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第四章
第32話
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何もなく実家で二日ほど過ごし、千歳はその間の朝昼夜の食事時には家族と一緒に参加した。死神も隣で座って、二人の会話にツッコミを入れている千歳を見守る。
夜は布団で眠り、死神は床に敷いた布団で眠った。死神は寝ないのだが、布団に入ると千歳に合わせてか目をつぶり、そしてピクリと動かなくなった。
死んでしまったかと思って、千歳がのぞき込むと、突如目を開けるというホラーなことを数回繰り返して、死神スタイルの眠り方にも慣れてきたころだった。
他の死神が、千歳の前に現れたのは。
庭のチビのお墓の前で、千歳が手を合わせていると、ふと生き物の気配を感じた。死んでいる者ではない気配。それに千歳が振り返ると、家の中に誰かが入って行くのが見えた。
「やだ、不法侵入!」
そう思ってついて行くと、玄関からするりと家の中へそれは入ってしまう。
「……人じゃない」
慌てて追いかけて行くと、廊下をとうに通り過ぎて行ってしまったそれに、リビングで追いつく。
「ちょっと、あなた勝手に人の実家に入ってこないで……って、アロハ死神じゃん!」
千歳の声に、驚いたように振り返ったのは、アロハシャツの死神だった。ちょっぴりぼさぼさ(無造作というべきか)な髪の毛に、冬なのに場違いな半袖のアロハシャツ。
「なんで、あなたがここに……まさか!」
千歳は、アロハの死神が立っている前に座る、父を見つめた。
「まさか、お父さんたち死んじゃうの!?」
やだ、待って待ってと騒ぎ始めた千歳の声に驚いて、アロハの死神が千歳の腕を掴んだ。
「ちょ、なんでお前がここにっ…! っていうか騒ぐな!」
口をふさがれて千歳が暴れると、騒ぎを聞きつけた死神がやってきた。
「千歳さん、どうされましたか?……あ、こんにちは、死神さん」
「どうも。あんたがいるなら良かった。てっきりこの娘が勝手にふらふらしてんのかと」
千歳はアロハ死神の手をバチンと払い落として、きっと睨みつけた。
「なんでアロハ死神がここにいるわけ? ここ、あたしの実家なんだけど」
それに、アロハの死神が目を丸くする。
「ここはお前んちか。俺はこの近くのじーさんが亡くなるから来たんだけど、順番近い人間がいたから、ちょっと下見に来ただけだ」
それに、千歳は愕然とする。
「つまりそれって……」
「何だお前知らないのか? このおっちゃん、癌なんだぜ?」
アロハの死神の一言に、千歳は血の気が引いた。
夜は布団で眠り、死神は床に敷いた布団で眠った。死神は寝ないのだが、布団に入ると千歳に合わせてか目をつぶり、そしてピクリと動かなくなった。
死んでしまったかと思って、千歳がのぞき込むと、突如目を開けるというホラーなことを数回繰り返して、死神スタイルの眠り方にも慣れてきたころだった。
他の死神が、千歳の前に現れたのは。
庭のチビのお墓の前で、千歳が手を合わせていると、ふと生き物の気配を感じた。死んでいる者ではない気配。それに千歳が振り返ると、家の中に誰かが入って行くのが見えた。
「やだ、不法侵入!」
そう思ってついて行くと、玄関からするりと家の中へそれは入ってしまう。
「……人じゃない」
慌てて追いかけて行くと、廊下をとうに通り過ぎて行ってしまったそれに、リビングで追いつく。
「ちょっと、あなた勝手に人の実家に入ってこないで……って、アロハ死神じゃん!」
千歳の声に、驚いたように振り返ったのは、アロハシャツの死神だった。ちょっぴりぼさぼさ(無造作というべきか)な髪の毛に、冬なのに場違いな半袖のアロハシャツ。
「なんで、あなたがここに……まさか!」
千歳は、アロハの死神が立っている前に座る、父を見つめた。
「まさか、お父さんたち死んじゃうの!?」
やだ、待って待ってと騒ぎ始めた千歳の声に驚いて、アロハの死神が千歳の腕を掴んだ。
「ちょ、なんでお前がここにっ…! っていうか騒ぐな!」
口をふさがれて千歳が暴れると、騒ぎを聞きつけた死神がやってきた。
「千歳さん、どうされましたか?……あ、こんにちは、死神さん」
「どうも。あんたがいるなら良かった。てっきりこの娘が勝手にふらふらしてんのかと」
千歳はアロハ死神の手をバチンと払い落として、きっと睨みつけた。
「なんでアロハ死神がここにいるわけ? ここ、あたしの実家なんだけど」
それに、アロハの死神が目を丸くする。
「ここはお前んちか。俺はこの近くのじーさんが亡くなるから来たんだけど、順番近い人間がいたから、ちょっと下見に来ただけだ」
それに、千歳は愕然とする。
「つまりそれって……」
「何だお前知らないのか? このおっちゃん、癌なんだぜ?」
アロハの死神の一言に、千歳は血の気が引いた。
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