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第3章~港町での物語~
旅の前にヴァルキリーと話しましょう その3
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騒がしい二人と別れて、今度は一転して静かな場所に向かう。イレギュラーの地下にある、地下牢だ。
地下へと続く階段の前に立つと、予想外の人物がいた。
「主ではないか」
見たことのない黒い石を腕に抱えながらそう言ったのはメルロだった。まだ日が傾くには早い時間で、普段なら外を飛び回っているはずだ。
「こんなところで何をしているんだ?」
「見たことのない石を拾ったからな、鑑定してもらおうと思ってな」
「鑑定って、まさかラガナに?」
「そうだ」
大丈夫なのか?ラガナはひと目から逃げて、わざわざ人の来ない地下牢に閉じこもっているのだ。
「俺が代わりに持っていこうか?」
「なぜだ?私が行っては行けない理由でもあるのか?」
メルロは首を傾げた。
「そりゃあ、いきなり行ったら逃げたりしないか?」
「ほう、そんなことがあるのか。過去にも何度か訪れたが逃げられはしなかったな?」
「まじかよ」
2つの意味で驚いた。まずひとつ、ラガナは一人で閉じこもっていると思っていたが、わざわざ会いに行く相手がいることだ。
そしてもう一つ、俺は他のラガナが他の誰かと話すところを見たことがない。だが、メルロは話したことがあるようだ。
「着いていってもいいか?」
「無論だ。断る理由などない」
メルロに続いて階段を降りていくと、薄暗い空間にたどり着いた。いくつかある牢屋の前通り、一番奥へと向かっていく。その右側が、ラガナの定位置なのだが、果たしてそこにいてくれるのだろうか?
「ラガナ、ちょっといいか。珍しいものを見つけたから持ってきたぞ」
「イエス、入ってください」
おー、俺のときと変わらない反応…どころか、声音が柔らかい気がした。
「俺も入っていいかー」
「イ、イエス、いたのですね」
どこか慌てたような声がした。もしかして俺は嫌われているのか?
「んー、邪魔になりそうだしこのまま戻ろうかな」
「ノー、来てください」
どうやら嫌われているわけではなさそうで一安心だ。
牢屋(ラガナの部屋)の中に入ると、ラガナはいつものように体育座りをして、下を向いていた。その後ろからひょっこりと、小さな影が顔を出した。
「…ヤマト?」
「セイラか?どうしてここに?」
ある意味では、ヴァルキリーの中で一番ここにいるのが想像できない相手が出てきた。セイラの通称は眠り姫、普段から部屋から出ることはごとんどなく、仮に外に出るのも、寝る場所…主に俺の膝を求めてやってくるぐらいだ。
「…寝に来た」
「よく来るのか?」
「…うん、よく寝れる」
どうやら俺の知らないうちに、この地下牢も寝る場所の一つに認定されていたらしい。
「私もそれはわかる気がするな。ここに来ると雑念が祓われる感覚がある」
ラガナには精神魔法への耐性の特性がある。多少なりとも、この地下牢にもその力が発動しているのだろうか?
