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第二章「セントエクリーガ城下町」

第十四話「黄空」

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「それでしたら法律の話はこの辺にして、次は地理や……」

 おっさんはノンストップで話し続ける。
 完全に目を閉じているケイの横で、俺は首筋に手を当てながら椅子に深く座り直した。

 セントエクリーガ国は人口は約9000万人で、この城下町には約20万人が暮らしている。
 地理で言うと、この城下町には東西南北に門があり、南と西には大きな山、東には海に続くとても長い道、北にはアスファルト湖というものがあるらしい。
 ウォロ村はセントエクリーガ城下町から見て南にある。
 城下町に来るときに通ったあの黒い道はアスファルトで合っていたようだ。

 アスファルト湖とやらは気になるので今度見に行こう。

 そして特産品としては国や地域に限らず農作物が豊富で、セントエクリーガ城下町の近くだとコビーさんが言っていたアグリテジアという西の山を越えた町で主に生産されているらしい。
 特にこの辺りは四季があり、様々な農作物が取れるそうだ。

 しかし、農作物と言ってもこの世界特有の植物は少なく、主に地球で存在していた植物が多い。
 というのも、甦人がこちらの世界に来るとき服や所持品が共に転生されるように、靴の裏などについた種などがこちらの世界で繁殖したことに加え、この世界の在来種は生命力があまり高くないようで地球の植物が近くにあると枯れてしまう事が多いらしい。

 ちなみに、アグリテジアでは小麦よりも米が多く生産されていて、この国の主食は米7小麦3ぐらいの割合だ。

 それと、この星の自転速度と公転速度は地球に比べて遅く、一日が24時間よりも長いが、1秒の定義を少し長くすることで調節しているという。
 だがコンマ何秒なので日常生活では何も支障はない。



「えー、これで説明会は終わりなんですけどー、なにか質問とかありますかー?」

 おっさんはホワイトボードを一度も使わずに喋り終えた。

 横を見ると、ケイはなんとか身体を起こしてウトウトしている。

 話す順番が滅茶苦茶だったために、頭の中で整理しながらなんとか理解できたが疲れてしまった


「……なんで空の色は黄色っぽいんですか?」

 この男からまともな答えが返ってくることは期待していないが、この世界にきてからずっと気になっていた事を一応、聞いてみた。

「それはですねー、たしかこの星は地球に比べて大気の層が厚いらしくてですねー、光の散乱の関係で黄色に見えるらしいですよー」
「身体に害は無いので安心してくださーい」
「他に聞きたいことはありますかー?」

 意外と納得する答えが返ってきた。

 他にも歴史について少し知りたかったが、長くなりそうだったので止めておく。
 というのも、限界を迎えたケイが机に突っ伏して眠りについていた。

「大丈夫です」

 俺はケイの肩を軽く叩き、目を覚まさせる。

「それでは、銀行の通帳は明日中にお渡しできるので、お昼過ぎにまたこちらにいらしてくださーい」
「それと言い忘れてたんですけどー、城壁の門と門の間にはテイマーや研究用モンスターの厩舎があるので、近づかない方がいいですよー」
「ではまた明日」

 おっさんはそう言い残し部屋から出て行った。

 俺のスキルボードにはテイマーという<職業>は存在しないので、きっとモンスターを扱う者の総称かなにかだろう。


「ふぅ……ケイ、終わったよ」「すみませーん、これ渡すの忘れてましたー」

 俺がケイを本格的に起こそうとした瞬間におっさんが戻ってくる。

 おっさんは二人の住民票と俺の登録証カードを机の上に重ねて置いた。

「それでは私は戻りますねー」

 俺はおっさんの尻を蹴り飛ばす想像をしながら手を振って見送った。
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