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第4章
第35話
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万葉が目を覚ますと、とっくに朝の気配がカーテンの隙間から漏れ出ている。明るい陽射しを感じて目を瞬かせつつ、そして隣から視線を感じて見ると――師匠がいた。
「っ……!」
驚いて悲鳴さえ飲み込んだところで、ニコニコと穏やかな顔をした師匠は、片肘ついて頭を乗せながら、万葉をじっと見ていたようだった。
「おはようございます、奥さん」
その一言が止めで、万葉は顔を真っ赤にして布団を引っ張り上げて顔を隠した。その布団を師匠はずらす。万葉は観念して、鼻から上を出した。
「そんな驚かなくてもいいじゃないですか。僕の顔がおかしかったですか?」
「そうじゃなくて……寝顔を見られた恥ずかしさです!」
「あはは、可愛かったですよ。安心しきった顔で寝ている姿は」
師匠の手が伸びてきて、よしよしと万葉の頭を撫でた。恥ずかしさのあまり視線で抗議すると、師匠はおやおやと首をかしげる。
「いいじゃないですか、もう夫婦なんですから」
「……そうですけど」
「何かご不満でも?」
いたずらっぽく覗き込まれてしまって、万葉はしどろもどろになった。起き上がろうにも師匠が通せんぼしており、頭を支えていない方の手が伸びてきたかと思うと、万葉を布団の上から優しく抱きしめるように置かれる。
「聞きますよ、ご不満」
促されて、見れば師匠は隣に寝そべりながら万葉を見ている。これは話すまではどいてくれないパターンだなと察知して、万葉は降参した。
「師匠は、一体何を考えているのでしょう?」
「僕は万葉さんのことしか考えていませんよ」
「そうじゃなくて」
万葉はむっとして師匠の方へと向き直った。ものすごく恥ずかしかったのだが、その瞳をきっちりと見て話をしたかった。
「正直、師匠が何を考えているのか、分かんないです。冗談で結婚しちゃうし、かといって、夫婦なんだからって色々を強制して来ることもしない」
師匠はそれにまばたきで頷いた。
「私は、どうしたらいいんでしょうか……?」
「どうすべきだと思いますか?」
言われて万葉は言葉に詰まった。結婚をしたいと言ったのは自分自身のほうであって、考えてみれば、師匠はいつだって冗談で結婚するほど困っていないと返している。
そして、万葉とだったら結婚してもいいと言っているわけで、それは師匠の本心のように感じる。しかし、食えない笑顔と飄々とした雰囲気のせいで、それが本当の本当の本心かどうかが分からないのだ。
「分からなくて……困っています」
「では、どうしたいですか?」
それにも万葉は言葉を詰まらせた。しかし、本心は決まっている。
「……両想いでいたいです。師匠は、私のこと、好きですか?」
「もちろんです。万葉さんは?」
「好き……かもしれません」
「思わせぶりですね」
ごめんなさい、と万葉は呟いた。しかし、師匠の表情は怒っているわけでも、あきれているわけでもなく、ただただ穏やかだった。
「多分、好きです。きっと、めっちゃ好きです。でも、それを自覚してしまったら、なんか後戻りできなくなるような気がして……」
それに師匠はとても嬉しそうに、そして困ったように眉毛を寄せた。
「っ……!」
驚いて悲鳴さえ飲み込んだところで、ニコニコと穏やかな顔をした師匠は、片肘ついて頭を乗せながら、万葉をじっと見ていたようだった。
「おはようございます、奥さん」
その一言が止めで、万葉は顔を真っ赤にして布団を引っ張り上げて顔を隠した。その布団を師匠はずらす。万葉は観念して、鼻から上を出した。
「そんな驚かなくてもいいじゃないですか。僕の顔がおかしかったですか?」
「そうじゃなくて……寝顔を見られた恥ずかしさです!」
「あはは、可愛かったですよ。安心しきった顔で寝ている姿は」
師匠の手が伸びてきて、よしよしと万葉の頭を撫でた。恥ずかしさのあまり視線で抗議すると、師匠はおやおやと首をかしげる。
「いいじゃないですか、もう夫婦なんですから」
「……そうですけど」
「何かご不満でも?」
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「聞きますよ、ご不満」
促されて、見れば師匠は隣に寝そべりながら万葉を見ている。これは話すまではどいてくれないパターンだなと察知して、万葉は降参した。
「師匠は、一体何を考えているのでしょう?」
「僕は万葉さんのことしか考えていませんよ」
「そうじゃなくて」
万葉はむっとして師匠の方へと向き直った。ものすごく恥ずかしかったのだが、その瞳をきっちりと見て話をしたかった。
「正直、師匠が何を考えているのか、分かんないです。冗談で結婚しちゃうし、かといって、夫婦なんだからって色々を強制して来ることもしない」
師匠はそれにまばたきで頷いた。
「私は、どうしたらいいんでしょうか……?」
「どうすべきだと思いますか?」
言われて万葉は言葉に詰まった。結婚をしたいと言ったのは自分自身のほうであって、考えてみれば、師匠はいつだって冗談で結婚するほど困っていないと返している。
そして、万葉とだったら結婚してもいいと言っているわけで、それは師匠の本心のように感じる。しかし、食えない笑顔と飄々とした雰囲気のせいで、それが本当の本当の本心かどうかが分からないのだ。
「分からなくて……困っています」
「では、どうしたいですか?」
それにも万葉は言葉を詰まらせた。しかし、本心は決まっている。
「……両想いでいたいです。師匠は、私のこと、好きですか?」
「もちろんです。万葉さんは?」
「好き……かもしれません」
「思わせぶりですね」
ごめんなさい、と万葉は呟いた。しかし、師匠の表情は怒っているわけでも、あきれているわけでもなく、ただただ穏やかだった。
「多分、好きです。きっと、めっちゃ好きです。でも、それを自覚してしまったら、なんか後戻りできなくなるような気がして……」
それに師匠はとても嬉しそうに、そして困ったように眉毛を寄せた。
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