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第2章
第24話 チーズ入りお雑炊
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「おはようございまーす……って、何でこう、一日で散らかるわけっ!」
もらったカードキーで部屋に入ると、リビングには脱ぎ捨てたガウンと本が散らばり、飲み物を飲んだカップも置きっぱなしの状態になっていた。まだ涼音は寝ている時間で、芽生はこっそり静かに入ったのに、その惨状に思わず声を荒げそうになる。
「片づける機能がついてないんだわ、あの人!」
芽生は憤慨すると、まずはカーテンを開けて朝日を部屋にいれ、そして窓を全開にして空気の入れ替えをする。
リビングと廊下の掃除を終えて、キッチンを片付けながら朝食を作る。昨晩の水炊きの汁の残りで雑炊を作るのだが、味の変化をつけるためにチーズを用意した。
テーブルの上を拭いて、そして自分の一息用のお茶を飲むのにカップを用意したところで、目覚ましの音が聞こえてきたかと思うと、寝室からがさごそと音がする。
「やっとお目覚めね、散らかし怪獣、涼音め!」
また寝ぼけてパジャマのまま出てきたら寒いだろうと思い、芽生は入り口近くでガウンを持って待機していると、やはり寝起きで判断力低下中の涼音が、目をこすりながら起きてきた。
「おはようございます! はい、これ羽織って。歯磨きと洗顔どうぞ。タオルは代えてありますから」
「……はよ」
涼音は、すでにきれいにした部屋を見渡し、そして芽生を見るとぎゅっと抱きしめた。
「え、わ、わ、わ! 涼音さん!」
「うーん、眠い……。お前、抱き枕にちょうどよさそう……」
「ちょっと!」
本日二回目の男子からのハグに、芽生の頭が追い付かない。海斗とは違うもっと大人の感触に、そして肩で聞こえてくる涼音の声。昨日の帰り際のことを思い出して、芽生はパニックになった。さりげなく首筋にキスをされて、「ひゃあ!」と素っ頓狂な声を上げる。
「あれ、俺抱きついてるのって音の出る枕だっけ? ……あーはいはい、怒るなよ、顔洗ってくるわ」
芽生を手放すと、涼音はのそのそとバスルームへと向かっていった。芽生は胸のドキドキが止まらない。
(どうして、涼音さんは不意打ちばっかり……!)
唇が触れた首筋を撫でながら、これからは気をつけようと、芽生は気を紛らわせるために気を引き締めて、朝食の準備に全神経を集中させて取り掛かった。
「涼音さん。チーズ、食べられますよね?」
「ああ」
戻ってきた涼音はまだ眠たそうな顔をしており、呆けているので椅子に座るように促すと、ぼうっとしながら席に着いた。それは会社では絶対に見ることのできない姿であり、さっきのことがなければ芽生はなんだか可愛らしく思えてきた。
「はい、今日の朝ごはんはチーズ入りのお雑炊ですよ! ああもう、匂いだけでよだれ出そう」
「……お前、朝から元気だな。どっから出てくるんだよ、そのパワーは」
「うふふ。今日はですね、なんと、かわいい弟たちが朝ご飯にフレンチトースト作ってくれて、私は朝から感激と幸せとあまりの可愛さに泣きましたよ。パワーは家族からもらっているんです」
お茶を用意して、涼音の前に座る。涼音はふうんと興味なさそうにうなずいてから、手を合わせていただきますと言った。
「涼音さんって、腹黒いし性格悪いし汚部屋の住人ですけど、所作は本当にキレイですよね」
「なんかいらないものが三つばかりついていたが俺の聞き間違いか?」
「ええ、聞き間違いなので忘れてください。それより、絶対美味しいですよそれ」
「……一口食べるか?」
それに芽生は思わず背筋を正してしまった。その姿に、涼音が笑う。
(わ、その笑顔は反則だ……)
