レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
上 下
114 / 244
第二章「セントエクリーガ城下町」

第七十七話「鬱積」

しおりを挟む
「おかえり!」

 俺がヒナコの宿の扉を開けるやいなや、ケイがダイニングから笑顔で飛び出してきた。
 その奥には、少し怒っている顔をしているヒナコが顔を覗かしている。

「ご飯食べちゃったよ!」

 ケイはそう言いながら俺の腰付近に抱き着いた。

 しかし俺の持っている赤い花の詰まった紙袋を見ると、俺から離れる。

「アレン嫌い!」
「嘘つき!!」

 ケイは俺の持っている紙袋を叩き落とし、階段を上っていってしまった。

 おそらくウォロ村に行ったことがバレたのだが、行かないなんて約束はした覚えは無い。
 しかし、こういう反応はなんとなく予想していた。


 俺は落ちた花を慎重に紙袋に戻すと、それを玄関に置き、ダイニングに行った。

 ダイニングではヒナコが仁王立ちして待っている。

「なんで謝りに追いかけないの?」
「ケイちゃん、アレンの帰りが遅いからここでずっと心配してたんだよ?」

 ヒナコは怒った目で俺を見つめる。

「……ケイが怒ったのは俺が遅くなったからじゃないと思うよ」
「そもそも、俺は嘘ついてない」

 咄嗟に言い訳が口からこぼれ出す。

 しかし俺のその言葉を聞いたヒナコは、肩をすくめ、涙目になった。

「だとしても、悪いのが自分って分かってるんだから謝らないとダメだよ!」
「今すぐ行かないとここから追い出すから!!」

 ヒナコはそう言うと俺を後ろに付き飛ばそうと、手を出してきた。

 俺は咄嗟にその手を横から手首を掴んで止め、優しくヒナコの身体の傍に戻す。


 俺はダイニングを後にし、紙袋を持って部屋に戻る。

 ケイは薄暗い寝室で布団の中にくるまっていた。


「……勝手に帰ったのは悪かったと思ってる」
「でも……」
「いや、うん……、ごめん」

 俺はしばらくケイの閉じこもった布団を眺め、色々と言いたいことを飲み込んでとりあえず謝った。

 しかし、そこから言葉が続かない。

「……もういいよ」

 しばらく静寂の時間が続き、諦めて部屋を出ようとした時、布団の中から声が返ってきた。

 俺はなにも答えずに部屋を後にする。


 ダイニングに戻ると、ヒナコがキッチンから出てきた。

 どうやら俺の夕食の準備をしていてくれたようだ。

「ケイちゃんにちゃんと謝ったの?」

 ヒナコは俺の前で再び仁王立ちになる。

「謝ったよ」
「『もういいよ』だって」

 俺はそう言うと椅子に座った。

「ケイちゃんに今日は私の部屋で寝ていいよって言ってきて」

「え……、わかった」

 俺はヒナコに少し面倒くさそうな顔を向けると、ヒナコが俺に向かってにらみを利かせた。


 仕方なく俺はダイニングを出て、重い脚を持ち上げ階段を上り、部屋に戻る。


 ケイはさっきの位置から動いていなかった。

「ヒナコが、私の部屋で寝ていいよだって」

 俺はケイが入っている布団を上から眺めながら声を掛ける。

「もういいって言ったじゃん!」

 ケイの声が返ってきたと同時に、布団が大きく盛り上がる。

 俺はなにも答えず、ケイの返事を伝えに再びダイニングに戻った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...