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第二章「セントエクリーガ城下町」

第四十一話「相違」

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 目を覚ますとノアがニタっと笑いながら俺の顔を覗き込んでいた。
 どうやら俺はお姫様抱っこをされているようだ。

「……」

 接戦なら悔しさがあっただろうが、こんなにもあっさり負けると何も感じない。

 というか、いくら木刀だからって手で受け止めるとか無しだろ。
 実践なら……まぁいい。

 それにしても、俺ってもしかして高所恐怖症なのか?
 いままで自覚したことは一度も無かったな……

 ……賢者タイムはこの辺にしてそろそろノアに降ろしてもらおう。


「……降ろしてください」

 俺は両手で自分の顔を隠した。

 いつの間にかギャラリーがいなくなっていたのはせめてもの救いだ。

「おう!!!」
「とりあえず、お前の試験の結果だが……」

 ノアはそっと俺を地面に降ろす。

 やろうと思えばできるじゃないか。

 さて、トレバーさんに違う部署を紹介してもらおう。

「本当なら不合格と言いたいところだが、特別に合格にしてやる!!!」

「……え?」
「まじ?」

 俺はスーツについた汚れを叩き落とすのを止めて顔を上げた。

「ただし!!!」
「条件が一つ……」
「最初にやった技を俺に教えろ!!!」

 ノアは地面に落ちている木刀と木剣を拾い、木刀を俺の方に投げた。

 どうやらノアはあの技を気に入ったらしい。
 しかし、こちらとしては好都合だ。

 俺は木刀を持ってノアに指導を始めた。

 あんな繊細な技、ノアにできるはずがないだろう。



「こんな感じか?」

 そうノアが言った途端、俺の木刀が宙に浮かぶ。

 指導を始めてから約五分……

 ノアは3回試しただけで巻き上げを完全にマスターした。

 いや、確かにそこまで難しい技でもないのだが3回で俺を超えるのはやめてほしい。
 俺のプライドはもうぐちゃぐちゃだ。

 そしてノアの巻き上げを意地で防ごうとした結果、俺の手首はお釈迦になった。

「これで俺がお前に劣る事はなくなったな!」
「そしたら次は<特能>の確認をするからここで待ってろ!!!」

 ノアはそう言い残し、再び訓練場から小走りで出て行った。



 俺は4階の窓を眺めながらノアの帰りを待つ。

 すると案の定、ノアが4階の窓から飛び降りた。


 コツンッ

 先程と違い、ノアはつま先で軽やかに着地をすると、急いで辺りを見渡した。
 手にはバインダーとそれに挟まれた書類を持っている。

 これは確実な常習犯だ。
 

「よし、それでお前の<特能>の事なんだがな……」
「なぜかレゼンタックのデータベースだと確認が出来なかったんだ」
「だからとりあえず一通りここで見せてくれ!」

 ノアは足を開いて腕を組み、こちらを凝視する。


 俺は少し緊張しながらも<貧者の袋>と<猫足>をノアに見せながら説明した。

 この二つの<特能>は明らかに戦闘向きではないので、どのように評価されるか少し不安だ。


「……なるほど、おもしろい<特能>だな!!!」

 そういいながらノアは書類にいろいろと書き込んでいく。

 どうやらそこまで悪い印象では無いようだ。

「それにしてもお前……」
「なんで口に出して<特能>を使ってるんだ?」

 俺はその言葉を聞いた瞬間、首筋から血の気が引くのを感じた。
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