19 / 74
木霊の前では、告白禁止
第17話
しおりを挟む
「そういう飛鳥は、どうして見えるわけ?」
そんな質問をされたのは親以来だったわけで、俺はたちどころに言葉に詰まって、息まで詰まって危うく呼吸の仕方を忘れるところであった。
「……それ、俺が聞きたい。生まれた時から見えてたから」
「なにそれずるいわ」
必要な人に必要な能力が備わらなかったというのは、人間界においてよくあることのようだと俺は認識している。
この場合、俺みたいなのに必要のなかった妖怪が見える能力は、水瀬にとっては人生におけるもっとも重要だと言わざるを得ないものである。
できるのであれば、譲渡してやりたいと思うのだが、水瀬に妖怪の類が見えたり話せたりできてしまったとしたら、それこそもはや人ではなく、妖怪の一種と変わらない生命体になってしまうと思われた。
「ずるくないぞ。おかげでこっちはずいぶんと苦労した。このままでは永遠に変人扱いだ」
「じゃあ、私が永遠に側にいてあげるね。私みたいなまともな人間が近くにいれば、飛鳥の誤解もとけるはずよ」
「どの口がまともだと言うんだ!」
どこをどうもってしたら、まともの部類に水瀬がカテゴライズされるというのだ。この美少女がまともというラベルを張られるのであれば、俺は神レベルでまともだと言わざるを得ない。
「俺の変人という誤解を解くために一緒にいるという聞こえの良い言い方をしたが、内心はただただ妖怪が見たいだけだろう!」
ばれた?と言わんばかりに舌先をちょろりと出しているので、今度ハサミでその舌でもちょん切って、炭火で焼いてやろうかとさえ思った。
「いいの、そんな言い方して? 今のプロポーズだったのに」
「はあ?」
「だって、永遠に側にいてあげるわなんて、飛鳥に言ってくれる人これから先に私以外に現れるとでも思っているわけ?」
「待て待て待て。なぜ現れない前提で話が進む?」
「じゃあ現れる自信と確証はあるのね?」
それに俺の方が舌を巻いた。どう転んでも、舌戦では不利になってしまうのは、決して俺の頭が悪いわけでも、自分の人生に今一つ自信が持てないからでもない。全て水瀬雪が悪いのである。
「ほら、無いでしょ? だったらプロポーズ受けときなさいよ」
「どうして俺がそんな上から目線の、愛のないプロポーズを受けなきゃならんのだ」
「あらやだ、愛くらい後から追いつくわよ」
「うまいこと言うな!」
俺の怒声が原始林に響き渡って、言うなー言うなー言うな―とこだまする。なんでこんなタイミングで、しかも阿呆みたいな台詞が反響してこなくてはならないんだと俺が耳を塞いだところで、目の前の樹齢何千年を誇るような木の幹に顔がぬうと現れて俺のか弱い心臓を驚かせた。
そんな質問をされたのは親以来だったわけで、俺はたちどころに言葉に詰まって、息まで詰まって危うく呼吸の仕方を忘れるところであった。
「……それ、俺が聞きたい。生まれた時から見えてたから」
「なにそれずるいわ」
必要な人に必要な能力が備わらなかったというのは、人間界においてよくあることのようだと俺は認識している。
この場合、俺みたいなのに必要のなかった妖怪が見える能力は、水瀬にとっては人生におけるもっとも重要だと言わざるを得ないものである。
できるのであれば、譲渡してやりたいと思うのだが、水瀬に妖怪の類が見えたり話せたりできてしまったとしたら、それこそもはや人ではなく、妖怪の一種と変わらない生命体になってしまうと思われた。
「ずるくないぞ。おかげでこっちはずいぶんと苦労した。このままでは永遠に変人扱いだ」
「じゃあ、私が永遠に側にいてあげるね。私みたいなまともな人間が近くにいれば、飛鳥の誤解もとけるはずよ」
「どの口がまともだと言うんだ!」
どこをどうもってしたら、まともの部類に水瀬がカテゴライズされるというのだ。この美少女がまともというラベルを張られるのであれば、俺は神レベルでまともだと言わざるを得ない。
「俺の変人という誤解を解くために一緒にいるという聞こえの良い言い方をしたが、内心はただただ妖怪が見たいだけだろう!」
ばれた?と言わんばかりに舌先をちょろりと出しているので、今度ハサミでその舌でもちょん切って、炭火で焼いてやろうかとさえ思った。
「いいの、そんな言い方して? 今のプロポーズだったのに」
「はあ?」
「だって、永遠に側にいてあげるわなんて、飛鳥に言ってくれる人これから先に私以外に現れるとでも思っているわけ?」
「待て待て待て。なぜ現れない前提で話が進む?」
「じゃあ現れる自信と確証はあるのね?」
それに俺の方が舌を巻いた。どう転んでも、舌戦では不利になってしまうのは、決して俺の頭が悪いわけでも、自分の人生に今一つ自信が持てないからでもない。全て水瀬雪が悪いのである。
「ほら、無いでしょ? だったらプロポーズ受けときなさいよ」
「どうして俺がそんな上から目線の、愛のないプロポーズを受けなきゃならんのだ」
「あらやだ、愛くらい後から追いつくわよ」
「うまいこと言うな!」
俺の怒声が原始林に響き渡って、言うなー言うなー言うな―とこだまする。なんでこんなタイミングで、しかも阿呆みたいな台詞が反響してこなくてはならないんだと俺が耳を塞いだところで、目の前の樹齢何千年を誇るような木の幹に顔がぬうと現れて俺のか弱い心臓を驚かせた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる