40 / 56
第3章~港町での物語~
旅の前にヴァルキリーと話しましょう その2
しおりを挟む
ユミネを執務室から部屋へと送り届けた俺は、ぶらぶらと廊下を歩く。このまま誰にも会わないようだったらそのまま地下牢に行こうと思ったが、反対から歩いてくる騒がしい二人組がいた。
「ちーっす、ヤマトっち、元気ぃ?」
金色の髪を揺らしながらぶんぶんと手を振るのは、ヴァルキリー1、いやイレギュラー1騒がしい存在だ。
この世界にギャルはいないのだが、しゃべり方はギャルっぽく、メイクもよく似ている。
「ようカリン。俺はぼちぼちから。カリンに比べたら全然元気じゃないかな」
「そりゃあまあね、ずっとこんなテンションでいたら疲れるわよ普通」
呆れたように肩をすぼめるのは、アンナだ。真っ赤な髪は遠目でもよく目立ち、ツインテールはゆらゆらと揺れる。カリンがいろいろと育っているのもあるが、二人並ぶと小さな身長が
より際立った。
「えー、そう言いながらいつも一緒に行ってくれるじゃん?」
「放っておくと何をしでかすか分からないからね。仕方なくよ、仕方なく」
嫌々そうしてますよとばかりに、手をひらひらと振っているが、アンナ自身がその状況を楽しんでいるようにも見えた。
「えーアンナっち釣れないなー」
カリンも分かっているようで、嬉しそうに抱きついている。本当に仲がいいな、この二人は。
「それでヤマト、アンタはなにしてるのよ」
「あーそうそう、二人に話があるんだ」
二人は顔を見合わせると静かになり、じっと俺の言葉を待つ。さっきまでの騒がしさとのギャップがすさまじい。
「しばらく帰って来ないからよろしく」
「は?なんでし!!」
カリンが物凄い剣幕で肩を掴み、前後に激しく揺さぶってくる。アンナに助けを求めようにも、カリン越しに見える顔は不満げだ。
「お、落ち着けって。言い方が悪かった。ちゃんと話すから!」
揺さぶられて乱れた息を整えていると、カリンも同じように深呼吸をしていた。そのたびに、大きな胸が揺れて、視線をもっていかれそうになるのを必死に抑える。
「イレギュラーの仕事で出かけることになったんだ」
「な、なんだ…びっくりさせないでほしいし」
「なんだと思ったんだよ」
「ウチに愛想が尽きたから実家に帰ります、的な?」
平日の昼ドラにありそうな展開だ。いや、俺の記憶は結構前だから、今だとトレンドが違ったりするのか?
なんにせよ、テレビの見すぎだ。この世界にテレビなんてないけどな。
「そうならそうって最初からいいなさいよ」
アンナはぷいっとそっぽを向いた。こっちはこっちでわかりやすい。
「悪い悪い。だから不安がって、ここを燃やさないでくれよ」
「そんなことしないわよ」
イレギュラーの支社を燃やした時のことを思い出したのか、その横顔はほんのりと紅い。あの時は泣きながら謝っていたっけ。
「寂しくないよアンナっち!ウチがいるし!」
「いっそカリンも一緒に行って来たら?そしたら静かになってせいせいするわ」
「え、ウチも行っていいし?」
冗談を真に受け、キリンは目をキラキラさせて迫ってくる。
「悪いけど今回は無理かな。必要なときはお願いするよ」
「えー、意地悪ぅ」
もちろん本気で怒っているわけではなく、冗談めかして言ってくる。
「ところでヤマト、仕事ってことは誰かと一緒なの?」
「ああ、レティと…」
「「はあ!?」」
今度は二人同時に迫ってきた。やたら焦っていて、それでいて泣き出しそうだ。
「な、なんだよ一体…」
「そ、それってデートっ!?」
「いや違うから」
二人の反応を見る限り、女の子と二人旅で喜んでいたなんて、口が裂けても言えない。もし言おうものなら、俺がこの場でぼこぼこにされるか、ティアがこのあとフルボッコにされるか、イレギュラーが燃えるか…どれにせよ、悪いことしか起こらない。
「仕事だ仕事。俺はティアの護衛。護衛が護衛対象に手を出すわけがないだろ?それとも、カリンもアンナも俺のことを信じられないのか?」
「「そ、それは…」」
二人同時に言葉を区切り、同時に続きを言う。
「信じてるし…」「信じてるわよ…」
「ありがとう。出来るだけ早く帰ってくるようにするから、な?」
頭に手を乗せると、二人とも触れしそうにはにかんだ。
これなら、戻ってきたら焼け野原になっていたなんてこともないだろう。
「ちーっす、ヤマトっち、元気ぃ?」
金色の髪を揺らしながらぶんぶんと手を振るのは、ヴァルキリー1、いやイレギュラー1騒がしい存在だ。
この世界にギャルはいないのだが、しゃべり方はギャルっぽく、メイクもよく似ている。
「ようカリン。俺はぼちぼちから。カリンに比べたら全然元気じゃないかな」
「そりゃあまあね、ずっとこんなテンションでいたら疲れるわよ普通」
呆れたように肩をすぼめるのは、アンナだ。真っ赤な髪は遠目でもよく目立ち、ツインテールはゆらゆらと揺れる。カリンがいろいろと育っているのもあるが、二人並ぶと小さな身長が
より際立った。
「えー、そう言いながらいつも一緒に行ってくれるじゃん?」
「放っておくと何をしでかすか分からないからね。仕方なくよ、仕方なく」
嫌々そうしてますよとばかりに、手をひらひらと振っているが、アンナ自身がその状況を楽しんでいるようにも見えた。
「えーアンナっち釣れないなー」
カリンも分かっているようで、嬉しそうに抱きついている。本当に仲がいいな、この二人は。
「それでヤマト、アンタはなにしてるのよ」
「あーそうそう、二人に話があるんだ」
二人は顔を見合わせると静かになり、じっと俺の言葉を待つ。さっきまでの騒がしさとのギャップがすさまじい。
「しばらく帰って来ないからよろしく」
「は?なんでし!!」
カリンが物凄い剣幕で肩を掴み、前後に激しく揺さぶってくる。アンナに助けを求めようにも、カリン越しに見える顔は不満げだ。
「お、落ち着けって。言い方が悪かった。ちゃんと話すから!」
揺さぶられて乱れた息を整えていると、カリンも同じように深呼吸をしていた。そのたびに、大きな胸が揺れて、視線をもっていかれそうになるのを必死に抑える。
「イレギュラーの仕事で出かけることになったんだ」
「な、なんだ…びっくりさせないでほしいし」
「なんだと思ったんだよ」
「ウチに愛想が尽きたから実家に帰ります、的な?」
平日の昼ドラにありそうな展開だ。いや、俺の記憶は結構前だから、今だとトレンドが違ったりするのか?