「ラガナは人気者なんだな」
「ノー。ですが、前よりも話せるようになりました」
そいつは大きな成長だ。これからもその調子で頑張ってほしい。
「セイラ、メルロ、これからもラガナの事をよろしく頼むぞ」
「何だが分からんが主がそういうのならば」
「…任された」
快い返事に、素直に安心した。と同時に、ここに来た目的も思い出した。
「聞いてほしいことがあるんだ」
前置きをすると、ずっと俺の方を向いていたセイラとメルロだけでなく、下を向いていたラガナも顔を上げた。
「イレギュラーの仕事でしばらく出かけることになった。なにもないと思うけど、留守を頼むぞ」
正直、ラガナとセイラがどうなるか心配していたが、一緒にいられる相手がいるのならば心配はないだろう。
「そうか、寂しくなるが頑張ってくれ」
「イエス、無理はなさらいように」
「…頑張って」
その後は静かに三人の話に耳を傾けた。どうやらメルロの持ってきた石は、太陽で表面が焦げたものだったらしく、それ以外は普通の、何の変哲もない石だった。
地下へと続く階段の前に立つと、予想外の人物がいた。
「主ではないか」
見たことのない黒い石を腕に抱えながらそう言ったのはメルロだった。まだ日が傾くには早い時間で、普段なら外を飛び回っているはずだ。
「こんなところで何をしているんだ?」
「見たことのない石を拾ったからな、鑑定してもらおうと思ってな」
「鑑定って、まさかラガナに?」
「そうだ」
大丈夫なのか?ラガナはひと目から逃げて、わざわざ人の来ない地下牢に閉じこもっているのだ。
「俺が代わりに持っていこうか?」
「なぜだ?私が行っては行けない理由でもあるのか?」
メルロは首を傾げた。
「そりゃあ、いきなり行ったら逃げたりしないか?」
「ほう、そんなことがあるのか。過去にも何度か訪れたが逃げられはしなかったな?」
「まじかよ」
2つの意味で驚いた。まずひとつ、ラガナは一人で閉じこもっていると思っていたが、わざわざ会いに行く相手がいることだ。
そしてもう一つ、俺は他のラガナが他の誰かと話すところを見たことがない。だが、メルロは話したことがあるようだ。
「着いていってもいいか?」
「無論だ。断る理由などない」
メルロに続いて階段を降りていくと、薄暗い空間にたどり着いた。いくつかある牢屋の前通り、一番奥へと向かっていく。その右側が、ラガナの定位置なのだが、果たしてそこにいてくれるのだろうか?
「ラガナ、ちょっといいか。珍しいものを見つけたから持ってきたぞ」
「イエス、入ってください」
おー、俺のときと変わらない反応…どころか、声音が柔らかい気がした。
「俺も入っていいかー」
「イ、イエス、いたのですね」
どこか慌てたような声がした。もしかして俺は嫌われているのか?
「んー、邪魔になりそうだしこのまま戻ろうかな」
「ノー、来てください」
どうやら嫌われているわけではなさそうで一安心だ。
牢屋(ラガナの部屋)の中に入ると、ラガナはいつものように体育座りをして、下を向いていた。その後ろからひょっこりと、小さな影が顔を出した。
「…ヤマト?」
「セイラか?どうしてここに?」
ある意味では、ヴァルキリーの中で一番ここにいるのが想像できない相手が出てきた。セイラの通称は眠り姫、普段から部屋から出ることはごとんどなく、仮に外に出るのも、寝る場所…主に俺の膝を求めてやってくるぐらいだ。
「…寝に来た」
「よく来るのか?」
「…うん、よく寝れる」
どうやら俺の知らないうちに、この地下牢も寝る場所の一つに認定されていたらしい。
「私もそれはわかる気がするな。ここに来ると雑念が祓われる感覚がある」
ラガナには精神魔法への耐性の特性がある。多少なりとも、この地下牢にもその力が発動しているのだろうか?
「ラガナは人気者なんだな」
「ノー。ですが、前よりも話せるようになりました」
そいつは大きな成長だ。これからもその調子で頑張ってほしい。
「セイラ、メルロ、これからもラガナの事をよろしく頼むぞ」
「何だが分からんが主がそういうのならば」
「…任された」
快い返事に、素直に安心した。と同時に、ここに来た目的も思い出した。
「聞いてほしいことがあるんだ」
前置きをすると、ずっと俺の方を向いていたセイラとメルロだけでなく、下を向いていたラガナも顔を上げた。
「イレギュラーの仕事でしばらく出かけることになった。なにもないと思うけど、留守を頼むぞ」
正直、ラガナとセイラがどうなるか心配していたが、一緒にいられる相手がいるのならば心配はないだろう。
「そうか、寂しくなるが頑張ってくれ」
「イエス、無理はなさらいように」
「…頑張って」
その後は静かに三人の話に耳を傾けた。どうやらメルロの持ってきた石は、太陽で表面が焦げたものだったらしく、それ以外は普通の、何の変哲もない石だった。
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