契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

文字の大きさ
上 下
27 / 56
第2章~ヴァルキリーを連れ出せ~

影になっても彼らは邪魔をしてきます

しおりを挟む
 レティを救うために、必要な力をイメージする。光の剣。守りたい相手を闇から救い出せる温かな力だ。

「第2の契約者セイラ、光の力を我に与えよ」
「……与える」

 俺の手の中には光が溢れる。剣をイメージしたはずなのに、現れたのは刀だ。この際、形なんてなんでもいい。拳が武器だと言われれば喜んでぶん回すし、歯ブラシが武器だと言われれば相手の口にねじ込んで戦意を喪失させてやる。

 レティに向かって一歩を踏む出す。まず邪魔をするのは今もイヤらしく笑っているホリだ。俺の嫌いな、相手を小ばかにしたようなニヤニヤは影になっても変わらないようだ。

「邪魔をするな、反逆者!」

 目が合うと、横柄な態度で見下ろしてくる。いつもは媚びた態度を取ってくるが、本心では俺を馬鹿にしていたのだろう。大声で命令してくる。

「邪魔なのはそっちだ」

 ホリが何百人集まろうと、俺には傷一つつけられない。こいつ相手に、わざわざ光の刀を振るうまでもない。言葉の刃が相応だ。

「消えろ!」

 その一言に、レティに対する想いをのせる。たったそれだけで、ホリの影は飛んでいった。プライドだけあって実力のない奴なんてこんなもんだ。

 ホリが消えても、レティを囲むハヤテ達は意に介さない。彼らにとってホリは使い捨てなのだろう。俺と同じように。
 近づいていっても、誰一人として振り向かない。俺なんて気にするに値しないとでも思っているのだろう。
 それならそれで構わない。俺が動きやすいだけだ。

「おいマヤ」

 やはり返事がない。ゆっくりと刀を構えると、ようやく反応があった。だけどもう遅い。

「本当に何も学ばないんだなお前は」

 一瞬見えた怯えた顔は、すぐに散っていった。
 その少し奥で叫んでいたのはタケヤだった。

「怖いのは最初だけだ。ほらこっちに来るんだ」

 レティ肩にに向かって何度も手を伸ばす。影が実際に触れることはないが、手が近づくたびにレティが怯えているのが分かった。

「うるせえ」

 後ろから背中を殴ると穴が開き、タケヤも散っていった。
 あとはハヤテだ。こいつもどうせすぐに消える。刀を構えると、今度は反応があった。何もなかったはずのその手には剣が握らられ、ゆっくり振った刀を押し返してくる。
 だが所詮、相手は影だ。

「光の中に消えやがれ!」

 刀の放つ光が強くなり、剣からまるごとハヤテを包み込み、影はどこかへ消えていた。
 これでレティを脅かす恐怖は消えた。それでも彼女は、怯え、耳を塞いだままだ。目線を合わせるようと足を曲げると、びくっと体が震えた。
 ちょっとショックだ。受け入れてもらえていると思っていた相手に拒否されるのだ。だけど、彼女の俺以上にショックを受けているのだろう。何も気にすることはない。いつものように振る舞えばいい。
 二人きりの時、レティはどうしている?えーっと……くっついてくるな。その状況を再現すればいい。どのあたりだ?えーっと…左腕だったか?右に座ると、腕をからめていく。なにこれ、自分でやるとかなり恥ずかしいんだけど。くそ、レティの顔をまともに見られない。これじゃあ助けられたかなんてわからないぞ。

 ふっと息を吐くと、腕の中でビクッと動いた。恐る恐る様子を伺うと、レティはじっと俺を見つめていた。嫌がっている素振りはなくて一安心だ。
 大和撫子なんて言葉が似合いそうな黒くて長い髪。赤い口紅で彩られた真っ赤な唇。西洋人が日本人形の服を着たらこうなるのだろうという姿を体現している。

「貴方は誰?」
「俺は……」

 なんて答えるべきか。彼女は俺のことを、『シグルズ』と呼ぶ。昔の恋人の名前らしいのだが、今では恋人の代名詞として使っているようだ。
 彼女の気を引こうとして、シグルズと名乗って命を落とした冒険者もいたと聞く。俺がその名を名乗るなどおこがましいか。

「ヤマトだ」
「そう。貴方は私を愛しているかしら?」
 
 好きか、とかだったら即イエスと答えたのだが、愛しているは重すぎた。だけど言わないといけないよな?
 そうしないと、レティは戻ってこない。

「さあ、答えて。私だけを愛しているかしら」
「それは……」

 目を閉じ、すっと深呼吸をする。そして目を開けると、俺の視界を覆っていたのはセイラだった。

「……待って」

 いつもと変わらない目が俺を見つめていて、何を考えているのかわからない。
 だけど、面倒くさがりなセイラがここまでしたのだ。よほどの理由があるのだろう。

「レティを正気に戻す方法があるのか?」
「……戻ってる」
「は?」

 戻ってる?どういうことだ。
 セイラは俺から離れると、レティを見つめる。
 潤んだレティの瞳は、セイラから逃げるかのように閉じられ、やがて、唇をわずかに開いて笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

相藤洋
ファンタジー
異世界のヨーロッパ風国家「グランゼリア王国」を舞台にした合理主義冒険ファンタジー。 主人公レオン・クラウゼンは、冷静な判断と効率重視の性格を持つ冒険者。彼の能力「価値転換(バリュー・シフト)」は物や素材の価値を再構築するもので、戦闘向きではないが経済的な可能性を秘めている。パーティーから追放されたレオンは、自身の能力を活かし「FIRE(経済的自立と早期退職)」を目指す人生設計を実行に移す。 彼が一人で挑むのは、廃鉱での素材収集、不動産投資、商業ネットワークの構築といった経済活動。次々と成功を収める一方で、魔獣の襲撃や元パーティーとの因縁など、様々な試練が彼を待ち受けることになる。 「戦わずして生き抜く」レオンが描く、冒険者とは一線を画す合理主義の物語。追放を前向きに捉え、自らの手で自由を掴む彼の成長と活躍をお楽しみに! この作品は「カクヨム」様にも掲載しています。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...