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第二章「セントエクリーガ城下町」

第二十二話「Pun」

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「急だったからちゃんとしたご飯じゃなくてごめんね」

 ヒナコは申し訳なさそうな顔をして謝る。

「ぜんぜんそんなこと無いよ」
「ね、ケイ?」

「……うん……美味しいよ」

 ケイは自分で洗った白飯を掻き込むように食べていた。

 俺と違ってケイは食欲があるらしい。

「ところで、レゼンタックの人にはアパートって言われてここにきたんですけど、どっちかって言うとここって寮とか宿に近くないですか?」
「それともどこもこんな感じですか?」

 俺は味噌汁を飲む間を縫ってヒナコに質問する。

「あー、うん、まぁ半分正解だよ!」

 ヒナコは箸を置いて話し始めた。

「ここって元々おばあちゃんが建てた宿だったんだけど、日本風の宿ってあまり人気が出なくてそれが経営難でレゼンタック直轄のアパートに早変わりって感じ」
「そういう宿も少なくないよ」
「うちは、おばあちゃんの教えでご飯も用意してるの」

「……ふーん、この料理もおばあちゃんの教え?」

 俺は出汁巻き卵を箸で持ち上げながら聞く。

「そうだよ!」
「まさに『エッグ』セレントな料理でしょ!」

 ヒナコが耳を赤くしながら、胸を張る。

「……あ、うん、美味しいよ」

 俺は静寂と共に冷たい風が首筋に流れるのを感じて慌ててフォローする。

 ケイに関しては食べるのに夢中でおそらく聞いてすらいない。

「……あ!私、口開けながら水飲めるよ!」

 ヒナコは立ち上がり水の入ったコップを持って、言った通り開けた口の中に水を流し込んでいく。

「ゴクッ……ゴクッ……カハッ!ケホッ!ケホッ!」

 ヒナコは盛大に水を吐き出した。

「なにしてんの!?」

 俺は慌ててテーブルの上にあったティッシュでテーブルの上を拭く。
 運よくご飯にはかかっていない……たぶん。

「……ごめん」

 ヒナコもティッシュで床を拭いた。

「……イチゴあるけど食べる?」

 ヒナコは水が垂れるティッシュを持って立ち上がり、キッチンに向かった。

「センキュー『ベリー』マッチ」

 俺がヒナコに聞こえないぐらいの小声で答えると、ヒナコの動きがピタリと止まった。

 どうやらヒナコの耳は相当良いようだ。

「二人とも何してるの?」

 既にご飯を食べ終わっていたケイが首を傾げてこちらを見ている。

「そうだケイ、部屋にあるドーナツ持ってきてよ」
「ヒナコも食べるでしょ?」

「う、うん!食べるよ!」

 ヒナコは慌てて答える。

「わかった!」

 そう言うとケイはトコトコとダイニングから出て行った。


 俺とヒナコはケイが部屋から出て行ったのを確認してから目を合わせる。
 そして二人共、椅子に深く座り直し、無言で夕食を再開した。
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