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第二章「セントエクリーガ城下町」
第二十九話「目覚まし」
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ピピピピピピピピ……
久しぶりに聞く音だ。
俺は仰向けの状態から身体を起こし、目覚ましを止める。
右を見ると、ケイの顔に日が差していた。
ケイの寝顔をしっかりと見るのは初めてなので新鮮だ。
俺はケイを起こすために、身体をゆする。
「おはよう」
「今日も晴れだよ」
ケイはいつものように突拍子のない事を口にしたが、目を開けずに喋っているので寝ているのか起きているのか分からない。
俺は目覚ましを7時35分にセットしケイの近くに置くと、布団をたたんんで寝室を後にした。
ピピピピピピピピ……
顔を洗い、歯磨きを済ませ口をゆすいでいると、寝室から再び目覚ましの音が聞こえ始めた。
30秒ほどすると、目覚ましの音が小さくなり、それに反比例するように、寝室の方でバタバタと音が鳴り始める。
「これどうやって止めればいいの?」
ケイが右手で目を擦り、左手で後方を指差しながら寝室から出てきた。
頭からは一本、アホ毛が生えている。
「あぁ、後で教えるよ」
「とりあえず顔洗ったら?」
「……うん」
俺は目覚ましを止めるため、ケイと交差するように寝室に戻った。
背後からは水の流れる音が聞こえ始める。
「……ん?」
寝室を見渡しても目覚まし時計が見当たらない。
しかし、音はなり続けているので、その音を頼りに捜索を始める。
音を頼りに耳を澄まして探していると俺の布団の中にくるまれた目覚まし時計を発見した。
俺は手際よく豚の腹にあるスイッチをオフにする。
8時からの朝ごはんまで20分ほどあるので窓の前であぐらをかき、外を眺めて時間をつぶす。
窓からは奇跡的に建物の隙間を通る一筋の光が差し込んでいた。
しばらくして時間を確認しようと振り返ると、体育座りで俺を見ているケイの姿があった。
おそらく、窓の外を眺める俺を眺めていたのだろう。
「なにしてるの?」
俺は立ち上がり、背伸びをしながらケイに聞く。
「なんでもない!」
ケイは体育座りを崩さずに笑顔で答えた。
「……そっか、今、何分?」
俺はケイの手元にある目覚まし時計を指差す。
「えっとね……」
「52分43秒」
ケイはなぜか秒数まで答えた。
「……そろそろ行くか」
俺はケイの返事を待たずに寝室を後にする。
「うん!」
ケイは返事と共に俺を追い越し、部屋を走って出て行った。
俺は丸机の上にある色々な物の下敷きになっていた、昨日書いた書類を持ってケイの後を追いかける。
階段を一段、降りるたびに、朝ごはんの香りが段々と強くなる。
ダイニングの引き戸を開けると、行儀よく椅子に座っているケイの姿とせっせと朝食を机の上に運ぶヒナコの姿があった。
俺は近くの棚の上に書類を置き昨日と同じ椅子に座る。
少し待っていると、全ての料理を運び終えたヒナコが俺の対面の席に座った。
朝食は昨日とほとんど同じメニューだ。
俺はヒナコの仕事が終わったのを確認して箸を出汁巻き卵に伸ばす。
「え?アレン『いただきます』やらないの?」
俺はヒナコの言葉で昨日の件を思い出し、箸を手元に置く。
「じゃあいくよ!」
「せーのっ!」
「いただきます!」「いただきますっ!」「いただきます」
昨日とは違い今日は遅れなかったが、やはりこの『いただきます』は少し違う気がする……
だが、今はお腹が空いているので、俺は何も言わずに黙々と朝ごはんを口に運んだ。
久しぶりに聞く音だ。
俺は仰向けの状態から身体を起こし、目覚ましを止める。
右を見ると、ケイの顔に日が差していた。
ケイの寝顔をしっかりと見るのは初めてなので新鮮だ。
俺はケイを起こすために、身体をゆする。
「おはよう」
「今日も晴れだよ」
ケイはいつものように突拍子のない事を口にしたが、目を開けずに喋っているので寝ているのか起きているのか分からない。
俺は目覚ましを7時35分にセットしケイの近くに置くと、布団をたたんんで寝室を後にした。
ピピピピピピピピ……
顔を洗い、歯磨きを済ませ口をゆすいでいると、寝室から再び目覚ましの音が聞こえ始めた。
30秒ほどすると、目覚ましの音が小さくなり、それに反比例するように、寝室の方でバタバタと音が鳴り始める。
「これどうやって止めればいいの?」
ケイが右手で目を擦り、左手で後方を指差しながら寝室から出てきた。
頭からは一本、アホ毛が生えている。
「あぁ、後で教えるよ」
「とりあえず顔洗ったら?」
「……うん」
俺は目覚ましを止めるため、ケイと交差するように寝室に戻った。
背後からは水の流れる音が聞こえ始める。
「……ん?」
寝室を見渡しても目覚まし時計が見当たらない。
しかし、音はなり続けているので、その音を頼りに捜索を始める。
音を頼りに耳を澄まして探していると俺の布団の中にくるまれた目覚まし時計を発見した。
俺は手際よく豚の腹にあるスイッチをオフにする。
8時からの朝ごはんまで20分ほどあるので窓の前であぐらをかき、外を眺めて時間をつぶす。
窓からは奇跡的に建物の隙間を通る一筋の光が差し込んでいた。
しばらくして時間を確認しようと振り返ると、体育座りで俺を見ているケイの姿があった。
おそらく、窓の外を眺める俺を眺めていたのだろう。
「なにしてるの?」
俺は立ち上がり、背伸びをしながらケイに聞く。
「なんでもない!」
ケイは体育座りを崩さずに笑顔で答えた。
「……そっか、今、何分?」
俺はケイの手元にある目覚まし時計を指差す。
「えっとね……」
「52分43秒」
ケイはなぜか秒数まで答えた。
「……そろそろ行くか」
俺はケイの返事を待たずに寝室を後にする。
「うん!」
ケイは返事と共に俺を追い越し、部屋を走って出て行った。
俺は丸机の上にある色々な物の下敷きになっていた、昨日書いた書類を持ってケイの後を追いかける。
階段を一段、降りるたびに、朝ごはんの香りが段々と強くなる。
ダイニングの引き戸を開けると、行儀よく椅子に座っているケイの姿とせっせと朝食を机の上に運ぶヒナコの姿があった。
俺は近くの棚の上に書類を置き昨日と同じ椅子に座る。
少し待っていると、全ての料理を運び終えたヒナコが俺の対面の席に座った。
朝食は昨日とほとんど同じメニューだ。
俺はヒナコの仕事が終わったのを確認して箸を出汁巻き卵に伸ばす。
「え?アレン『いただきます』やらないの?」
俺はヒナコの言葉で昨日の件を思い出し、箸を手元に置く。
「じゃあいくよ!」
「せーのっ!」
「いただきます!」「いただきますっ!」「いただきます」
昨日とは違い今日は遅れなかったが、やはりこの『いただきます』は少し違う気がする……
だが、今はお腹が空いているので、俺は何も言わずに黙々と朝ごはんを口に運んだ。
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