが着替えもせずにボーっとしていることに気づいた。

「……ケイ、どうしたの?」

 俺は窓際にいるケイの後ろに立って少しドキドキしながら声を掛ける。

「今日はお休みなの……日曜日だから」

 ケイは一瞬、振り返る素振りを見せたが、こちらを見ずに背中で答えた。

 それならば30分も早く支度を済ませなければ良かった。

 とはいえ、ここに居座っても気まずいので俺は鍵を置いて部屋を後にする。

 もしかしたらケイもどこかへ遊びに行くかもしれない。


「いってきまーす」

 俺はヒナコに見送られて宿を後にすると、レゼンタックの方に足を進めた。

 昨日より人混みが少ないように感じる。


 ……そうか、昨日が土曜で今日は日曜日か。


 このままレゼンタックに行ってもノアに怒られるだけなので、とりあえずレゼンタックを通り越して、近くの開いている店に入った。

 昨日デリカサンドに向かう時に目を付けていた雑貨屋だ。


 写真立てと……ペンダント……はダサいよな。
 けど他に良い案も無いしな……

 ……どうするか。


 8時50分になっても決まらなかったので、今は決めずに店を出てレゼンタックに向かう。

 今日もお昼に終わることだし、帰りにまた寄ろう。
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