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第一章「ウォロ村」

第十六話「一人作戦会議」

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 日の光が微かに家の中に差し込んでくる……

 昨日は散々だった。

 あれからあまり眠れていない。
 必死に目を瞑り、なんとか寝る努力をしたが、なかなか眠れなかった。

「ご飯だよー!」

 ようやくケイが朝ごはんを持ってきたので、俺は重い身体を起こす。

「今日は変な動きしてないんだね!」

 やはり、昨日は見られていたようだ。

 だが、そんなことは今の俺にとってみれば些細な事だ。

「ハハハハハ……」「あはははは!」

 俺が笑ってごまかすと、ケイも笑い返してくれた。

「あとさ……」

 俺が話を切り出そうとすると、ケイは走り去ってしまった。

 今日、一緒に遊びに行けないことを言おうと思ったんだけどな……
 後でなんか言われそう。


 俺は朝ごはんを口の中に詰め込むと、足早に家を後にする。

 カイに雑な挨拶を済ませ、遊び場まで走って向かった。
 
 この緩やかな坂道にも慣れてきた。


 しばらくすると、遠くの方に青くて丸い輪郭が見えてくる。

 俺は走りながら上半身を落として小石をすくい上げ、助走の勢いを乗せて散弾銃のように投げた。

「なんでだよ……」

 俺が投げた小石の雨はスライムたちにかすりもしなかった。
 
「はぁ……」
「いい加減は良くない!」

 俺は膝に手をついて一度落ち着き、丁寧にスライムを倒し始める。


「アクティベイト」

 10体ほど倒しスキルボードを確認すると、スキルポイントは0のままだった。


 俺はスキルボードを閉じずにもう10体のスライムを手早く倒したが、やはりなにも変化は無かった。


「ステイ」

 俺はのんびりと川沿いを歩いて村に戻る。

 こういう時は自然を感じるのが一番だ。

「後は違うモンスターか……」

 とりあえず1日上限ではないことが確認できた。

 最良のパターンが消えたものの、失望感からか、どこかに淡い期待があるのか分からないが、不思議と冷静でいられた。



「おい」
「飯食い終わったらすぐにここにこいよ」

 村の入り口に着き、門をくぐり中に入ろうとするとカイに呼び止められた。

 少しケイと似た雰囲気を感じる。

「……そういえばさ、洞窟にはモンスターは何種類いるの?」

「2種類だ」
「詳しくは後で教える」

 カイはこちらを見ずに答える。
 俺はカイに向かって軽く手を挙げた後、家に帰った。

 
 ドアを開け、すぐさま寝床で横になる。

 昨日の夜に藁が刺さらない良いポジションを見つけたので快適だ。

「アクティベイト」

 さて、脳内作戦会議を始めよう。

 とりあえず、2種類のモンスターがいるならば、スキルポイントは合わせて100ポイント獲得できると予想できる。
 というか、そうでなければこの村での永住が確定する。

 今、俺が50ポイント振っている<職業スキル>は100ポイント振らないと、まず機能しない。
 問題はこの<職業スキル>を捨てるか、残りの50ポイントを振るか。

<職業スキル><武器スキル>はステータスが上がる以外にも、10ポイントと40ポイントで<特能>が手に入るので、保険として40ポイントは残しておきたい。

 ……となると使えるポイントは前者ならば10ポイント、後者ならば60ポイントとなる。


「……」

 俺は今振っている<職業スキル>に50ポイント、残り10ポイントは<AGI(敏捷性)>に振る方針に決めた。
 理由としては、10ポイントと40ポイントで得られる<特能>は強くない傾向がある。
 とは言っても、正直<特能>の説明だけを見ても分からないことも多い。

 とにかく手探りでやっていくしかない。

「ステイ」

 俺はスキルボードを閉じ、寝床でゴロゴロしながらお昼を待った。



「お昼ご飯だよー」

 しばらくしてケイがご飯を持ってきた。

「あぁ、ケイ」
「俺、今日一緒に遊びに行けないんだ」

 俺は、朝言いたかったことを言い逃さないように早めにケイに伝える。

「え?」
「なんで?」

 ケイの笑顔が瞬時に曇る。

「あー、今日はカイと約束があるんだよ」

 妙な緊張感の中、俺は少し口を籠らせながら答えた。

「……そっか!」
「じゃあまた今度ね!」

 ケイは笑顔でそう言い残し、走り去っていった。

 案外、ケイの中では俺と一緒に遊ぶ事は重要ではないのかもしれない。

 俺は少し複雑な気持ちで食事を進める。



「さて、一狩りしに行くか」

 食事を終えると、赤い花を腰に差し、少し緊張しながらカイのもとへ向かった。
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