なんにせよ、テレビの見すぎだ。この世界にテレビなんてないけどな。
「そうならそうって最初からいいなさいよ」
アンナはぷいっとそっぽを向いた。こっちはこっちでわかりやすい。
「悪い悪い。だから不安がって、ここを燃やさないでくれよ」
「そんなことしないわよ」
イレギュラーの支社を燃やした時のことを思い出したのか、その横顔はほんのりと紅い。あの時は泣きながら謝っていたっけ。
「寂しくないよアンナっち!ウチがいるし!」
「いっそカリンも一緒に行って来たら?そしたら静かになってせいせいするわ」
「え、ウチも行っていいし?」
冗談を真に受け、キリンは目をキラキラさせて迫ってくる。
「悪いけど今回は無理かな。必要なときはお願いするよ」
「えー、意地悪ぅ」
もちろん本気で怒っているわけではなく、冗談めかして言ってくる。
「ところでヤマト、仕事ってことは誰かと一緒なの?」
「ああ、レティと…」
「「はあ!?」」
今度は二人同時に迫ってきた。やたら焦っていて、それでいて泣き出しそうだ。
「な、なんだよ一体…」
「そ、それってデートっ!?」
「いや違うから」
二人の反応を見る限り、女の子と二人旅で喜んでいたなんて、口が裂けても言えない。もし言おうものなら、俺がこの場でぼこぼこにされるか、ティアがこのあとフルボッコにされるか、イレギュラーが燃えるか…どれにせよ、悪いことしか起こらない。
「仕事だ仕事。俺はティアの護衛。護衛が護衛対象に手を出すわけがないだろ?それとも、カリンもアンナも俺のことを信じられないのか?」
「「そ、それは…」」
二人同時に言葉を区切り、同時に続きを言う。
「信じてるし…」「信じてるわよ…」
「ありがとう。出来るだけ早く帰ってくるようにするから、な?」
頭に手を乗せると、二人とも触れしそうにはにかんだ。
これなら、戻ってきたら焼け野原になっていたなんてこともないだろう。
1
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】
早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

魔法省魔道具研究員クロエ
大森蜜柑
ファンタジー
8歳のクロエは魔物討伐で利き腕を無くした父のために、独学で「自分の意思で動かせる義手」製作に挑む。
その功績から、平民ながら貴族の通う魔法学園に入学し、卒業後は魔法省の魔道具研究所へ。
エリート街道を進むクロエにその邪魔をする人物の登場。
人生を変える大事故の後、クロエは奇跡の生還をとげる。
大好きな人のためにした事は、全て自分の幸せとして返ってくる。健気に頑張るクロエの恋と奇跡の物語りです。
本編終了ですが、おまけ話を気まぐれに追加します。
小説家になろうにも掲載してます。

大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!
倉紙たかみ
ファンタジー
突然変異クラスのS級大地魔法使いとして生を受けた伯爵子息リーク。
彼の家では、十六歳になると他家へと奉公(修行)する決まりがあった。
奉公先のシルバリオル家の領主は、最近代替わりしたテスラという女性なのだが、彼女はドラゴンを素手で屠るほど強い上に、凄まじいカリスマを持ち合わせていた。
リークの才能を見抜いたテスラ。戦闘面でも内政面でも無理難題を押しつけてくるのでそれらを次々にこなしてみせるリーク。
テスラの町は、瞬く間に繁栄を遂げる。だが、それに嫉妬する近隣諸侯の貴族たちが彼女の躍進を妨害をするのであった。
果たして、S級大地魔法使いのリークは彼女を守ることができるのか? そもそも、守る必要があるのか?
カリスマ女領主と一緒に町を反映させる物語。
バトルあり内政あり。女の子たちと一緒に領主道を突き進む!
――――――――――――――――――――――――――
作品が面白かったらブックマークや感想、レビューをいただけると嬉しいです。
たかみが小躍りして喜びます。感想などは、お気軽にどうぞ。一言でもめっちゃ嬉しいです。
楽しい時間を過ごしていただけたら幸いです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる