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第二章「セントエクリーガ城下町」
第九話「不備」
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俺は早歩きでコビーさんとケイの後を追いかけ、横に並んだ。
建物の中は天井も高く、最低限の装飾が施された内装はもちろん洒落ているのだが、なにより自然光が上手く取り入れられていてとても心地良い空間になっていた。
「後で説明されると思うんですけど、正面のあそこが総合受付なので分からないことがあればあそこで聞けば大丈夫です」
「登録用紙はあそこでもらえるので、列に並んでもらってください」
「その間に私は黒い鬼の事を報告しに4階に行ってきますね」
コビーさんはそう言い残すと階段を小気味よく上っていってしまった。
「……とりあえず並ぼうか」
俺はケイと目を合わせ、列の方に向かう。
この建物の一階は酒場……というよりレストランが併設されていて、少しいい香りが漂ってくる。
丁度お昼時なのか、レストランは人で溢れかえっていた。
そして驚いたのが従業員の数だ。
受付の奥では机が大量に並べられていて、そこで40人ほどの従業員がタイプライターのような物を打ったり、必死に書類を運んだり忙しそうにしている。
ここにいる人たちだけで、ウォロ村の人口をゆうに超えている。
ケイが人混みに酔わないか少し心配だ。
列は三列ありそれぞれに5~6人ほど並んでいたが、それもスムーズに解消されていき、5分もしない内に順番が回ってきた。
「本日はいかがなさいましたか?」
受付のお姉さんは満面の笑みだ。
というか物凄く美人なので背筋が自然と伸びる。
美人のお姉さんを前に少し緊張する。
「ここで働きたくて……あの、登録用紙をもらいたいんですけど」
「少々お待ちください」
そう言うとお姉さんは席を外し、30秒も立たないうちに戻ってきた。
「そうしましたら、あそこのスペースでこの用紙を記入して2番の窓口で住民票と一緒に提出してください」
そう言うとお姉さんは二枚の紙を差し出してきた。
どうやらケイの分もあるようだ。
紙の質はあまり良くないが、先程のコビーさんの話を聞くともしかしたら再生紙なのかもしれない。
「……ん?」
住民票?
そんなの持ってないぞ。
「どうかされましたか?」
俺が何も言わず立ち尽くしていると、お姉さんに心配そうな顔をされてしまった。
「……あのー」
「僕、甦人なんで住民票を持ってないんですけど……」
物凄く嫌な予感がする……
「そうでしたか」
「では、住民票の代わりに甦人の登録証を一緒に提出してください」
「……登録証ってなんですか?」
登録証なんて持ってないし、存在さえ知らない。
「もしかして今日、この町にいらっしゃいました?」
お姉さんの眉間に少ししわが寄った。
「……はい」
「お住まいになるのは、レゼンタック直轄のアパートの予定ですか?」
お姉さんから徐々にプレッシャーを感じる。
「……そのつもりです」
俺がそういった瞬間、お姉さんは勢いよく立ち上がった。
「それでしたら、急いで役所で登録証を作りにいってください!」
「今ならまだギリギリ間に合うはずなので!」
「あ、その前にそちらの紙を記入して2番の窓口でアメリアに言われましたと言って紙を渡してください!」
「宿の方はこちらで何とかしておきます!」
「急いで!」
お姉さんの圧力に押されて、窓口から離れる。
……とりあえず急がなければいけないらしい。
俺はケイの手を引いてペンが置かれているスペースに早歩きで移動した。
建物の中は天井も高く、最低限の装飾が施された内装はもちろん洒落ているのだが、なにより自然光が上手く取り入れられていてとても心地良い空間になっていた。
「後で説明されると思うんですけど、正面のあそこが総合受付なので分からないことがあればあそこで聞けば大丈夫です」
「登録用紙はあそこでもらえるので、列に並んでもらってください」
「その間に私は黒い鬼の事を報告しに4階に行ってきますね」
コビーさんはそう言い残すと階段を小気味よく上っていってしまった。
「……とりあえず並ぼうか」
俺はケイと目を合わせ、列の方に向かう。
この建物の一階は酒場……というよりレストランが併設されていて、少しいい香りが漂ってくる。
丁度お昼時なのか、レストランは人で溢れかえっていた。
そして驚いたのが従業員の数だ。
受付の奥では机が大量に並べられていて、そこで40人ほどの従業員がタイプライターのような物を打ったり、必死に書類を運んだり忙しそうにしている。
ここにいる人たちだけで、ウォロ村の人口をゆうに超えている。
ケイが人混みに酔わないか少し心配だ。
列は三列ありそれぞれに5~6人ほど並んでいたが、それもスムーズに解消されていき、5分もしない内に順番が回ってきた。
「本日はいかがなさいましたか?」
受付のお姉さんは満面の笑みだ。
というか物凄く美人なので背筋が自然と伸びる。
美人のお姉さんを前に少し緊張する。
「ここで働きたくて……あの、登録用紙をもらいたいんですけど」
「少々お待ちください」
そう言うとお姉さんは席を外し、30秒も立たないうちに戻ってきた。
「そうしましたら、あそこのスペースでこの用紙を記入して2番の窓口で住民票と一緒に提出してください」
そう言うとお姉さんは二枚の紙を差し出してきた。
どうやらケイの分もあるようだ。
紙の質はあまり良くないが、先程のコビーさんの話を聞くともしかしたら再生紙なのかもしれない。
「……ん?」
住民票?
そんなの持ってないぞ。
「どうかされましたか?」
俺が何も言わず立ち尽くしていると、お姉さんに心配そうな顔をされてしまった。
「……あのー」
「僕、甦人なんで住民票を持ってないんですけど……」
物凄く嫌な予感がする……
「そうでしたか」
「では、住民票の代わりに甦人の登録証を一緒に提出してください」
「……登録証ってなんですか?」
登録証なんて持ってないし、存在さえ知らない。
「もしかして今日、この町にいらっしゃいました?」
お姉さんの眉間に少ししわが寄った。
「……はい」
「お住まいになるのは、レゼンタック直轄のアパートの予定ですか?」
お姉さんから徐々にプレッシャーを感じる。
「……そのつもりです」
俺がそういった瞬間、お姉さんは勢いよく立ち上がった。
「それでしたら、急いで役所で登録証を作りにいってください!」
「今ならまだギリギリ間に合うはずなので!」
「あ、その前にそちらの紙を記入して2番の窓口でアメリアに言われましたと言って紙を渡してください!」
「宿の方はこちらで何とかしておきます!」
「急いで!」
お姉さんの圧力に押されて、窓口から離れる。
……とりあえず急がなければいけないらしい。
俺はケイの手を引いてペンが置かれているスペースに早歩きで移動した。
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