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第二章「セントエクリーガ城下町」
第七十九話「人面」
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「はぁ……はぁ……はぁ……」
俺は大きな鳥から逃げるために森に向かって走っている。
しかし、いくら地面を強く蹴っても前には進まず、ふわふわと身体が浮いてしまう。
地面に手をくために四つん這いになろうと身体を曲げても指先に草が軽く触れるだけだ。
すぐそこに行けば逃げられるのに、どんなにもがいても身体は前に進まない。
あの鳥は俺を馬鹿にしているのか、頭上をぐるぐると回りながら真っ黒な瞳で俺を見ている。
バチュン!
バサッバサッ……ズサッ
恐怖するのにも疲れ切った頃、頭上で大きな破裂音がした。
数秒後、あの鳥が赤い血しぶきと共に俺の目の前に落ちてきた。
鳥は俺の目の前で身体をくねらせながら大きな翼を重そうに羽ばたかせている。
翼を動かすたびに生暖かい血がこちらに飛んできた。
気が付くと森の方に群がっている手の長い猿が俺と鳥の方をじっと見ていた。
その中から小さい一匹が近づいてくる。
そいつは鳥の近くにくると、その大きな手で鳥の頭を掴み、俺の目の前で捩じり切った。
それを見ていた他の猿が次々と森から出てきて鳥の周りに群がったと思えば、翼や足を次々と解体し始めた。
あの黒い目で俺の目をじっと見ながら。
静かな草原で、鳥の身体が引き裂かれる音だけが聞こえてくる。
ゆっくりと地面を蹴りながら猿から離れようとしていると、それに気づいた一匹の猿が、あの鳥からちぎった細い脚で俺の左わき腹を叩いた。
まるで鉄の鞭で叩かれたような痛みだ。
俺が身体を曲げて痛がる素振りを見せると、それに続いて他の猿たちも鳥の死骸を使って俺の身体を叩き始める。
なぜか叩かれれば叩かれるほど、左のわき腹だけに痛みが貯まっていった。
俺は自分を抱きしめるように、わき腹を右手でかばっていると、一匹の猿が右手を強く握った。
次の瞬間、右肩に浮遊感を感じると共に、激痛が重くのしかかる。
それに続いて残りの手や足も引きちぎられるが、その痛みは右肩だけに溜まっていった。
俺の身体から離れた物は、あの鳥のように目の前で猿たちの手によって更に分解されていく。
引き攣る笑顔を俺に向けながら。
猿たちはただ笑顔を向けるだけで笑い声は聞こえない。
血が抜けていくとともに痛みにも慣れ、体温が下がる感覚だけが残る。
猿たちは分解を終えた物で、再び俺の身体を叩き始める。
どんなに痛くても意識は一瞬たりとも途絶えないばかりか、泣き声すら出せない。
ただ無抵抗で時間が過ぎるのを待つばかりだった。
一匹の小さな猿が俺の頭を強く握った。
いびつに伸びた爪が俺のこめかみに食い込み、既に身体から全て抜けたと思っていた血液が頬を伝う。
その猿はゆっくりと俺の首をひねり始める。
首の血管が細くなり、気管も閉じ呼吸が苦しくなっていく。
よく見ると、その猿は幼い女の子の顔をしていた。
見たことのある笑顔だ。
そう、この世界にきてから何度も見たことがある。
口を開き名前を呼ぼうとした瞬間、俺の頭と身体は別々の物になった。
真っ暗な世界に、ただ草むらと雨の匂いだけが残っている。
そうか、俺は……
「っは……ふぅ」
目を覚ますと部屋の中はまだ薄暗かった。
外からは細かい雨の音が聞こえる。
首を抑えながら時計を見ると3時30分を指していた。
あの鳥にまた襲われるなんて……
夢でも見たくなかった。
見慣れたはずの天井が高く感じる……
横に目を向けると、ケイがすやすやと眠っていた。
急に体を動かしたからか、昨日の脇と肩の傷が痛む。
俺はケイの顔をしばらく眺めた後、再び布団に潜った。
俺は大きな鳥から逃げるために森に向かって走っている。
しかし、いくら地面を強く蹴っても前には進まず、ふわふわと身体が浮いてしまう。
地面に手をくために四つん這いになろうと身体を曲げても指先に草が軽く触れるだけだ。
すぐそこに行けば逃げられるのに、どんなにもがいても身体は前に進まない。
あの鳥は俺を馬鹿にしているのか、頭上をぐるぐると回りながら真っ黒な瞳で俺を見ている。
バチュン!
