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第3章~港町での物語~
彼女はいきなり服を投げ捨てました
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エミールと別れた俺たちは、更にダンジョンを進んでいった。そしてティアが立ち止まったのは、行き止まりだった。
どうしたものかとティアを見ると、真剣な顔で壁を見つけ、何かを確かめるように手で触れた。
「ここね」
「隠し通路でもあるのか?」
「ええ、そんなところよ」
ティアはそう言うと持っていたリュックを置いた。ダンジョンに入ったときと同じように、ここを開けるためのアイテムがあるのだろうか?
それとも、何かしらの魔法を使うことで開くのだろうか?
俺なりに想像をしていると、着ている服に手を伸ばし、一気に脱ぎ捨てた。あまりの光景に、驚くことしか出来なかった。
普段の格好は露出が少なく、肌色は首と手ぐらいだ。服は長袖で、下はスカートではあるもののくるぶしが隠れるほどの長さまである。
第一印象では、女子校だったらお姉さまと慕われていそうだと思ったが、今もその印象は変わっていない。穏やかで、色気とは遠い存在。そんな彼女が、突然、目の前で、それも屋外で、服を脱いだのだ。
「そんなに見られたら恥ずかしいわ」
「あ、ごめん」
服の下から出てきたのは下着…ではなく、水着に似た民族衣装のような布だ。淡い緑色で、胸と下半身の大事な部分を覆っていて、腰のあたりからは膝までは、肌を隠すように孔雀色の布が広がっていた。
「えっとその服は…まさか踊り子の?」
「ええ、まあ…あまりこんな格好はしたくないのだけれど、スキルを使うにはこれくらいしないとちょっとね…」
困った顔を浮かべたのも束の間で、すぐに壁の前に立つと、右に左にステップを踏み始めた。軽やかな動きの跡には、光の粒子の軌跡が残り、たくさんの蝶が舞っているようだ。ティア自身も蝶の一部となり、この世の存在ではないと思ってしまうほどに、美しい。
時間が経つにつれて、光の中に水滴が飛ぶようになった。その正体は、汗だった。額から流れる汗は頬を伝い、首やうなじを照らす。肩から出た汗は二の腕を通って、地面に落ちていく。
止めた方がいいのだろうか?事情は分からないが、ティアの体にはかなりの負担がかかっている。このままでは倒れてしまっても不思議ではない。
だが、俺の疑念はティアの顔を見た途端に吹き飛んだ。真剣で、迷いのない目をしているのだ。邪魔を擦っるのは無粋と言うものだ。
ティアの舞は10分ほど続き、変化は突然やってきた。
壁の一部が切り取られたように消え、道が現れたのだ。
「ティア、これは…って、危ない!」
その場で倒れそうになる体を慌てて支えた。全身汗だくだった体は、息も絶え絶えで、今にも気を失いそうだ。
「今すぐヒールを…」
「だめよ」
ティアは俺の腕をつかむと、うっすらと目を開けた。
「ヤマトの力はヴァルキリーの力、私に使ってはいけない」
「それはどういう…」
「それよりも、道が消える前に通り抜けたいわ」
「分かった」
と言ったものの、腕にティアを抱えたままでは荷物を持つことが出来ない。かくなるうえはおんぶをするしかない。
一度地面に下ろすと、背中を差し出した。ティアは俺の意図を察してくれたようで、おとなしく後ろにくっついてきた。
柔らかくて、いいにおいがする。レティが後ろからまとわりついて来るのとも、セイラが枕代わりに体重を預けてくるのとも違う。背中越しに伝わってくるのは、信頼感だった。
「ティア、行くぞ…って、寝てる」
俺が荷物を持つ頃には、すでに寝息を立てていた。それにしても、ただでさえ露出の多い格好なのに、汗をかいたままでは風邪をひいてしまう。
魔法を使えば、汗を乾かしたり、体を温めておくことが出来る…が、さっき禁止された。
「これならいいよな…インベントリ」
中からは、取り出したのは一枚の薄い布だ。防寒耐性がついていて、羽織ると見た目以上に温かい。
背中のティアにそっとかけると、彼女の切り開いた道を進むのだった。
どうしたものかとティアを見ると、真剣な顔で壁を見つけ、何かを確かめるように手で触れた。
「ここね」
「隠し通路でもあるのか?」
「ええ、そんなところよ」
ティアはそう言うと持っていたリュックを置いた。ダンジョンに入ったときと同じように、ここを開けるためのアイテムがあるのだろうか?