涼音はまずは自分が食べてから、美味しいと呟いてほっとした顔をした。芽生は、その会社の誰にも見せないであろう涼音の素顔に、心なしか惹かれていた。
もらったカードキーで部屋に入ると、リビングには脱ぎ捨てたガウンと本が散らばり、飲み物を飲んだカップも置きっぱなしの状態になっていた。まだ涼音は寝ている時間で、芽生はこっそり静かに入ったのに、その惨状に思わず声を荒げそうになる。
「片づける機能がついてないんだわ、あの人!」
芽生は憤慨すると、まずはカーテンを開けて朝日を部屋にいれ、そして窓を全開にして空気の入れ替えをする。
リビングと廊下の掃除を終えて、キッチンを片付けながら朝食を作る。昨晩の水炊きの汁の残りで雑炊を作るのだが、味の変化をつけるためにチーズを用意した。
テーブルの上を拭いて、そして自分の一息用のお茶を飲むのにカップを用意したところで、目覚ましの音が聞こえてきたかと思うと、寝室からがさごそと音がする。
「やっとお目覚めね、散らかし怪獣、涼音め!」
また寝ぼけてパジャマのまま出てきたら寒いだろうと思い、芽生は入り口近くでガウンを持って待機していると、やはり寝起きで判断力低下中の涼音が、目をこすりながら起きてきた。
「おはようございます! はい、これ羽織って。歯磨きと洗顔どうぞ。タオルは代えてありますから」
「……はよ」
涼音は、すでにきれいにした部屋を見渡し、そして芽生を見るとぎゅっと抱きしめた。
「え、わ、わ、わ! 涼音さん!」
「うーん、眠い……。お前、抱き枕にちょうどよさそう……」
「ちょっと!」
本日二回目の男子からのハグに、芽生の頭が追い付かない。海斗とは違うもっと大人の感触に、そして肩で聞こえてくる涼音の声。昨日の帰り際のことを思い出して、芽生はパニックになった。さりげなく首筋にキスをされて、「ひゃあ!」と素っ頓狂な声を上げる。
「あれ、俺抱きついてるのって音の出る枕だっけ? ……あーはいはい、怒るなよ、顔洗ってくるわ」
芽生を手放すと、涼音はのそのそとバスルームへと向かっていった。芽生は胸のドキドキが止まらない。
(どうして、涼音さんは不意打ちばっかり……!)
唇が触れた首筋を撫でながら、これからは気をつけようと、芽生は気を紛らわせるために気を引き締めて、朝食の準備に全神経を集中させて取り掛かった。
「涼音さん。チーズ、食べられますよね?」
「ああ」
戻ってきた涼音はまだ眠たそうな顔をしており、呆けているので椅子に座るように促すと、ぼうっとしながら席に着いた。それは会社では絶対に見ることのできない姿であり、さっきのことがなければ芽生はなんだか可愛らしく思えてきた。
「はい、今日の朝ごはんはチーズ入りのお雑炊ですよ! ああもう、匂いだけでよだれ出そう」
「……お前、朝から元気だな。どっから出てくるんだよ、そのパワーは」
「うふふ。今日はですね、なんと、かわいい弟たちが朝ご飯にフレンチトースト作ってくれて、私は朝から感激と幸せとあまりの可愛さに泣きましたよ。パワーは家族からもらっているんです」
お茶を用意して、涼音の前に座る。涼音はふうんと興味なさそうにうなずいてから、手を合わせていただきますと言った。
「涼音さんって、腹黒いし性格悪いし汚部屋の住人ですけど、所作は本当にキレイですよね」
「なんかいらないものが三つばかりついていたが俺の聞き間違いか?」
「ええ、聞き間違いなので忘れてください。それより、絶対美味しいですよそれ」
「……一口食べるか?」
それに芽生は思わず背筋を正してしまった。その姿に、涼音が笑う。
(わ、その笑顔は反則だ……)
涼音はまずは自分が食べてから、美味しいと呟いてほっとした顔をした。芽生は、その会社の誰にも見せないであろう涼音の素顔に、心なしか惹かれていた。
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