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第2章
第26話 豚肉と白菜の重ね蒸し
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「……って、俺が口説いても、お前は気がつかなさそうだな」
というよりも、気がついていないと涼音は思っていた。いちいち反応はするが、それがどういう意味を持っているかを、芽生が根本的に理解できていないと涼音は感じでいた。
「涼音さんが私を口説く!? なんで!?」
「もういい。早くしろ、腹が減った」
芽生はぶーぶー文句を言いつつも、鍋を傾けて汁を上からかけた。
「そういえば今朝の陸が可愛くってね。僕と海斗だけの芽生ちゃんだよって言われたんですよ、私もう一生独身でもいいやって思っちゃいました。海斗と陸の写真見せましたっけ? あ、海斗は今日迎えに来てくれるって言ってたな」
芽生は携帯を取り出すと、涼音の近くへ行き、写真フォルダーから海斗と陸が写った写真を見せた。
「ね、二人とも超美少年なんです! もう、かわいくって」
「……お前、マジで嫁に行き遅れるぞ」
「いいんですよ、海斗と陸がいてくれたら」
「そいつらだって、そのうち彼女つくって、家に連れてくるぞ」
「え……そっか……嫌だけど姉としてはやっぱり迎え入れなくっちゃですよね? あ、でもすんごいかわいい子かもしれないし、そしたら私も嬉しいな」
あからさまに落胆した芽生に、涼音がどうしようもないな、お前と笑う。
「お前が彼氏くらいつくらないと、弟たちだって彼女つくりにくいんじゃないのか?」
「そうなんですか!? 私、海斗と陸のお荷物にはなりたくないな。やっぱり、彼氏つくった方がいいのかな? でもそんな時間勿体ないし、そもそも私に、人と付き合っている時間もないですし……あ、お鍋お鍋!」
料理の存在を思い出して、駆け出していく芽生に涼音は眉毛を上げた。
「あいつ、色気ってないわけ?」
涼音はため息とともに髪をかき上げた。
「涼音さーん、ご飯できましたよ!」
笑顔の芽生がお鍋を机の真ん中に置きながら、美味しそうと顔をキラキラさせている姿に、涼音はどうしようもない胸の疼きを覚えた。
「じゃあ食べましょう!」
——いただきます。
二人で手を合わせて、それからどうやってこれを食べるのだと首をかしげている涼音に、芽生は見ていてくださいねと言って、箸でサクサクと肉と白菜とくずし始める。
「まだ箸つけてないので、取ってあげますよ。ポン酢のお皿とってください」
そこにたっぷりよそってから渡す。そして、自分の皿にもたくさんよそって、ポン酢に浸した。
「私はね、ポン酢ひたひた派なんですよー! 白菜とポン酢って、どうしてこう相性がいいんでしょうか、神コンビです!」
「お前さ、食べ物食べている時と、食べている人を見る時、めちゃくちゃ嬉しそうだよな」
芽生は口に入れかけていた豚肉をいったん置いた。
「美味しいもの食べていると、幸せじゃないですか?」
「ああそうだな。お前の料理は、本当に美味しい。こうして、誰かと家で食事をするなんて、何年ぶりだ」
「だと思ったんで、私が僭越ながらお相手して差し上げます。誰かとおしゃべりしながら食べるのって、美味しさ倍増ですよ。さ、冷めちゃう前に食べましょう!」
涼音は一口食べて、そしてほころんだ。
「ね、美味しいでしょ?」
それに涼音がうなずく。涼音はいつの間にか、芽生の料理の虜になっていた。
というよりも、気がついていないと涼音は思っていた。いちいち反応はするが、それがどういう意味を持っているかを、芽生が根本的に理解できていないと涼音は感じでいた。
「涼音さんが私を口説く!? なんで!?」
「もういい。早くしろ、腹が減った」
芽生はぶーぶー文句を言いつつも、鍋を傾けて汁を上からかけた。
「そういえば今朝の陸が可愛くってね。僕と海斗だけの芽生ちゃんだよって言われたんですよ、私もう一生独身でもいいやって思っちゃいました。海斗と陸の写真見せましたっけ? あ、海斗は今日迎えに来てくれるって言ってたな」
芽生は携帯を取り出すと、涼音の近くへ行き、写真フォルダーから海斗と陸が写った写真を見せた。
「ね、二人とも超美少年なんです! もう、かわいくって」
「……お前、マジで嫁に行き遅れるぞ」
「いいんですよ、海斗と陸がいてくれたら」
「そいつらだって、そのうち彼女つくって、家に連れてくるぞ」
「え……そっか……嫌だけど姉としてはやっぱり迎え入れなくっちゃですよね? あ、でもすんごいかわいい子かもしれないし、そしたら私も嬉しいな」
あからさまに落胆した芽生に、涼音がどうしようもないな、お前と笑う。
「お前が彼氏くらいつくらないと、弟たちだって彼女つくりにくいんじゃないのか?」
「そうなんですか!? 私、海斗と陸のお荷物にはなりたくないな。やっぱり、彼氏つくった方がいいのかな? でもそんな時間勿体ないし、そもそも私に、人と付き合っている時間もないですし……あ、お鍋お鍋!」
料理の存在を思い出して、駆け出していく芽生に涼音は眉毛を上げた。
「あいつ、色気ってないわけ?」
涼音はため息とともに髪をかき上げた。
「涼音さーん、ご飯できましたよ!」
笑顔の芽生がお鍋を机の真ん中に置きながら、美味しそうと顔をキラキラさせている姿に、涼音はどうしようもない胸の疼きを覚えた。
「じゃあ食べましょう!」
——いただきます。
二人で手を合わせて、それからどうやってこれを食べるのだと首をかしげている涼音に、芽生は見ていてくださいねと言って、箸でサクサクと肉と白菜とくずし始める。
「まだ箸つけてないので、取ってあげますよ。ポン酢のお皿とってください」
そこにたっぷりよそってから渡す。そして、自分の皿にもたくさんよそって、ポン酢に浸した。
「私はね、ポン酢ひたひた派なんですよー! 白菜とポン酢って、どうしてこう相性がいいんでしょうか、神コンビです!」
「お前さ、食べ物食べている時と、食べている人を見る時、めちゃくちゃ嬉しそうだよな」
芽生は口に入れかけていた豚肉をいったん置いた。
「美味しいもの食べていると、幸せじゃないですか?」
「ああそうだな。お前の料理は、本当に美味しい。こうして、誰かと家で食事をするなんて、何年ぶりだ」
「だと思ったんで、私が僭越ながらお相手して差し上げます。誰かとおしゃべりしながら食べるのって、美味しさ倍増ですよ。さ、冷めちゃう前に食べましょう!」
涼音は一口食べて、そしてほころんだ。
「ね、美味しいでしょ?」
それに涼音がうなずく。涼音はいつの間にか、芽生の料理の虜になっていた。
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