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第4章
第40話
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久しぶりの師匠の家に着くと、やっぱり実感が湧かなくなってしまって、チャイムを押した。
『――はい』
「師匠、私です。万葉です」
『どうぞ』
中に入ると玄関に師匠が立っていて、ニコニコと笑っている。靴を脱いでから向き合うと、頭一つ以上大きな師匠がやんわりと見下ろしてくる。
「あの、その……こんばんは」
「はい、こんばんは、万葉さん」
「……ただいま」
「はい、お帰りなさい」
師匠がぎゅっと万葉を抱きしめて、持ち上げるかのような勢いで壁へと万葉を押し付けた。
「し、し、師匠! 近い、近い……!」
「知っています、わざとです」
逃げ場がないくらいににじり寄られて、恥ずかしくてそっぽを向くと、耳にそっと師匠の唇が当たる。
「……ただいまって、初めて言ってくれたのが嬉しくて……」
囁いたかと思うと、万葉の耳をぱくっと口に含んだ。
「きゃあっ!」
慌てて口を押さえたのをいいことに、師匠の舌先が耳をなぞる。そのまま首筋に唇が触れて、数回キスが落とされる。腰が抜けるかと思った時に、師匠の身体が離れて行った。
「すみません、嬉しくてつい。襲ってしまうところでした」
口をパクパクと開ける万葉にしれっとさわやかな笑顔でそう告げると、手を引っ張って部屋へと誘導した。万葉は全身が心臓になったかと思うくらいにドキドキしてしまい、一言も口がきけないままついて行く。
「ご飯の前に、見てもらいたいものがありまして」
リビングのソファへと連れられて行くと、そこには書類が置かれていた。座って、師匠がそのファイルを手に持ち、開く。
「万葉さんの安心材料になればと思いまして」
そこには、この家の登記簿謄本が置かれていた。所有者欄には師匠の名前がばっちり書かれている。
「え、これ、私のためにわざわざ……?」
「はい。ちなみに、祖父母の家だったのを、長男の僕がもらいうけてリフォームしました。弟たちはすでに結婚して家を持っていましたから」
万葉はそれをまじまじと見つめて、それから師匠を見た。
「借金がないことの証明をするのは難しいです。もちろんありませんが、口だけになってしまいますし、それを信用してくれというには、あまりにも万葉さんは僕の素性を知らな過ぎます」
とん、と登記簿謄本を指さして、師匠は穏やかに微笑む。
「これは僕の財産の一つでしかありませんが、何か目に見えてわかるものがあればいいかと思って取ってきました。保険証券も見たいならご用意します」
「あ、いえ……もう大丈夫です! むしろ、ごめんなさい……」
ここまでしてもらえるとは思っておらず、万葉はどうしていいか分からなくて師匠をじっと見つめた。
「師匠、ここまでしてくれるなんて」
「大好きな奥さんのためです。信用を得ることって、意外と難しいですからね」
精一杯の誠意を見せてもらって、万葉は感激に言葉が出せない。涙腺が緩みそうになって、師匠に向き直ると思い切ってぎゅっと抱きついた。
師匠がはっと驚くのが分かり、万葉は恐る恐る師匠の背中に手を回す。温かいぬくもりと、心音が聞こえてきた。
「師匠、ありがとう」
「いえいえ、いいんです、これくらいのことは」
師匠がぎゅっと抱きしめ返してきて、万葉はしばらくそうして師匠の温もりと優しさに感動した。
『――はい』
「師匠、私です。万葉です」
『どうぞ』
中に入ると玄関に師匠が立っていて、ニコニコと笑っている。靴を脱いでから向き合うと、頭一つ以上大きな師匠がやんわりと見下ろしてくる。
「あの、その……こんばんは」
「はい、こんばんは、万葉さん」
「……ただいま」
「はい、お帰りなさい」
師匠がぎゅっと万葉を抱きしめて、持ち上げるかのような勢いで壁へと万葉を押し付けた。
「し、し、師匠! 近い、近い……!」
「知っています、わざとです」
逃げ場がないくらいににじり寄られて、恥ずかしくてそっぽを向くと、耳にそっと師匠の唇が当たる。
「……ただいまって、初めて言ってくれたのが嬉しくて……」
囁いたかと思うと、万葉の耳をぱくっと口に含んだ。
「きゃあっ!」
慌てて口を押さえたのをいいことに、師匠の舌先が耳をなぞる。そのまま首筋に唇が触れて、数回キスが落とされる。腰が抜けるかと思った時に、師匠の身体が離れて行った。
「すみません、嬉しくてつい。襲ってしまうところでした」
口をパクパクと開ける万葉にしれっとさわやかな笑顔でそう告げると、手を引っ張って部屋へと誘導した。万葉は全身が心臓になったかと思うくらいにドキドキしてしまい、一言も口がきけないままついて行く。
「ご飯の前に、見てもらいたいものがありまして」
リビングのソファへと連れられて行くと、そこには書類が置かれていた。座って、師匠がそのファイルを手に持ち、開く。
「万葉さんの安心材料になればと思いまして」
そこには、この家の登記簿謄本が置かれていた。所有者欄には師匠の名前がばっちり書かれている。
「え、これ、私のためにわざわざ……?」
「はい。ちなみに、祖父母の家だったのを、長男の僕がもらいうけてリフォームしました。弟たちはすでに結婚して家を持っていましたから」
万葉はそれをまじまじと見つめて、それから師匠を見た。
「借金がないことの証明をするのは難しいです。もちろんありませんが、口だけになってしまいますし、それを信用してくれというには、あまりにも万葉さんは僕の素性を知らな過ぎます」
とん、と登記簿謄本を指さして、師匠は穏やかに微笑む。
「これは僕の財産の一つでしかありませんが、何か目に見えてわかるものがあればいいかと思って取ってきました。保険証券も見たいならご用意します」
「あ、いえ……もう大丈夫です! むしろ、ごめんなさい……」
ここまでしてもらえるとは思っておらず、万葉はどうしていいか分からなくて師匠をじっと見つめた。
「師匠、ここまでしてくれるなんて」
「大好きな奥さんのためです。信用を得ることって、意外と難しいですからね」
精一杯の誠意を見せてもらって、万葉は感激に言葉が出せない。涙腺が緩みそうになって、師匠に向き直ると思い切ってぎゅっと抱きついた。
師匠がはっと驚くのが分かり、万葉は恐る恐る師匠の背中に手を回す。温かいぬくもりと、心音が聞こえてきた。
「師匠、ありがとう」
「いえいえ、いいんです、これくらいのことは」
師匠がぎゅっと抱きしめ返してきて、万葉はしばらくそうして師匠の温もりと優しさに感動した。
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