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第一章「ウォロ村」
第二十二話「ライバル」
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ズリッズリッズリッ
ほとんど何も見えない洞窟の中を急いで下っていく。
昨日と違い、カイに貰った紐を靴に巻いているおかげか、足は滑らなかった。
しばらくすると、光の柱に包まれたカイの姿が見えてくる。
俺は早歩きから小走りに変え、わざと息を切らしながら光の方へ走った。
俺が光の中に入ると入れ替わるようにカイは闇の中に消える。
「よし、やるか」
赤い花の花びらが6枚になっていることをチラッと確認してから気合を入れる。
頭上ではカテラの羽音が段々と大きくなり、不気味な不協和音を奏でていた。
「くるぞ」
カイの声が暗闇から聞こえたと同時にカテラが斜め上方向から突撃してくる。
しかし、その動きは昨日よりもずっと遅く見えた。
それは、昨日振った<職業スキル>のおかげで<DVA(動体視力)>が60%上がっているからだ。
俺は鎌を強く握りしめ、カテラに向かって軽めに振り下ろす。
ズシュッ
カテラの胴体が真っ二つになる。
昨日と違い、カテラから柔らかい感覚が伝わってきた。
<STR>を+100にした事で多少ましにはなったが、全力で振るのは止めといた方がよさそうだ。
俺は力加減に気を付けながら次々とカテラを両断していった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
昨日より楽に倒せるとはいえ、腕を上げ続けるのはやはり疲れる。
「戻るぞ」
カイの声が帰り道の方から聞こえる。
早く帰りたそうにしている顔が目に浮かんだ。
俺はカイの姿を探すように急いで洞窟を上った。
本当はゆっくりと帰りたかったが、暗闇で一人にされるのは少し怖い。
洞窟から出るとカイがあの定位置に座っている。
俺はカイに指示されるより前にリベイロの方へ向かい、鎌を振り下ろした。
「帰るぞ」
カイは俺がリベイロを倒したのを確認すると岩から飛び降りた。
今日は昨日と違い、まだ太陽の位置が高い。
「あのさ……」
「なんだ」
俺が後ろから呼びかけると、カイは足を止めた。
「村まで競争しない?」
カイの強さの片鱗は見ているが、今の俺の<AGI>ならばもしかしたら……と思ってしまった。
案外、単純な走力ならばいい勝負をするかもしれない。
それに、ケイの兄貴ならこういう勝負は必ず受けるはずだ。
「フッ」
カイが鼻で笑う。
「よっしゃ」
「じゃあ3、2,1でいくぞ」
俺はカイを追い越してクラウチングスタートの体勢をとる。
しかし、カイはその場から動かずに突っ立っていた。
ズルいかもしれないが少しでもリードは広げておいたほうがいい。
「3!2!1!」
「ドン!」
俺は自分でカウントをしたのを良いことに、華麗なスタートダッシュを決める。
3歩4歩と足を伸ばしたが、横を見てもカイの姿は見えない。
どうやらまだ後ろにいるようだ。
村までは上り坂だがほぼ直線。
カーブが無い分テクニックはあまり要らないだろう。
俺はなぜか小学校の時に言われたことをふと思い出し、腕を大きく振って足を遠くに伸ばした。
「はぁ……はぁ……はぁ……、くそっ」
膝に手をついている俺の目の前で、カイは足を組んで壁に寄り掛かっている。
この光景は昨日にも見た。
俺が負けた理由はスタミナだ。
最初は快調に飛ばしていたが、先程の狩りで疲れていた事もあり、開始10秒ほどで足が上がらなくなり、わき腹に激痛が走った。
その脇をカイが息も切らさずに悠々と走り抜けていった。
俺はカイに必死についていき、村が見えてきたところでラストスパートをかけたが、全力の俺の足よりもカイの方が僅かに速いようで、差も縮むことは無かった。
いや、あの表情から見てカイは最初から最後まで全力なんて微塵も出していなかっただろう。
カイが笑いを堪えながらこちらを見ている。
俺は何も言わず、鼻を膨らませながらズカズカと村の中に入った。
まぁ、俺のライバルとしてカイを認めてあげなくもないな。
「あーあ……、ん?」
