契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

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第3章~港町での物語~

ブリュンヒルデの村訪問

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 レティとの出会いを思い出していると、ふと、ティアが立ち上がった。ふらついてもすぐに支えられるように身構えたが、足取りはしっかりしていた。

「お待たせ」

 顔にはまだ疲れが残っていたが、それでも大分元気にはなっているようだった。

「もういいのか?」
「ええ。それにあんまり長居したら怪しまれるわ。なにせ私は、男の子と二人っきり、なんだからね?」

 からかっているのか、最後にウインクを付け加える。
 それならそもそも俺は外で待っていればよかった気がするが、出た瞬間に村の人から冷たい視線を向けられて、中にいて良かったと思った。

「あとは村長に報告すれば、ここでの目的は達成よ」
「なあ、俺がわざわざ村に一緒に来た理由はなんだ?最初にも言ったけど、外で待っていれば良かったんじゃないか?」

 ティアはしばらく考えると、こちらを向き、何かを言おうとした。だが、その言葉は乱入者によって遮られた。

「ちょっとティア、男を連れてくるなんてどういうことよ」

 背は2メートル近くあり、肩幅は相撲取りぐらいある女性(?)が俺達の前に立っていた。いや、女性でいいんだよな?この村にいるわけだし?

 頭では理解しているのだが、それでもいまいち納得には至らない。腕や脚の筋肉は、男よりもしっかりしていて、まともに戦ったら勝てる気がしない。

「村長の許可を得たとは言っていたけれど、やっぱり男なんて俗物じゃない。今も私の体を嫌らしい目で見回しているわ!あー汚らわしい」

 完全な言いがかりだ。確かに腕とか脚とか見てしまったが、それは人並み外れたと言うか、物珍しさで思わず見てしまっただけで、邪な気持ちなど一ミリもない。

「彼はそんな人じゃないわ」
「どうだか。それにティア、貴方だって騙されているかもしれないわよ。もう昔ことを忘れたの?」
「そんなわけないじゃない」
「だったら男なんて信じたら駄目よ。貴方の好きだったあの男だって最後は裏切ったじゃない。きっと怖くて逃げ出したのよ」
「黙りなさい!」

 怒りと苦しみのこもった声が響き渡る。ティアは耳を抑えながら、下を向いた。グッと目を閉じていたが、ゆっくりと顔を上げると、女を睨み付けた。

「あの人のことを悪く言うなんて許さないわ」
「あらら、怒っちゃった?ウブねー」
「黙りなさいと言ったのが分からないの?」

 いつもは穏やかなティアが、ここまで感情を顕にするのを始めて見た。だが、女は気にするどころか、見下しているようにすら見えた。

「命令だなんて何様のつもり?」
「お黙りなさい」

 空気が凍てつくように冷たくなった。肌を切り裂くような鋭い言葉に、有無を言わせぬ威圧感。
 馬鹿にするような態度を取っていた女も黙り、狼狽えた様子で俺達の後ろを指差した。

「ジグルズを愚弄するなんて、わたくしが許しませんよ」

 黒いドレスの少女が、綺麗な黒髪をなびかせながら歩いてくる。その姿は美しく、口さえ開かなければただの美少女だ。

「め、女神がどうしてここにっ!?」
「シグルズのいるところ、わたくしはどこにでも現れますわ。さあ、すぐに謝りなさい。さもなくば、この村の加護を消すわよ」

 女の顔が真っ青になった。大きな体をガタガタと震わせ、頭を地面に着けた。

「シ、ジグルズ!?この男がっ!?も、申し訳ございませんでした!」
「分かればいいの。けどね、次はないわ。覚えておきなさい」

 女神はそう言うと、俺の前に立って微笑んだ。

「レティ、どうしてこんなところに?」
「毎年この時期にはこの村に来るのよ。祈りの舞の力を借りてね」

 レティの目がティアに向けられると、見られた彼女は頭を下げた。

「ようこそいらっしゃいました。歓迎しますよ、ブリュンヒルデ様」
「ふふ、そう言うのは嫌いじゃないわ。案内してくださる?」

 ティアには頷くと、先頭に立って歩き出す。その後ろをブリュンヒルデ…レティは着いていく。
 俺にとっては突然の登場だったが、二人はまるでこうなることが分かっていたように見えた。
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