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第二章「セントエクリーガ城下町」

第二十七話「赤面」

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 ダイニングに近づくにつれて、ケイの笑い声が聞こえてくる。

 俺はゆっくりと引き戸を開けて中に入る。
 ケイはテレビを見ている一方で、ヒナコは手紙を読んでいるようだった。

 そしてヒナコの手元には、同じような物がぎっしりと詰まった缶箱がある。

「あ、アレンさん、おかえりなさい」
「お湯加減どうでした?」

 ヒナコは持っている手紙を缶箱にしまい始める。

 先程の事もあり、少し元気が無いように見えた。

「うん、良かったよ」

 俺はケイが笑っているのを確認すると、笑顔を作りながらヒナコの対面に座った。

 ドーナツの紙袋は既に片づけられている。

「……明日は何時にレゼンタックに行くの?」

 ヒナコは立ち上がり、食器棚からコップを取り出した。

「9時半にこいって言われてるから、9時頃にはここを出るかな」

 俺がそう言っている内に、ヒナコはコップに水を注いでくれる。

 俺はそれを拒むことなく口にした。

「それだったら8時頃にご飯の準備しておくね」

「うん、ありがとう」
「……それでさ、明日買い物に行こうと思うんだけど、女の子って服どのくらい必要?」

 俺がそう言った瞬間、ヒナコの口角が少しあがった。

「うーん、そうだね……」
「1シーズンに最低10セットは必要かなぁ」
「……そうだ!一緒に買いに行こっか?」
「どうせアレンに女の子の服なんて分からないでしょ?」

 ヒナコは椅子から立ち上がり、早口でまくしたてる。

「あぁ……うん、ありがとう」

 俺はヒナコに急に呼び捨てにされた事に加えて、勢いに気圧されてしまい、しどろもどろになってしまった。

「というか、アレンは服買わなくていいの?」

 ヒナコは椅子に座り直し、俺の方を指差した。

 俺は顎を引いて自分の姿を改めて確認すると、決して真っ白と言えないシワシワのワイシャツを着ている。
 だが、汗をかかないせいか、匂いを嗅いでも、ほのかに土の香りがする程度で臭いわけではない。

「……俺は大丈夫だよ、汗かかないし」

 俺がそう言った途端ヒナコは再び急に立ち上がり、無言で俺の方に近づいてくる。

 俺もびっくりして立ち上がり、後ろに下がろうとしたが、左足を一歩下げた所から身体が動かなくなった。

 ヒナコは3秒もかからずに至近距離まで近づくと俺の右手をつかみ、素早く持ち上げる。

「スゥーーー」

 ヒナコは俺の手首から肩、そして襟元から胸元にかけて、鼻をこすりつけるように匂いを嗅いだ。

 俺は息を止め、顔を熱くしながら、時間が過ぎるのをひたすら待った。

「うーーん」
「確かに臭くは無いけど……」
「でも汚れてるし、アレンも買った方がいいと思うよ!」

 ヒナコは腕を組んで口角に人差し指を当てながら三歩ほど下がった。

「うん……わかった」

「じゃあ明日、行こうね!」

 ヒナコは笑顔を見せ、再び椅子に座る。

 俺はヒナコが自分から離れると、ケイがテレビに夢中になってこちらを見ていない事を確認し、椅子に座った。
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