44 / 51
第三章
第42話
しおりを挟む
11月21日
〈 文化祭の初日。
美空くんと一緒に、模擬店を回った。
たくさん幸せそうな顔を見せてくれる君に
僕は毎日恋をする。
もらったミサンガは、天国まで持って行こう。
たった一人の人から好きと言われることが
これほどまでに嬉しいことだと、僕は知らなかった。
僕が死んでしまっても、君のことをずっと見守り続けたい。
君が、この先ずっと幸せでいますように。 〉
12月4日
〈 美空くんと今日もお願いを叶えた。
君のお願いを叶える僕の使命は、もうそろそろ終わりを告げる。
僕の身体は日に日に具合が悪い。
君にいつまで笑顔を向けていられるだろうか。
どうしてこの身体に生まれてきてしまったんだろう。
どうして、普通の高校生活が送れないのだろう。
どうやったら、もっと長く生きられるんだろう。
一日でも長く、一秒でも多く、君と一緒にいられたらいい。
どうか、僕の身体、もう少し頑張ってくれ。 〉
12月7日
〈 せめて、クリスマスまではもってほしい。
最後のクリスマスを、美空くんと一緒に過ごせたら
どれほど楽しい思い出になるだろう。
君がくれた数々の思い出と共に
僕は眠りにつきたい。
どうか、それまでは大丈夫でいてくれ。
クリスマスプレゼントを渡したい。
喜ぶ君の顔が見たい。
手を繋いで、どこかへ出かけよう。
ああ、そのままきっと、時が止まればいいのにと思うのだろう。
今、この瞬間でさえもそう思うのだから。
僕はずっと、君が好きで仕方ない。 〉
12月15日
〈 僕が君の神様でいられるのは
きっとあとほんの少し。
そんな気がする。
一緒に居られるのも、あとわずか。
時間は残酷だ。
僕からどんどん君を奪ってしまうのだから。
ああ神様、彼女が一日でも多く、幸せな日々を送れますように。
どうか、笑顔の絶えない日々を送れますように。
そして、いずれ大事な人と
かけがえのない人生を送れますように。
ずっと、彼女の幸せを願っている。 〉
12月18日
〈 僕は生徒会長で、みんなその役職で僕を見る。
本当の僕はここにいる。
美空くんのことが好きな、ただの高校生の僕。
寿命があと少ししか残っていない僕。
死んでしまうと医者に言われた僕。
ドナーが見つからない僕。
僕の身体はもう限界に等しい。
最後まで、僕は、僕という人でいたい。
病弱でかわいそうだったなんて思われたくない。
僕は、葵田夕という人間のまま死にたい。
わがままばかりだけれど
僕は、美空くんの神様のまま、消えてしまうことを望んでいる。
決して彼女に、弱い自分を見せたくはない。
ずっと頼れる存在でいたい。
でも、強がっていられるのだって、きっともう少しだけだろう。 〉
12月22日
〈 美空くん、ありがとう。
僕は、これから長い旅に出ることになる。
とてもとても長い旅で、僕もまだ行ったことがない所だけれど。
きっと長く遠く果てしなく続く旅路だ。
君は、その旅に出る僕に、最高の思い出をくれた。
思い出と、経験しか持って行けない旅路に
君はきらめく思い出と、美しい日々をくれた。
君が、僕の最後の望みを叶えてくれたこと。
僕のことを神様だと信じてくれたこと。
僕を好きになってくれたこと。
誰も叶えられなかった僕の願いを
全て叶えてくれた君に感謝している。
君が生きてくれて、生まれてくれて僕は嬉しい。
僕を助けるために生まれて来てくれたのかもしれないね。
ありがとう、美空くん。
ずっと幸せでいて欲しい。
ずっと笑顔でいて欲しい。
大好きなんだよ、美空くん。
もっと一緒にいたかった。
でも、僕はもう生きられない。
ありがとう、美空くん。
言葉にできないくらいに、感謝をしている。 〉
そこで、日記が終わっていた。美空はその後の空白のページをめくり、もう一度最初から読み返し、気がつけばとっくに夜中を過ぎて明け方近くになっていた。
それでも夕の日記を何度も何度も読み返した。まるで、そこに夕が息づいているかのような錯覚に陥り、声やしぐさを鮮明に思い出しながら美空は日記をめくる。
読み返す度に、あの生きている色づいていた日々が思い出される。美空が人生を楽しいと思えたのは、死ぬことを止めてよかったと思えたのは、全て夕のおかげだ。
感謝してもしきれないのは、美空の方だった。夕は夕の残り全てを、美空にくれたのだから。
嗚咽さえ出てこないまま、記憶と思い出と、目の前の文字に美空は没頭した。涙もなにも出てこなくなるほどに、美空が無になった時、ふとノートの最後のページの感触が、他のページと違っていることに気がついた。
よくよく見てみると、ノートの最後のページがくっついてしまっている。経年劣化なのか、ピッタリとくっついてしまっているページを丁寧に剥がすと、案外きれいに取れた。
そこに書かれていた文字を読んで、美空の視界は雨の日に上を向いた時のように滲んだ。
〈 ああ、死にたくないな。
美空くん、もっと君と一緒に居たい。 〉
つぶやくような文字で最後に書かれた一言に、美空はたまらずに涙をこぼした。
〈 文化祭の初日。
