契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

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第3章~港町での物語~

戦いは突然始まります

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 約束していた時間に、俺はティアと二人でイレギュラーを出た。盛大にヴァルキリー達が見送りをしてくれたが、レティだけ姿がなかったのは少々気がかりだ。
 だが、それ以上考えている暇はなかった。ティアに連れられてやってきたのは、拠点から一番近い村を抜けた先にある、森の奥深くだ。そこには石版があり、ギルドの許可証を掲げることで入ることのできるダンジョンがある。ティアはさも当たり前のように許可証を取り出すと、ダンジョンの入口を開き、ためらうことなく入っていく。 
 あまりに自然な動作すぎて忘れていた。ここは難易度最高ランクで、絶対に近づくなと言われている最悪の場所だと。

「第1の契約者レティ、我に水の力を与え給え、ウォーターボール!!」

 視界を覆い隠すほどに迫ってくる炎に、全力の水魔法をぶつける。有利属性のはずなのに、互角…どころか劣勢、かき消すだけで精一杯だ。
 それもそのはず。その魔法を放ったのはS級モンスター、本来ならば冒険者がパーティを組んで選ぶはずのモンスター、火竜だ。

「ギャオオオ」

 叫び声とともに、次の炎が襲いかかってくる。
 強さだけでなく、地形も最悪だ。本来は空を飛び回っていて、炎が放たれたとしても逃げ場がある。だがここは洞窟の中。退路はなく、下手に避けようとすればティアに攻撃があたってしまう。
 ウォーターボールで再び炎魔法でかき消す。僅かに残った火の粉が地面に残り、狭い空間を熱していて、サウナのように暑くなっていく。

「ヤマト、頑張って!」

 暑さと危機的で状況で、俺は汗をかきまくっているのだが、ティアはいつもと変わらない。
 落ち着いていると言えば聞こえはいいが、のんきすぎるようにも思えた。
 
「ガァアアア」

 火竜は叫び声を上げると、炎の弾を放ってくる。連続で放ち続けて疲れてきたのだろうか。さっきよりも小さくなっていて、十分防げる大きさだ

「第4の契約者ラガナ、襲い来る炎を振り払う力を、アースシールド!」

 地面が持ち上がり、俺の目の前に土の壁を作り出す。ぶつかった炎を完全に打ち消すまでは行かなかったが、壁が砕けると同時に炎も弾けた。その瞬間、俺と火竜の間を阻むものは何もなくなった。

「第1の契約者レティ、凍てつく水で祓い給え、アイスランス!」

 細長い水を手の中で作り上げ一気に冷却して氷にする。それを風魔法で一気に削り、出来上がったのは氷の槍だ。
高濃度の魔法武器は強力なモンスタをも一撃で倒す。俺が手にしているのは、ヴァルキリーの加護がついた最強の槍だ。
 頭が武器を槍として認識した瞬間、加護が発動する。薙ぎ払い。突き刺し。様々な使い方が頭をよぎり、俺は投げることを選んだ。

「食らいやがれ!」

 火竜の腹に向かって飛んでいく槍に、氷魔法で強化を加える。そして腹に到達することには、火竜の胴体ぐらいの大きさになっていた。

「グアアアアア」

  絶叫がダンジョンに響き渡り、火竜は地面に倒れた。瀕死だ。腹には巨大な穴が空いている。それでもまだ抵抗しようと、手足を震わせる。

「アークニードル!」

 地面から突き出た複数の棘が、巨大な体を串刺しにし、火竜は動かなくなった。

「はあ、はあ…やったよな」
「お疲れ様」

 膝をついていると、優しい声と一緒に手が差し出された。
 その手の握って立ち上がるとやさしく微笑むティアの姿があった。

「おいおい、毎回こんなやつを倒してるのかよ…」
「ええ、去年はユレイルだったわ」
「まじか、あいつはあんなに強いのか…」

 ユレイルの実力はイマイチ分からない。初めて出会った時に、素性を確かめようとして可視化の魔法を使ったが効果がなかった。

「でも、戦ったのは幼竜だったけれどね」
「…は?一応聞くけど、俺が今戦ったのは?」
「成竜ね。ここまで育つまで放置するなんてギルドも怠慢ねえ…」

 さらっと言ってくれてるけど全然違うもんじゃねえか。成竜はSランクだが、幼竜はC~Fランク、経験のある冒険者なら余裕を持って倒せる相手だ。
 そんなことを考えていると、複数の足音が近づいてきて、俺たちは一先ず岩陰に隠れたのだった。
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