バサッバサッ……ズサッ
恐怖するのにも疲れ切った頃、頭上で大きな破裂音がした。
数秒後、あの鳥が赤い血しぶきと共に俺の目の前に落ちてきた。
鳥は俺の目の前で身体をくねらせながら大きな翼を重そうに羽ばたかせている。
翼を動かすたびに生暖かい血がこちらに飛んできた。
気が付くと森の方に群がっている手の長い猿が俺と鳥の方をじっと見ていた。
その中から小さい一匹が近づいてくる。
そいつは鳥の近くにくると、その大きな手で鳥の頭を掴み、俺の目の前で捩じり切った。
それを見ていた他の猿が次々と森から出てきて鳥の周りに群がったと思えば、翼や足を次々と解体し始めた。
あの黒い目で俺の目をじっと見ながら。
静かな草原で、鳥の身体が引き裂かれる音だけが聞こえてくる。
ゆっくりと地面を蹴りながら猿から離れようとしていると、それに気づいた一匹の猿が、あの鳥からちぎった細い脚で俺の左わき腹を叩いた。
まるで鉄の鞭で叩かれたような痛みだ。
俺が身体を曲げて痛がる素振りを見せると、それに続いて他の猿たちも鳥の死骸を使って俺の身体を叩き始める。
なぜか叩かれれば叩かれるほど、左のわき腹だけに痛みが貯まっていった。
俺は自分を抱きしめるように、わき腹を右手でかばっていると、一匹の猿が右手を強く握った。
次の瞬間、右肩に浮遊感を感じると共に、激痛が重くのしかかる。
それに続いて残りの手や足も引きちぎられるが、その痛みは右肩だけに溜まっていった。
俺の身体から離れた物は、あの鳥のように目の前で猿たちの手によって更に分解されていく。
引き攣る笑顔を俺に向けながら。
猿たちはただ笑顔を向けるだけで笑い声は聞こえない。
血が抜けていくとともに痛みにも慣れ、体温が下がる感覚だけが残る。
猿たちは分解を終えた物で、再び俺の身体を叩き始める。
どんなに痛くても意識は一瞬たりとも途絶えないばかりか、泣き声すら出せない。
ただ無抵抗で時間が過ぎるのを待つばかりだった。
一匹の小さな猿が俺の頭を強く握った。
いびつに伸びた爪が俺のこめかみに食い込み、既に身体から全て抜けたと思っていた血液が頬を伝う。
その猿はゆっくりと俺の首をひねり始める。
首の血管が細くなり、気管も閉じ呼吸が苦しくなっていく。
よく見ると、その猿は幼い女の子の顔をしていた。
見たことのある笑顔だ。
そう、この世界にきてから何度も見たことがある。
口を開き名前を呼ぼうとした瞬間、俺の頭と身体は別々の物になった。
真っ暗な世界に、ただ草むらと雨の匂いだけが残っている。
そうか、俺は……
「っは……ふぅ」
目を覚ますと部屋の中はまだ薄暗かった。
外からは細かい雨の音が聞こえる。
首を抑えながら時計を見ると3時30分を指していた。
あの鳥にまた襲われるなんて……
夢でも見たくなかった。
見慣れたはずの天井が高く感じる……
横に目を向けると、ケイがすやすやと眠っていた。
急に体を動かしたからか、昨日の脇と肩の傷が痛む。
俺はケイの顔をしばらく眺めた後、再び布団に潜った。
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