家の近くに来た時、夜ご飯を持ったケイが俺の家のドアにおでこをつけている姿が見えた。
ほとんど何も見えない洞窟の中を急いで下っていく。
昨日と違い、カイに貰った紐を靴に巻いているおかげか、足は滑らなかった。
しばらくすると、光の柱に包まれたカイの姿が見えてくる。
俺は早歩きから小走りに変え、わざと息を切らしながら光の方へ走った。
俺が光の中に入ると入れ替わるようにカイは闇の中に消える。
「よし、やるか」
赤い花の花びらが6枚になっていることをチラッと確認してから気合を入れる。
頭上ではカテラの羽音が段々と大きくなり、不気味な不協和音を奏でていた。
「くるぞ」
カイの声が暗闇から聞こえたと同時にカテラが斜め上方向から突撃してくる。
しかし、その動きは昨日よりもずっと遅く見えた。
それは、昨日振った<職業スキル>のおかげで<DVA(動体視力)>が60%上がっているからだ。
俺は鎌を強く握りしめ、カテラに向かって軽めに振り下ろす。
ズシュッ
カテラの胴体が真っ二つになる。
昨日と違い、カテラから柔らかい感覚が伝わってきた。
<STR>を+100にした事で多少ましにはなったが、全力で振るのは止めといた方がよさそうだ。
俺は力加減に気を付けながら次々とカテラを両断していった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
昨日より楽に倒せるとはいえ、腕を上げ続けるのはやはり疲れる。
「戻るぞ」
カイの声が帰り道の方から聞こえる。
早く帰りたそうにしている顔が目に浮かんだ。
俺はカイの姿を探すように急いで洞窟を上った。
本当はゆっくりと帰りたかったが、暗闇で一人にされるのは少し怖い。
洞窟から出るとカイがあの定位置に座っている。
俺はカイに指示されるより前にリベイロの方へ向かい、鎌を振り下ろした。
「帰るぞ」
カイは俺がリベイロを倒したのを確認すると岩から飛び降りた。
今日は昨日と違い、まだ太陽の位置が高い。
「あのさ……」
「なんだ」
俺が後ろから呼びかけると、カイは足を止めた。
「村まで競争しない?」
カイの強さの片鱗は見ているが、今の俺の<AGI>ならばもしかしたら……と思ってしまった。
案外、単純な走力ならばいい勝負をするかもしれない。
それに、ケイの兄貴ならこういう勝負は必ず受けるはずだ。
「フッ」
カイが鼻で笑う。
「よっしゃ」
「じゃあ3、2,1でいくぞ」
俺はカイを追い越してクラウチングスタートの体勢をとる。
しかし、カイはその場から動かずに突っ立っていた。
ズルいかもしれないが少しでもリードは広げておいたほうがいい。
「3!2!1!」
「ドン!」
俺は自分でカウントをしたのを良いことに、華麗なスタートダッシュを決める。
3歩4歩と足を伸ばしたが、横を見てもカイの姿は見えない。
どうやらまだ後ろにいるようだ。
村までは上り坂だがほぼ直線。
カーブが無い分テクニックはあまり要らないだろう。
俺はなぜか小学校の時に言われたことをふと思い出し、腕を大きく振って足を遠くに伸ばした。
「はぁ……はぁ……はぁ……、くそっ」
膝に手をついている俺の目の前で、カイは足を組んで壁に寄り掛かっている。
この光景は昨日にも見た。
俺が負けた理由はスタミナだ。
最初は快調に飛ばしていたが、先程の狩りで疲れていた事もあり、開始10秒ほどで足が上がらなくなり、わき腹に激痛が走った。
その脇をカイが息も切らさずに悠々と走り抜けていった。
俺はカイに必死についていき、村が見えてきたところでラストスパートをかけたが、全力の俺の足よりもカイの方が僅かに速いようで、差も縮むことは無かった。
いや、あの表情から見てカイは最初から最後まで全力なんて微塵も出していなかっただろう。
カイが笑いを堪えながらこちらを見ている。
俺は何も言わず、鼻を膨らませながらズカズカと村の中に入った。
まぁ、俺のライバルとしてカイを認めてあげなくもないな。
「あーあ……、ん?」
家の近くに来た時、夜ご飯を持ったケイが俺の家のドアにおでこをつけている姿が見えた。
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