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第3章~港町での物語~
護衛対象の故郷にやってきました
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洞窟から出ると、何キロか離れた場所に水面が広がっているのが見えた。その手前には木々が生い茂り、一面が緑だった。突風が吹き荒れ、慌てて踏ん張ったところで、足場が狭いことに気がついて唖然とした。
俺が立っているのは、人一人がやっと通れるぐらいの広さの道で、ダンジョンに続くはずの道は既に消えていて、下から上がって来ようものなら行き止まりだ。
「ありがとうヤマト、もう歩けるわ」
ティアの顔は青白いままだったが、さっきよりも意識ははっきりしていた。背中から下ろすと、また風が吹き、髪を揺らした。それでも、髪が乱れるのも気にせず、道の向こうをじっと見つめている。俺も視線を向けると、木々の間からはうっすらと鳥居のようなものが見えていた。
「あそこが目的地なのか?」
「そのひとつね」
「そう言えばまだ行き先を聞いてなかったけど、教えてもらえないか?」
ティアは少し考える仕草をしたが、ゆっくりと頷いた。
「目の前の村の名前はコペン、私の育った村よ。毎年この時期には帰省しているの」
「ティアの育った村か…てことは踊り子がたくさんいるのか?」
「ええ、職業が元踊り子は多いわ。そうそう、ヤマトなら心配ないと思うけど一応気を付けてね」
「何をだ?」
ティアは俺の質問には答えず、ただ意味深に笑うと、道を下っていった。
☆☆
コペン村に着くと、盛大な出迎えが待っていた。額に深いしわが刻まれた老婆を先頭に、何人もの女性が立っていた。共通して顔をしかめていて、俺は明らかに歓迎されていないように思えた。
「おかえりなさいティア」
「お出迎えありがとうございます、村長」
どうやら先頭の老婆が村長のようだ。一見すると穏やかに挨拶をしているように見えるが、明らかに俺を気にしている。
聞かれる前にこっちから挨拶しておこう。これで少しでも印象が良くなれば、対応も変わってくるはずだ。
「俺は…」
「ティアよ、なぜ男を連れて来た」
村長は俺の言葉を遮り、漠然と感じていた不安をはっきりと口にした。
やはり、俺は歓迎されていない。理由までは想像していなかったが、なるほど、迎えに来た人だけでなく、村の中を覗いてみても女性しかいない。多分この村には、男は一人もおらず、入るにも禁止されているのだろう。
ではなぜ、ティアは俺を連れて来たんだ?言ってくれれば外で待っていたのに。
「彼は特別よ。加護を得ているわ」
ティアは周囲の反応を無視して、淡々と告げた。
「なに?こんな男が?」
村長は色物でも見るかのようにじっと見つめてくる。加護とは、ヴァルキリーの力のことだろうか?だったら俺だけではなく、他にも該当する冒険者はいそうなものだが。
「そこまで言うのなら試してみよう。おい男、その門をくぐるがよい」
ダンジョンから出たときに見えていた鳥居を指さされた。遠目からは分からなかったが、近づいてみると、不思議な力を感じた。
本来は悪を払うもののようだが、懐かしさを感じ、歓迎されているように思えた。
「失礼します」
一声かけると、門をくぐる。全身をまとわりつくような、高密度の魔力。もしこれが攻撃魔法だったら、ヴァルキリーと契約している俺とて、無傷では済まなかったかもしれない。
だが、体に害を受けることなく、あっさりと通り抜けることが出来た。
「ほう…これは…」
村長は驚いた顔を浮かべると、俺に近づいて来て、膝をついた。他の女性も驚いていたが、すぐに村長に習った。
「ようこそいらっしゃいました、シグルズ殿」
シグルズ。それは、ブリュンヒルデ…レティが俺を呼ぶ時の名だった。
俺が立っているのは、人一人がやっと通れるぐらいの広さの道で、ダンジョンに続くはずの道は既に消えていて、下から上がって来ようものなら行き止まりだ。
「ありがとうヤマト、もう歩けるわ」
ティアの顔は青白いままだったが、さっきよりも意識ははっきりしていた。背中から下ろすと、また風が吹き、髪を揺らした。それでも、髪が乱れるのも気にせず、道の向こうをじっと見つめている。俺も視線を向けると、木々の間からはうっすらと鳥居のようなものが見えていた。
「あそこが目的地なのか?」
「そのひとつね」
「そう言えばまだ行き先を聞いてなかったけど、教えてもらえないか?」
ティアは少し考える仕草をしたが、ゆっくりと頷いた。
「目の前の村の名前はコペン、私の育った村よ。毎年この時期には帰省しているの」
「ティアの育った村か…てことは踊り子がたくさんいるのか?」
「ええ、職業が元踊り子は多いわ。そうそう、ヤマトなら心配ないと思うけど一応気を付けてね」
「何をだ?」
ティアは俺の質問には答えず、ただ意味深に笑うと、道を下っていった。
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コペン村に着くと、盛大な出迎えが待っていた。額に深いしわが刻まれた老婆を先頭に、何人もの女性が立っていた。共通して顔をしかめていて、俺は明らかに歓迎されていないように思えた。
「おかえりなさいティア」
「お出迎えありがとうございます、村長」
どうやら先頭の老婆が村長のようだ。一見すると穏やかに挨拶をしているように見えるが、明らかに俺を気にしている。
聞かれる前にこっちから挨拶しておこう。これで少しでも印象が良くなれば、対応も変わってくるはずだ。
「俺は…」
「ティアよ、なぜ男を連れて来た」
村長は俺の言葉を遮り、漠然と感じていた不安をはっきりと口にした。
やはり、俺は歓迎されていない。理由までは想像していなかったが、なるほど、迎えに来た人だけでなく、村の中を覗いてみても女性しかいない。多分この村には、男は一人もおらず、入るにも禁止されているのだろう。
ではなぜ、ティアは俺を連れて来たんだ?言ってくれれば外で待っていたのに。
「彼は特別よ。加護を得ているわ」
ティアは周囲の反応を無視して、淡々と告げた。
「なに?こんな男が?」
村長は色物でも見るかのようにじっと見つめてくる。加護とは、ヴァルキリーの力のことだろうか?だったら俺だけではなく、他にも該当する冒険者はいそうなものだが。
「そこまで言うのなら試してみよう。おい男、その門をくぐるがよい」
ダンジョンから出たときに見えていた鳥居を指さされた。遠目からは分からなかったが、近づいてみると、不思議な力を感じた。
本来は悪を払うもののようだが、懐かしさを感じ、歓迎されているように思えた。
「失礼します」
一声かけると、門をくぐる。全身をまとわりつくような、高密度の魔力。もしこれが攻撃魔法だったら、ヴァルキリーと契約している俺とて、無傷では済まなかったかもしれない。
だが、体に害を受けることなく、あっさりと通り抜けることが出来た。
「ほう…これは…」
村長は驚いた顔を浮かべると、俺に近づいて来て、膝をついた。他の女性も驚いていたが、すぐに村長に習った。
「ようこそいらっしゃいました、シグルズ殿」
シグルズ。それは、ブリュンヒルデ…レティが俺を呼ぶ時の名だった。
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