僕は君だけの神様

神原オホカミ

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第二章

第26話

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 夕と登校して、玄関で別れてそれぞれの教室へと向かった。冷たい手の温もりが消えないようにと思ったのだが、階段を上って教室に着くころには、すっかり手が熱くなってしまっていた。

 クラスに入って、すでに登校していたまゆにカラオケの話をもちかけると、朝からご機嫌にクーポン券に飛びついた。

「カラオケ? 行く行く。しかもなにこれ、めっちゃ割引じゃん!」

 その姿に苦笑いをしながら、美空は他にも誘おうと言うと、まゆが「今日カラオケ行く人ー!」と声を張り上げた。あっという間に行くといって数名が集まってくる。美空は奈々も誘って、その日の放課後にみんなで行くことにした。

「っていうか、このカラオケでバイトしてたんだったら、言ってくれたら良かったのに!」

 どこのカラオケよ、とクーポンの裏の店の名前を見て、まゆが目を吊り上げた。美空はそんな表情のコロコロ変わるまゆを見ながら、ほんの少し苦笑いをする。

「でも私がいるの朝だから」

「別に、委員長の顔見に行くわけじゃなくて、クーポン目当てよ」

 まゆはそう言ったのだが、「まあ、ちょっかい出しに行ってもよかったんだけど」と付け加えた。

 あの言い争い以来、まゆとはなんだかんだで良い関係を築けている。まゆは言葉はきついが、それ以上に素直な性格だった。どことなく美海に似ているところを感じられて、美空は嫌いではなかった。クラスのみんなからも、好かれているのは裏表がない性格だからだろうと想像がつく。

「じゃあ放課後、みんなで楽しもうね」

「ポテト食べようよ、ポテト!」

 すでに授業のことよりも、みんな放課後のことで頭がいっぱいだった。美空も今からうきうきしてしまい、すぐに夕にメッセージを送った。楽しんでおいでね、と帰ってきて、美空はほほ笑む。

 そして放課後に、〈クラスの友達とカラオケに行く〉いう願いが速攻で叶うこととなったことに、改めて驚く。お願いを書き始めて、それを意識し始めて、自分が変わっていく感覚が分かる。そして、お願いの叶う間隔が狭まってきているような気がしていた。

 それは、急いで願いを叶えないと、寿命がもう少しで終わりだというのをカウントされているかのような気分だった。しかし、急いだところで仕方がない。美空は悲しむよりも、急くよりも、もっとたくさんの思い出と経験を作りたいと願っていた。
 あっという間の一日が過ぎ、みんなでカラオケではしゃいだ。初めてのカラオケにおっかなびっくりだったが、放課後さっそくやってきた美空に店長は優しくしてくれた。

 何を歌っていいか分からないでいると、奈々やまゆが勝手に曲を選んで入れて、みんなで一緒になって歌った。友達と放課後にこうして過ごすことが、こんなにも楽しいとは、全く予想していなかった。もっと早くに、味わっておけばよかったと後悔をしたのだが、また行こうと言われて、美空は又次、があることに嬉しくなった。

 そんなカラオケの帰り道、ふいにまゆがそういえばと言い始めたのは、文化祭の話題だった。

「うちのクラスの出し物、準備まだ全然してなくて大丈夫なのかな? あと二週間だし、他のクラスは取りかかってるけど」

 言われてコーヒーショップにすると決まったものの、全く手つかずだったことを思い出した。

「委員長がしっかりしないとじゃん!」

 まゆが目を吊り上げて美空の肩を持って、ガシガシと揺すった。

「いやいや、文化祭は各クラスの実行委員がいて……あ、奈々ちゃんだったよね?」

 みんなの視線を受けて、奈々はぎょっとした顔をした。その後、困ったように視線を逸らす。

「そう、なんだけどさ……どう進めていいか分かんなくて」

 それにまゆは奈々の背中を思い切り叩いた。痛い音が響き渡って、奈々が驚いて咳き込む。

「何それ、だったら声かけなよ! これじゃいつまでたっても進まないじゃん。計画すぐ立てよう」

「明日の朝のショートホームルームの時間と、ロングホームルームの時間使う? 私、先生に伝えておこうか?」

 美空の提案に奈々が曇っていた表情を輝かせた。全員一致で、内装のテーマをどうするかを、メールでクラスの友達全員に回すように伝えて、明日の朝までに考えてくることになった。

「そうと決まったら、とっとと決めて、サクッと準備しよう」

「グランプリ取れるように、頑張ろうよ」

 和気あいあいと色々なアイデアや意見が飛び交う。美空は、こうして過ごすことができて、良かったなと本気で思いながら帰宅した。すぐに夕に連絡をして、カラオケの夢がかなったことを報告する。

 そうしてから、魔法のノートを取り出してぺらぺらとめくった。今日叶ったばかりのページには、その日の感想を書き込んだ。そして、その隣のページを指でなぞった。ふうと息を吸い込んでから、シャープペンを走らせる。

〈文化祭を全力で楽しむ〉

 ノートにそう記入をして、美空はコンセプトがどういうものがいいのかをさっそく調べつつ、アイデアをまとめた。
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