契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

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第2章~ヴァルキリーを連れ出せ~

警備が厳重になっていました

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 目的地は第4支社、巨大な崖に掘られた横穴を進んだ中にある。入り口は一つのみで、中には松明が至るところにあり、道を明るく照らしてくれる。進むには問題はない。

 問題があるとすれば警備がいつもより厳重だということだ。普段は2人しかいないのに、5人で固めていて穴の入り口に隙間がない。もしや、俺がヴァルキリーを連れ帰っているのが広まって、警戒されているのだろうか?
 何か上手いこと体が通りそうなスペースがあればいいんだけどな。

 とか思っていると、丁度いいところに、クエストに出ていた部隊が戻ってきて、何やら話し始めた。警備が動き、人一人ぐらいなら通れるスペースが出来た。
 
「第5の契約者メルロス、我に飛翔の力を与え給え。フライ!」

 両足に白い羽根を生やすと、急加速。人と人の間を翔ぶように駆け抜けると、通路に侵入することが出来た。
 支社の建物が近づくにつれて、警備の数は増え、動きが慌ただしくなっている。やはり、警戒されているようだ。

「これはヤマト様ではありませんか?」
「え?」

 振り向くとそこには、第4支社のリーダー、グリンが立っていた。その巨漢はいるだけで圧迫感があり、真っ赤な鎧は存在感をより際立たせている。
 そんなことはまあいい。気になるのは、俺に対する敵意を感じないことだ。

「騒がしいけど何かあったのか?」
「実は、ヴァルキリー様を狙った不届き者が侵入してくる可能性があると情報を受け、厳重警戒中なのです」

 多分俺のことなのだが、そこまでは伝わっていないようだ。

「そいつはまた大変なことだな。疲れている姿も見受けられたがいつからこの状態なんだ?」
「3日ほど前からでしょうか。疲れが取れにくくなったことと、武器が思うように使えなくなった不安で、余計な疲労がたまっているのはありますね」

 その原因が俺にあるとは微塵も思ってもいないようだ。

「なんとしてもヴァルキリー様をお守りしなくては!」
「意気込むのはいいけど、そう気を張ってばかりだと身がもたないぞ」

 話していて気がついたが、いつもより気合が入っていなくてまるで空元気。無意識なのかもしれないが、相当疲れが蓄積しているようだ。

「全然寝てないんじゃないか?」
「いえ、きちんと4時間は…」

 うん、駄目だな。快眠の加護があった時と変わっていない。

「数時間は俺が見とくから、その間ぐらい休んだらどうだ」

 最終的にはヴァルキリーを連れ出すんですけどね。
 そんな俺の目的などいざ知らず、グリンは素直に喜んだ。

「それは是非お願いしたいところです。下の者には言えませんが、正直申し上げると、まともに戦闘を出来るような体ではないのです」

 立場上、それは仕方のないことだろう。俺は上とか下とか気にしたことがないが、リーダーともなればそうはいかない。いっそのこと、第9支社のホリみたいに、無理やりこき使ったほうが心理的には楽なのかもしれない。

「任された。それじゃあ早速ヴァルキリーに会ってくるから」
「はい、お願いします」

 彼との会話で一つ確信した。俺はまだ警戒されていない。途中で何人かとすれ違ったが、やはり文句を言われたりはしなかった。
 そもそも、話にあった侵入者が俺ではないとか…まあ、ありえなくはない。加護目的で来るやつがいても不思議ではないからな。だったら俺が守ってやらないと。
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