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第二章「セントエクリーガ城下町」

第十二話「嫌い」

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「ただいま」

 手遊びで時間をつぶしているとケイがトイレから戻ってきた。
 顔が少しにやけている。

 ……トイレが綺麗だったのだろうか。


「おまたせしましたー」

 ケイが戻ってきたのを見計らうようにおっさんも戻ってくる。

「一応、手続きはこれで終わりましたー」
「年間の住民税が大人が2000ギニー、子供が1000ギニーなので、二人合わせて3000ギニーかかりますが月締めの分割払いでよろしいですかー?」

「……え?」

 住民税なんてあるのか……
 いや、それはそうか。

 というか、高すぎないか?
 手持ちは残り370ギニーだ……

 でも払うしかないよな……


「はい、それでお願いし……」「僕が払いますよ」

 俺が苦笑いをしながら分割払いを了承しようとした時、コビーさんが横から入ってきた。

「いいんですか?」

「ケイちゃんのためならそのくらい払いますよ」

 コビーさんは笑顔で財布に手を伸ばす。

「それと銀行の開設はどうなさいますかー?」
「政府直轄の銀行と普通の銀行が複数あるんですけどー」
「前者の方なら今ここで開設できますよー?」

 おっさんが悪徳営業マンのような笑顔で迫ってくる。

「コビーさん、どっちがいいんですか?」

 俺は商人として働いていて、その辺に詳しそうなコビーさんに素直に聞くことにした。

「そうですね」
「お金を預けて引き出すだけなら、どちらもあまり変わらないので、今ここで開設しても問題ないと思いますよ」

 コビーさんは流ちょうに説明してくれる。

「じゃあそれでお願いします」

 俺は言われるがままに前者を選んだ。

「じゃあこの書類に記入をお願いしまーす」

 俺とケイはそれぞれの紙に先程と同じような事を記入する。
 今日の日付を確認することはもう無い。

「それではこちらも預かりますねー」
「えー、そしたらですね最後に甦人の説明会がありますが……お嬢ちゃんどうする?」

「ケイどうする?」
「コビーさんと待っててもいいよ」

 俺はケイの方に目線を落とす。

「ううん、一緒に行く」

 ケイは首を大きく振りながら即答した。

「それでしたら、そこの通路沿いを行くと会議室4という部屋がありますので、そこで待っててくださーい」

 そう言うとおっさんは席を離れたので俺とケイも席を立つ。

 ようやく解放された……


「では私は明日の準備がありますのでこの辺で失礼しますね」

 会議室に向かおうとすると、コビーさんが俺を呼び止め、頭を下げる。

「いえいえ、色々とありがとうございました」

 俺もつられて頭を下げた。

「これ少ないですが持っていってください」
「それじゃあ、ケイちゃんをお願いしますね」

 コビーさんはケイに厚めの洋型封筒を渡し、建物を後にした。


 ケイはコビーさんが見えなくなったのを確認すると、なにも言わずにリュックから財布袋を取り出し、封筒の中身を乱雑に突っ込む。

 そして俺たちは再び二人きりになった。


「……それじゃあ行こうか」

 俺が通路を進もうとするとケイが手を繋いできた。

「わたし、コビー嫌い」

 ケイが突然、突拍子もないことを口にする。

「……なんで?」

 俺の目には二人は仲が良さそうに見えていた。
 何より、出会った時に抱き着いていたではないか。

「アレンと違って手がベトベトしてて気持ち悪い」

 ケイの顔がその嫌さを物語っている。

 お年頃の女の子はこんなにも残酷な生き物なのか……
 汗をかかない身体で良かった。

「それ、コビーさんに言っちゃダメだよ?」

 俺は苦笑いをしながらケイに言った。

「分かってる」

 ケイは返事はしたものの、分かっていなさそうな顔をしている。
 

 俺はケイの手を引いて会議室4に向かった。
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