レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
上 下
119 / 244
第二章「セントエクリーガ城下町」

第八十二話「訓練」

しおりを挟む
 グシュッ

 ノアの槍が当たる寸前、咄嗟に左手で顎をかばう事が出来たが、それは意味をなさなかった。

 数センチ空中に浮かび上がった俺の無防備な身体はノアにとって格好の的になる。


 バチンッ

 ノアは一瞬の内に俺のみぞおちを数発、的確に突いたが、俺は右脚を使ってなんとか槍を横にはじく。

 しかし受け身を取ることが出来ず、俺は地面に尻もちをついてしまった。

 ノアはその隙も逃さず槍を持つ手を右手一本替え、俺の頭を薙ぎ払おうとする。


 グチーン!

 俺はそれを体制を低くして辛うじて避けることが出来たが、少し遅れて同じ方向から飛んできたノアの右足に反応できず、俺の身体は2回転しながら15mほど吹っ飛ばされた。


 慌てて起き上がり、なんとか持っていた短剣を慌てて構えたが、ノアは追撃をせずに離れた所で笑っている。

 あくまでも訓練ってことか……

 ただえさえ昨日の件で足が万全でないのに、あの槍が何の木で出来ているのかは知らないが、それを蹴ったせいで脛の芯が染みる。


「スゥー、……ふっ、ふぅー」
「スッ」

 俺は呼吸を整えながらノアに切っ先を向けるように短剣を構え直すと、鋭く息を吸い込み、ノアに向かって突進する。

 槍との組み合い方は分からないが、とにかく距離を詰めないとダメなのは分かった。



「はぁ……はぁ……はぁ……、クソッ」

 ……届かない!

 しばらく攻撃を仕掛けようとしているが、ノアとの距離を詰められないどころか半身の向きと持ち手の前後を巧みに入れ替えながら四方八方に俺の持っている短剣を払い、構えさせてもくれない。
 それに加えて、俺が払われた短剣を構えの位置に戻す間に2発以上仕掛けてくる。

 払われた位置から構え直さずに反撃したいのは山々だが、それをやるとノアの攻撃が受けられず逆にやばい。

 <遁走>も発動しているし、手加減をしているのかフェイントもしてこないので、まだなんとか避けられる。
 だが攻撃を仕掛ける際にどうしても<遁走>の効果が切れてしまい、ノアに悠々と躱される。


 だが何とかノアと俺の位置を変えながら、ノアを壁に追い込むことが出来た。


「……えっ?」

 しばらく均衡状態が続くことを危惧し、体力の心配を気にしだした時、突然ノアの姿が目の前から消えた。

 突然の事で対応できず、体勢が崩れ重心が前にずれる。


 ドスッ!

 何が起こったのかを察して振り返ろうとした瞬間、後ろにいたノアに尻を前蹴りされた。

 俺は5mほど先にあった石レンガの壁に激突しそうになる。

 慌てて前に手をだして受け身を取ったが、右手が短剣と壁の間に挟まれ、激痛が走った。

 痛みを我慢しながらも急いで振り返ると、ノアの槍の切っ先が俺の喉元に触れていた。


「休憩だ!」

 ノアはそう言うと槍を立て、俺から離れるとベンチプレス用のベンチに腰かけた。

「あ゛あ゛ー」

 俺は喉から鈍い溜め息を出すと、その場に腰から崩れ落ちた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

処理中です...