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昇格~敵の実力~
クラスメイトの実力
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実技の授業は毎日あるようで、今日も例外ではなかった。
「じゃあ適当にはじめっぞー。ああ、黒沢。お前は見学しててもいいぞ。参加したけりゃしてもいいけど」
そんな適当な…とも思ったが、お言葉に甘えて見学させてもらうことにする。全員の実力を知れるいい機会だ。
魔術の種類は様々だ。見た目に分かりやすいのは、火や水だろう。
お、ちょうどいいことに始まりそうだ。
「徹矢ー準備はいいかー」
チームツンツン頭の一人が手を上げている。ちなみにこいつはツンツン頭の知り合いなだけで、ツンツン頭をしてはいない。
「いつでも来い!」
「行くぞ。水よ、渦となりて敵を討て、ウオーターストリーム!」
構えた手からは水の渦が生まれ、徹矢に襲いかかる。
徹矢はそれをじっと見つめると、地紋を唱えた。
「魔術を絶て、断罪!」
渦の根元に魔法陣が現れ、発動者の魔術供給を阻害する。
コントロールが失われた渦は実態を失い、空気中に散っていった。
「さすが徹矢、すげえな!」
「いやいや。危うく食らうところだったぜ」
徹矢本人はかなり控えめに笑っているが、やはり厄介だ。
俺に使われたら、体がまるごと消えかねない。
それと渉も危険だ。
石の前で数秒の間タメを作ると、拳を石にぶつけて粉々にしている。想像していたよりもスキが少ない。
他に厄介そうなやつは…。
「ふーん、真面目なんだねえ」
女の声がして、ぴょんっと跳ねるようにして隣に誰かが座った。
黄色いポニーテールが揺れ、赤と青の目が俺を向いた。
見たことあるが、名前を思い出せない。
「私のこと覚えてるぅ?」
「悪い、どこかで会ったことがあったか?」
「ぶー」
不満げにほっぺたを膨らませると、人懐っこい笑みを浮かべた。
「そっか、そうだよねえ…一度会っただけの相手のことなんて覚えてないよねえ…」
「おーいエリカー、練習の相手をしてよー」
見知らぬ女生徒がこっちに向かって叫んでくる。
俺はエリカではない。とすると、隣の女がエリカか。
「名前を聞いて思い出した。怪我しているところを運んでもらって助かった」
「いいよいいよー、困っている人がいたら助けろって言われたから。そ・れ・よ・り」
色違いだった目は両方が紅くなり、表情が冷たくなっていく。
見られないようにか、顔を耳元に寄せてくると囁いた。
「次のターゲットは決まった?」
「なに?」
思わず振り向くと、そこに彼女はいなかった。
手を振りながら、自分を呼んだ相手のところに走っていた。
「授業中に女生徒の尻を追いかけるとは、ずいぶんといいご身分だな」
今度は頭上から、威圧するような重い声が降ってきた。
顔を上げると、いかにも小うるさそうな男が、眼鏡に手を当てて睨みつけてきている。
目立って体格が良いわけではないが、腕だけは異様に筋肉がついていて、制服が膨らんでいる。
「今は実習中だろう。なにをサボっている」
なんだよこいつ…全く気配を感じなかったぞ。エリカに気を取られすぎたか?
「堤じゃないか。戻っていたのか」
担任は謎の男に気が付いたようで、手を振りながら歩いてきた。
「お久しぶりです笹ヶ瀬教官」
「その呼び方はやめてくれ。ここでは先生だ」
「失礼しました笹ヶ瀬先生。先ほど戻りました。今はサボっている生徒がいたので声をかけていたところです」
ギロっと眼鏡越しに睨みつけてくる。
それになんだこの圧力は。目だけでなく、体全体で睨みつけられているみたいだ。
「黒沢ならサボりじゃないぞ。病み上がりでな、ついでにルームメイトも死んだから、今日は特別だ」
「ほう…なるほど…」
じっと、値踏みでもするかのような視線が突き刺さる。
「例え見学でも出来ることはあるでしょう。それに彼からは闘志を感じません。本当に魔術師を続けられるのですか?」
「不登校にならなかったんだ。やる気はあるんじゃないか?」
投げやりにも聞こえる返事に、俺への疑念は深まったようだ。
「君、今から俺と戦いなさい」
「は?なんで」
「断るなら、今すぐこの学園から立ち去れ!」
そんな勝手なことを…とかって言える雰囲気じゃないな。
さすがに担任も止めてくれるんじゃないか?