美空くんと一緒に、模擬店を回った。
たくさん幸せそうな顔を見せてくれる君に
僕は毎日恋をする。
もらったミサンガは、天国まで持って行こう。
たった一人の人から好きと言われることが
これほどまでに嬉しいことだと、僕は知らなかった。
僕が死んでしまっても、君のことをずっと見守り続けたい。
君が、この先ずっと幸せでいますように。 〉
12月4日
〈 美空くんと今日もお願いを叶えた。
君のお願いを叶える僕の使命は、もうそろそろ終わりを告げる。
僕の身体は日に日に具合が悪い。
君にいつまで笑顔を向けていられるだろうか。
どうしてこの身体に生まれてきてしまったんだろう。
どうして、普通の高校生活が送れないのだろう。
どうやったら、もっと長く生きられるんだろう。
一日でも長く、一秒でも多く、君と一緒にいられたらいい。
どうか、僕の身体、もう少し頑張ってくれ。 〉
12月7日
〈 せめて、クリスマスまではもってほしい。
最後のクリスマスを、美空くんと一緒に過ごせたら
どれほど楽しい思い出になるだろう。
君がくれた数々の思い出と共に
僕は眠りにつきたい。
どうか、それまでは大丈夫でいてくれ。
クリスマスプレゼントを渡したい。
喜ぶ君の顔が見たい。
手を繋いで、どこかへ出かけよう。
ああ、そのままきっと、時が止まればいいのにと思うのだろう。
今、この瞬間でさえもそう思うのだから。
僕はずっと、君が好きで仕方ない。 〉
12月15日
〈 僕が君の神様でいられるのは
きっとあとほんの少し。
そんな気がする。
一緒に居られるのも、あとわずか。
時間は残酷だ。
僕からどんどん君を奪ってしまうのだから。
ああ神様、彼女が一日でも多く、幸せな日々を送れますように。
どうか、笑顔の絶えない日々を送れますように。
そして、いずれ大事な人と
かけがえのない人生を送れますように。
ずっと、彼女の幸せを願っている。 〉
12月18日
〈 僕は生徒会長で、みんなその役職で僕を見る。
本当の僕はここにいる。
美空くんのことが好きな、ただの高校生の僕。
寿命があと少ししか残っていない僕。
死んでしまうと医者に言われた僕。
ドナーが見つからない僕。
僕の身体はもう限界に等しい。
最後まで、僕は、僕という人でいたい。
病弱でかわいそうだったなんて思われたくない。
僕は、葵田夕という人間のまま死にたい。
わがままばかりだけれど
僕は、美空くんの神様のまま、消えてしまうことを望んでいる。
決して彼女に、弱い自分を見せたくはない。
ずっと頼れる存在でいたい。
でも、強がっていられるのだって、きっともう少しだけだろう。 〉
12月22日
〈 美空くん、ありがとう。
僕は、これから長い旅に出ることになる。
とてもとても長い旅で、僕もまだ行ったことがない所だけれど。
きっと長く遠く果てしなく続く旅路だ。
君は、その旅に出る僕に、最高の思い出をくれた。
思い出と、経験しか持って行けない旅路に
君はきらめく思い出と、美しい日々をくれた。
君が、僕の最後の望みを叶えてくれたこと。
僕のことを神様だと信じてくれたこと。
僕を好きになってくれたこと。
誰も叶えられなかった僕の願いを
全て叶えてくれた君に感謝している。
君が生きてくれて、生まれてくれて僕は嬉しい。
僕を助けるために生まれて来てくれたのかもしれないね。
ありがとう、美空くん。
ずっと幸せでいて欲しい。
ずっと笑顔でいて欲しい。
大好きなんだよ、美空くん。
もっと一緒にいたかった。
でも、僕はもう生きられない。
ありがとう、美空くん。
言葉にできないくらいに、感謝をしている。 〉
そこで、日記が終わっていた。美空はその後の空白のページをめくり、もう一度最初から読み返し、気がつけばとっくに夜中を過ぎて明け方近くになっていた。
それでも夕の日記を何度も何度も読み返した。まるで、そこに夕が息づいているかのような錯覚に陥り、声やしぐさを鮮明に思い出しながら美空は日記をめくる。
読み返す度に、あの生きている色づいていた日々が思い出される。美空が人生を楽しいと思えたのは、死ぬことを止めてよかったと思えたのは、全て夕のおかげだ。
感謝してもしきれないのは、美空の方だった。夕は夕の残り全てを、美空にくれたのだから。
嗚咽さえ出てこないまま、記憶と思い出と、目の前の文字に美空は没頭した。涙もなにも出てこなくなるほどに、美空が無になった時、ふとノートの最後のページの感触が、他のページと違っていることに気がついた。
よくよく見てみると、ノートの最後のページがくっついてしまっている。経年劣化なのか、ピッタリとくっついてしまっているページを丁寧に剥がすと、案外きれいに取れた。
そこに書かれていた文字を読んで、美空の視界は雨の日に上を向いた時のように滲んだ。
〈 ああ、死にたくないな。
美空くん、もっと君と一緒に居たい。 〉
つぶやくような文字で最後に書かれた一言に、美空はたまらずに涙をこぼした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる