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第二章「セントエクリーガ城下町」
第五十二話「しばしの別れ」
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ケイは厨房を指差しながらニコニコしている。
厨房を指差しているということは、ケイはコックさんになるということなのだろうか。
「ケイちゃんお料理するの?」
俺が首を傾げていると、すかさずヒナコがケイに質問した。
「ううん!お皿洗いとお掃除するの!」
「わたし、お料理できなかったから……」
ケイは少ししょんぼりとした顔をする。
俺がノアにもて遊ばれていた時間にケイもいろいろあったようだ。
「……そろそろ行こうか」
ヒナコによると空の食器はテーブルの上に置いたままでいいそうだ。
これを片づけるのも多分ケイの仕事になるのだろう。
俺は一応トレイに三人分の器を乗せて立ち上がる。
「……あ」
目の前の一人席でトレイ2つ分の料理を次々と口に運んでいるノアと目が合った。
俺は咄嗟に目をそらし、レストランを足早に後にした。
俺たちはレストランを後にすると、役所に通帳を取りに向かった。
昨日のおじさんではない人が担当してくれたからなのか、通帳はケイがトイレに行っている間に、パパっとゲットすることが出来た。
「じゃあ、俺はここで」
俺はヒナコとケイに軽く手を振り背を向ける。
「どこ行くの?」
抵抗感を感じ振り返ると、ケイが俺のスーツの裾を引っ張っていた。
そういえばケイにこの後の予定を説明するのを忘れていた。
「あぁ、ケイはヒナコと一緒に買い物してきて」
「俺ちょっと行くところあるから」
俺はケイの手をスーツから外す。
「……うん、わかった」
ケイは不満そうな顔をしながらもヒナコのもとへ駆け寄り、ヒナコの手を握った。
俺は再びヒナコとケイに別れを告げ、その場を後にする。
数十メートルほど歩くと振り返り、ヒナコたちの姿が見えなくなったのを確認する。
「ふぅーーー、んっ」
俺はその場で一度背伸びをした後、歩幅を大きくし、武器屋に向かう足を速めた。
天気は優れてはいないが、気温と湿度がちょうどよく、散歩するにはいい気候だ。
久しぶりの一人の時間なので、すこし遠回りをして、ついでに出店を見ながら物価の感覚も養っていこう。
こうして一人でいると、2日目にしてこの生活が嫌になっているのを実感する。
これじゃあ生きていた頃となにも変わらないじゃないか……
やはり俺は小さなプライドしか持ち合わせていない、つまらないエゴイストでしかない。
本来ならば俺みたいなやつは地を這いつくばるべき存在だ。
どうしてこうなってしまったんだろう。
こんな事ならやはりあの時……
嫌、せっかくの二度目の人生なのだから、なにかしたい。
旅人?大金持ち?英雄?
なににせよ、目標がなければ俺がダメになってしまうのも時間の問題だ。
それと話し合える友達も……
ヒナコには感謝しているが、あんな反応をされてはもう相談はできない。
……とにかく、第一目標はこの世界の事を詳しく知る事にしよう。
それとあの鬼の事も少し気になる。
武器屋に近づいてきたので一度、地図を確認する。
どうやら、考え事をしている内に少し通り過ぎてしまったようだ。
地図を見ながら少し戻り、大通りを3本外れた路地に入った。
しばらくウロウロしながら歩いていると、大きく[ユバルの武器屋」と書かれている看板が目に入った。
カランカランッ
少し重い店の扉を開けると、目の前にカイが背負っていたゴツイ大剣が堂々と展示してあった。
厨房を指差しているということは、ケイはコックさんになるということなのだろうか。
「ケイちゃんお料理するの?」
俺が首を傾げていると、すかさずヒナコがケイに質問した。
「ううん!お皿洗いとお掃除するの!」
「わたし、お料理できなかったから……」
ケイは少ししょんぼりとした顔をする。
俺がノアにもて遊ばれていた時間にケイもいろいろあったようだ。
「……そろそろ行こうか」
ヒナコによると空の食器はテーブルの上に置いたままでいいそうだ。
これを片づけるのも多分ケイの仕事になるのだろう。
俺は一応トレイに三人分の器を乗せて立ち上がる。
「……あ」
目の前の一人席でトレイ2つ分の料理を次々と口に運んでいるノアと目が合った。
俺は咄嗟に目をそらし、レストランを足早に後にした。
俺たちはレストランを後にすると、役所に通帳を取りに向かった。
昨日のおじさんではない人が担当してくれたからなのか、通帳はケイがトイレに行っている間に、パパっとゲットすることが出来た。
「じゃあ、俺はここで」
俺はヒナコとケイに軽く手を振り背を向ける。
「どこ行くの?」
抵抗感を感じ振り返ると、ケイが俺のスーツの裾を引っ張っていた。
そういえばケイにこの後の予定を説明するのを忘れていた。
「あぁ、ケイはヒナコと一緒に買い物してきて」
「俺ちょっと行くところあるから」
俺はケイの手をスーツから外す。
「……うん、わかった」
ケイは不満そうな顔をしながらもヒナコのもとへ駆け寄り、ヒナコの手を握った。
俺は再びヒナコとケイに別れを告げ、その場を後にする。
数十メートルほど歩くと振り返り、ヒナコたちの姿が見えなくなったのを確認する。
「ふぅーーー、んっ」
俺はその場で一度背伸びをした後、歩幅を大きくし、武器屋に向かう足を速めた。
天気は優れてはいないが、気温と湿度がちょうどよく、散歩するにはいい気候だ。
久しぶりの一人の時間なので、すこし遠回りをして、ついでに出店を見ながら物価の感覚も養っていこう。
こうして一人でいると、2日目にしてこの生活が嫌になっているのを実感する。
これじゃあ生きていた頃となにも変わらないじゃないか……
やはり俺は小さなプライドしか持ち合わせていない、つまらないエゴイストでしかない。
本来ならば俺みたいなやつは地を這いつくばるべき存在だ。
どうしてこうなってしまったんだろう。
こんな事ならやはりあの時……
嫌、せっかくの二度目の人生なのだから、なにかしたい。
旅人?大金持ち?英雄?
なににせよ、目標がなければ俺がダメになってしまうのも時間の問題だ。
それと話し合える友達も……
ヒナコには感謝しているが、あんな反応をされてはもう相談はできない。
……とにかく、第一目標はこの世界の事を詳しく知る事にしよう。
それとあの鬼の事も少し気になる。
武器屋に近づいてきたので一度、地図を確認する。
どうやら、考え事をしている内に少し通り過ぎてしまったようだ。
地図を見ながら少し戻り、大通りを3本外れた路地に入った。
しばらくウロウロしながら歩いていると、大きく[ユバルの武器屋」と書かれている看板が目に入った。
カランカランッ
少し重い店の扉を開けると、目の前にカイが背負っていたゴツイ大剣が堂々と展示してあった。
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