それとも、何かしらの魔法を使うことで開くのだろうか?
俺なりに想像をしていると、着ている服に手を伸ばし、一気に脱ぎ捨てた。あまりの光景に、驚くことしか出来なかった。
普段の格好は露出が少なく、肌色は首と手ぐらいだ。服は長袖で、下はスカートではあるもののくるぶしが隠れるほどの長さまである。
第一印象では、女子校だったらお姉さまと慕われていそうだと思ったが、今もその印象は変わっていない。穏やかで、色気とは遠い存在。そんな彼女が、突然、目の前で、それも屋外で、服を脱いだのだ。
「そんなに見られたら恥ずかしいわ」
「あ、ごめん」
服の下から出てきたのは下着…ではなく、水着に似た民族衣装のような布だ。淡い緑色で、胸と下半身の大事な部分を覆っていて、腰のあたりからは膝までは、肌を隠すように孔雀色の布が広がっていた。
「えっとその服は…まさか踊り子の?」
「ええ、まあ…あまりこんな格好はしたくないのだけれど、スキルを使うにはこれくらいしないとちょっとね…」
困った顔を浮かべたのも束の間で、すぐに壁の前に立つと、右に左にステップを踏み始めた。軽やかな動きの跡には、光の粒子の軌跡が残り、たくさんの蝶が舞っているようだ。ティア自身も蝶の一部となり、この世の存在ではないと思ってしまうほどに、美しい。
時間が経つにつれて、光の中に水滴が飛ぶようになった。その正体は、汗だった。額から流れる汗は頬を伝い、首やうなじを照らす。肩から出た汗は二の腕を通って、地面に落ちていく。
止めた方がいいのだろうか?事情は分からないが、ティアの体にはかなりの負担がかかっている。このままでは倒れてしまっても不思議ではない。
だが、俺の疑念はティアの顔を見た途端に吹き飛んだ。真剣で、迷いのない目をしているのだ。邪魔を擦っるのは無粋と言うものだ。
ティアの舞は10分ほど続き、変化は突然やってきた。
壁の一部が切り取られたように消え、道が現れたのだ。
「ティア、これは…って、危ない!」
その場で倒れそうになる体を慌てて支えた。全身汗だくだった体は、息も絶え絶えで、今にも気を失いそうだ。
「今すぐヒールを…」
「だめよ」
ティアは俺の腕をつかむと、うっすらと目を開けた。
「ヤマトの力はヴァルキリーの力、私に使ってはいけない」
「それはどういう…」
「それよりも、道が消える前に通り抜けたいわ」
「分かった」
と言ったものの、腕にティアを抱えたままでは荷物を持つことが出来ない。かくなるうえはおんぶをするしかない。
一度地面に下ろすと、背中を差し出した。ティアは俺の意図を察してくれたようで、おとなしく後ろにくっついてきた。
柔らかくて、いいにおいがする。レティが後ろからまとわりついて来るのとも、セイラが枕代わりに体重を預けてくるのとも違う。背中越しに伝わってくるのは、信頼感だった。
「ティア、行くぞ…って、寝てる」
俺が荷物を持つ頃には、すでに寝息を立てていた。それにしても、ただでさえ露出の多い格好なのに、汗をかいたままでは風邪をひいてしまう。
魔法を使えば、汗を乾かしたり、体を温めておくことが出来る…が、さっき禁止された。
「これならいいよな…インベントリ」
中からは、取り出したのは一枚の薄い布だ。防寒耐性がついていて、羽織ると見た目以上に温かい。
背中のティアにそっとかけると、彼女の切り開いた道を進むのだった。
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