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第二章「セントエクリーガ城下町」

第二十八話「就寝」

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「それで……明日、何時に買い物に行く?」

 ヒナコは机に片肘をついて前のめりになる。

「明日は12時前ぐらいに終わるらしいけど、その後に銀行の通帳取りに行かなきゃいけないから……その後かな?」

 俺は椅子に深く座り直す。

 胸がモヤモヤして落ち着かない。

「そしたら、明日はレゼンタックの一階でお昼食べようよ!」

 ヒナコは笑顔を俺に向けたが、俺はなぜか目を逸らしてしまった。

「うん、いいよ、そうしよっか」

 俺は机の下で手遊びを始める。

「じゃあ明日、12時頃にレゼンタックに行くから一階のとこで待っててね!」

「りょーかい……」
「ケイ!そろそろ部屋戻るよ!」

 俺はケイの返事を待たずに立ち上がる。

「わたし、まだテレビ観てる!」

 ケイはテレビから離れようとしない。

 時計は8時半を差している。

「先に戻ってるから、9時になったら戻ってきてね」

 俺はそう言い残しダイニングを後にした。

「アレン!」

 廊下を進み階段を1段上った時、後を追いかけてきたヒナコに呼び止められた。

「なにか相談あったらまた聞くから!」

 俺はヒナコの顔を壁越しに覗く。

「大丈夫」
「今日は疲れてただけだから早く寝るよ」
「おやすみ」

 階段を1段降りて、ヒナコに姿を見せた。

「うん、おやすみ」

 俺はヒナコの笑顔に笑顔で答えてから階段を上り部屋に戻った。


 机の上にある袋から歯ブラシ、歯磨き粉、歯ブラシ置きを取り出すとキッチンに向かい、歯を磨く。

 それが済むと、キッチンに歯ブラシをセットしてから机にあるタオルで軽く顔を拭き、寝室で布団を準備し始める。

 布団にシーツを被せ、枕の柔らかさを確かめると、そこに寝転がりケイが戻ってくるのを待った。



 ガチャ

 しばらく布団の上でゴロゴロしていると扉の開く音が聞こえた。

 俺は音につられるように立ち上がる。

「ケイ、キッチンに歯ブラシあるから、白いやつね」
「机の上にタオルもあるから、それも白いやつね」

 俺は引き戸を開け、部屋から出ずにケイに教える。

 ちなみに俺の歯ブラシとタオルの色は薄い緑だ。
 今思えば青色を買ってケイに見せてあげれば良かった。

「わかった!」

 ケイは返事をするとキッチンで歯磨きを始めたので、俺は引き戸を閉め、再び布団に寝転んだ。


 5分もしない内にケイが寝室の引き戸を開け中に入ってくる。

「あ、ケイ、時計持ってきて」

 俺は寝ころんだままケイに指示を出す。

「うん!」

 ケイはUターンをして豚の時計を持ってくると、俺に渡して布団に飛び込んだ。

 俺は時計を受け取り7時半に目覚ましをセットすると布団から出る。

 そして寝室から出て部屋の電気を全て消すと再び寝室に戻った。

「電気消すよ?」

 俺はスイッチの前でケイに聞く。

「うん、いいよ!」

 ケイは布団を首までかぶり笑顔で返事をした。

 俺は電気を消し手探りで自分の布団に戻った。


「……わたし、アレンとヒナコちゃんがいれば寂しくないよ」

 俺がウトウトとしていると、ケイが突然、喋りかけてきた。

 ケイはいつも突拍子もないことを言う。

「……そっか」

 俺は意識と無意識の狭間で答える。

「うん、おやすみ」

 ケイは俺が眠いのを察したのか、それ以上は何も言わなかった。

「おやすみ……」

 やっと一日が終わった。
 ウォロ村での一週間が一瞬に感じるほど長くて濃い一日だった。


 明日はまた忙しくなりそうだ……
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