目で助けを求めると、面倒臭そうに言った。
「うーん…勝てばって条件じゃないし、別にいいんじゃないか」
まじかよ…これで断ることは出来なくなった。
ったく、目立つことはしたくないっていうのに。
それぞれ特訓をしていた連中も、騒ぎを聞きつけてぞろぞろ集まってきた。
「そういえば名乗っていなかった。俺は堤大志(たいし)。好きな奴はやる気のある奴。嫌いな奴はやる気のない奴だ」
まるで後者は俺に対してとばかりの言い草だ。
そんなに嫌われるようなことをした覚えはないんだがな。
「はあ…わかったよ。やればいいんだろやれば…」
「先輩に対して口の利き方がなってないな」
「一方的に敵対視されて、敬えってほうが無理だと思うぞ」
「ほう…口だけは一丁前と言うことか」
相変わらず馬鹿にした態度を取り続けている。
ムカついたから殺してやりたい…が、さすがに今やったら目立ちすぎる。
それに、相手の力量も分からない。
ここは弱点を探って、後日確実に殺すか。
「クエストスタートだ」
メインクエスト:眼鏡と戦う
サブクエスト:眼鏡の能力を探る
「じゃあ適当にはじめっぞー。ああ、黒沢。お前は見学しててもいいぞ。参加したけりゃしてもいいけど」
そんな適当な…とも思ったが、お言葉に甘えて見学させてもらうことにする。全員の実力を知れるいい機会だ。
魔術の種類は様々だ。見た目に分かりやすいのは、火や水だろう。
お、ちょうどいいことに始まりそうだ。
「徹矢ー準備はいいかー」
チームツンツン頭の一人が手を上げている。ちなみにこいつはツンツン頭の知り合いなだけで、ツンツン頭をしてはいない。
「いつでも来い!」
「行くぞ。水よ、渦となりて敵を討て、ウオーターストリーム!」
構えた手からは水の渦が生まれ、徹矢に襲いかかる。
徹矢はそれをじっと見つめると、地紋を唱えた。
「魔術を絶て、断罪!」
渦の根元に魔法陣が現れ、発動者の魔術供給を阻害する。
コントロールが失われた渦は実態を失い、空気中に散っていった。
「さすが徹矢、すげえな!」
「いやいや。危うく食らうところだったぜ」
徹矢本人はかなり控えめに笑っているが、やはり厄介だ。
俺に使われたら、体がまるごと消えかねない。
それと渉も危険だ。
石の前で数秒の間タメを作ると、拳を石にぶつけて粉々にしている。想像していたよりもスキが少ない。
他に厄介そうなやつは…。
「ふーん、真面目なんだねえ」
女の声がして、ぴょんっと跳ねるようにして隣に誰かが座った。
黄色いポニーテールが揺れ、赤と青の目が俺を向いた。
見たことあるが、名前を思い出せない。
「私のこと覚えてるぅ?」
「悪い、どこかで会ったことがあったか?」
「ぶー」
不満げにほっぺたを膨らませると、人懐っこい笑みを浮かべた。
「そっか、そうだよねえ…一度会っただけの相手のことなんて覚えてないよねえ…」
「おーいエリカー、練習の相手をしてよー」
見知らぬ女生徒がこっちに向かって叫んでくる。
俺はエリカではない。とすると、隣の女がエリカか。
「名前を聞いて思い出した。怪我しているところを運んでもらって助かった」
「いいよいいよー、困っている人がいたら助けろって言われたから。そ・れ・よ・り」
色違いだった目は両方が紅くなり、表情が冷たくなっていく。
見られないようにか、顔を耳元に寄せてくると囁いた。
「次のターゲットは決まった?」
「なに?」
思わず振り向くと、そこに彼女はいなかった。
手を振りながら、自分を呼んだ相手のところに走っていた。
「授業中に女生徒の尻を追いかけるとは、ずいぶんといいご身分だな」
今度は頭上から、威圧するような重い声が降ってきた。
顔を上げると、いかにも小うるさそうな男が、眼鏡に手を当てて睨みつけてきている。
目立って体格が良いわけではないが、腕だけは異様に筋肉がついていて、制服が膨らんでいる。
「今は実習中だろう。なにをサボっている」
なんだよこいつ…全く気配を感じなかったぞ。エリカに気を取られすぎたか?
「堤じゃないか。戻っていたのか」
担任は謎の男に気が付いたようで、手を振りながら歩いてきた。
「お久しぶりです笹ヶ瀬教官」
「その呼び方はやめてくれ。ここでは先生だ」
「失礼しました笹ヶ瀬先生。先ほど戻りました。今はサボっている生徒がいたので声をかけていたところです」
ギロっと眼鏡越しに睨みつけてくる。
それになんだこの圧力は。目だけでなく、体全体で睨みつけられているみたいだ。
「黒沢ならサボりじゃないぞ。病み上がりでな、ついでにルームメイトも死んだから、今日は特別だ」
「ほう…なるほど…」
じっと、値踏みでもするかのような視線が突き刺さる。
「例え見学でも出来ることはあるでしょう。それに彼からは闘志を感じません。本当に魔術師を続けられるのですか?」
「不登校にならなかったんだ。やる気はあるんじゃないか?」
投げやりにも聞こえる返事に、俺への疑念は深まったようだ。
「君、今から俺と戦いなさい」
「は?なんで」
「断るなら、今すぐこの学園から立ち去れ!」
そんな勝手なことを…とかって言える雰囲気じゃないな。
さすがに担任も止めてくれるんじゃないか?
目で助けを求めると、面倒臭そうに言った。
「うーん…勝てばって条件じゃないし、別にいいんじゃないか」
まじかよ…これで断ることは出来なくなった。
ったく、目立つことはしたくないっていうのに。
それぞれ特訓をしていた連中も、騒ぎを聞きつけてぞろぞろ集まってきた。
「そういえば名乗っていなかった。俺は堤大志(たいし)。好きな奴はやる気のある奴。嫌いな奴はやる気のない奴だ」
まるで後者は俺に対してとばかりの言い草だ。
そんなに嫌われるようなことをした覚えはないんだがな。
「はあ…わかったよ。やればいいんだろやれば…」
「先輩に対して口の利き方がなってないな」
「一方的に敵対視されて、敬えってほうが無理だと思うぞ」
「ほう…口だけは一丁前と言うことか」
相変わらず馬鹿にした態度を取り続けている。
ムカついたから殺してやりたい…が、さすがに今やったら目立ちすぎる。
それに、相手の力量も分からない。
ここは弱点を探って、後日確実に殺すか。
「クエストスタートだ」
メインクエスト:眼鏡と戦う
サブクエスト:眼鏡の能力を探る
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