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第一章「ウォロ村」

第二十五話「傷跡」

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「うわっ!」
「……なんだ、アレンか」

 俺が風呂場のドアを勢いよく開けると、お湯に浮かぶ驚いたカイの顔がそこにはあった。

「お邪魔しまーす……」

 俺は少し申し訳なさそうに風呂場に入る。

 手早く身体を洗うとカイのいるお湯にゆっくりと浸かった。


「……あのさ」
「今日、一人で行ってもいい?」

「なんでだ」

「うーん、……秘密の特訓的な?」

 俺は適当に誤魔化すと、カイは顔をしかめながら考えている。

「……わかった」
「だが条件が1つある」
「花びらの枚数が5枚になったら絶対に逃げて帰ってこい」

「昼飯を食べ終わったら俺のところにこい」

 それだけ言うとカイはお湯から身体を出し、風呂場から立ち去っていった。

「わかったー!」

 俺は脱衣所にいるカイに聞こえるように大きめの声で返事をする。


「ふぅ……」

 俺は一度、頭の先までお湯に浸かる。
 
 顔を出すとふちに寄り掛かり、上を向いた。


「すごいな……」

 俺は立ち去るカイを見て男として胸を打たれた。

 その身体には無数の傷跡があり、それは痛々しく美しいものだった。

 村とケイを守るために一人で戦ってきたことが容易に想像できる。

「……」

 俺は自分の左腕を見る。
 そこにはカテラに噛まれた傷跡がうっすら残っていた。

 この世界では<HP>が回復しても傷までは治らないようだ。


 俺はもう一度、頭の先までお湯に浸かり、顔をお湯から出す勢いのまま風呂場を出た。


「昼飯までゆっくりするか……」

 俺は脱衣所でスーツにビシッと着替え、家に戻る。

 やはりスーツの着心地は抜群だ。



 しばらくゴロゴロしているとケイがお昼ご飯を持ってきた。

 それを勢いよく口に詰め込み、あっという間に完食する。


「よし!」

 俺は気合を入れながら靴に縄を巻くと、鎌を片手に持って村の入り口に向かった。


「<猫足>」

 俺は小声で呟く。

 <猫足>とは、ある<職業スキル>に100ポイントを振っていた過程で得た<特能>だ。
 この<特能>は、足音を消すことができる。

 昨日の夜にいろいろ試したが、指輪と同じように口に出さないと発動しないようだ。


「ドーーーン!!」

 俺はカイの背後に忍び寄り、大声で脅かした。

「遅かったな」
「ほらよ」
「花びらが半分になったら逃げてこいよ」

 カイが驚きもせずにこちらを振り返り、あの赤い花を渡してくれた。

「……なんで驚かないの?」

 俺は思わずキョトンとした顔をしてしまった。

「あんな敵意むき出しで近づいてきたら気づくに決まってるだろ」
「ほら、早くいけよ」
 
 そう言うとカイは俺の背中を村の外に向かって強く押し出した。


「ステイ」

 俺は<猫足>を解除すると、少し恥ずかしくなり小走りで川を下った。

 しかし少し進んだ所で足を止める。

「アクティベイト」

 俺はスキル欄から<守護者>を改めて確認する。

 どうやら<予見>という<特能>があるらしい。
 この<特能>は『自分に向けられた敵意を感知することができる』と書いてある。

「……ふーん」
「ステイ」

 俺は再び足を速めて洞窟に向かった。
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