闇ギルドの影は目的を果たすために戦い続ける

夜納木ナヤ

文字の大きさ
上 下
6 / 26
昇格~敵の実力~

クラスメイトの襲来

しおりを挟む
 コンコンコン。

 部屋の扉がノックされている。
 俺が知っている限り、3回目だ。

 いっそ八つ裂きにしてやろうか?

 立ち上がろうとして、体がふらついた。
 しまった。こっちの体はまだ怪我をしたままだった。

 くそっ。
 勢い任せに立ち上がろうとして、今度は壁に激突して、ものすごい音がした。

「大丈夫かよ!?」
「すまん、開けるぞ!」

 ガチャガチャと音がして、鍵の外れる音がした。
 同時に扉は開き、ツンツン頭と坊主頭が中に入ってきた。

「すごい音がしたぞ」
「あーいや、扉を開けようと思ったらふらついて」
「それはわりい。立ち入り禁止なのに無理やりきた俺たちが悪い」

 ツンツン頭は頭を下げて、ツンツンをこっちに向けてくる。
 ずいぶんと尖っているが、刺さったら痛いのだろうか?

「別にいいよ。どうせ寝ていただけだし」
「その様子だと、思ったより元気そうだな」

 坊主頭はほっと息を吐いた。

「俺は庇ってもらったからな。大したことはないさ。それよりも二人は何をしに?」
「いや、なあ…」

 気まずそうに顔を見合わせると、ツンツン頭は頷いた。


「正直、クラスの空気が最悪でよ…これでもう一人いなくなるとかなったらどうしたもんかと」
「もし出来ることがあるなら助けたいと思ったんだが…必要なかったようだな」

 なるほど、俗に言ういい奴らってところか。
 この様子だと、味方が死にかけたら命を懸けて助けに行く口なんだろうな。

「心配してくれてサンキューな。明日…は無理かもしれないけど、出来るだけ早く復帰するつもりだ」
「そいつはよかった」
「ああ」

 他人のことを本気で心配できる奴らってのはいるもんなんだな。
 表面上か本心なのかまでは分からないけどな。

「俺たちに出来ることがあったら何でも言ってくれ」

 何でも、か。
 現状で困っていることはない。

 そういえばこいつらは、初日の微妙な空気の中でも教師に質問をしていたな。
 レイモンドがいなくなった今、クラスの中心はこの二人になるかもしれない。
 仲良くなっておいて損はない。

「じゃあ名前を教えてくれないか?レイモンド以外に知ってるやつがいなくてさ…ってレイモンドはいないのか。じゃあ俺はクラスで独り身だ」

 下を向き、自嘲気味に言うと、二人が頷いたのが分かった。

「俺の名前は榕城徹矢ようじょうてつや。徹矢って呼んでくれ」
 ツンツン頭は指を立てると、人懐っこい笑みを浮かべた。
 顔立ちも整っていて、多少無茶苦言われてもイラっと来ない空気感を備えている。

「俺は金城渉きんじょうわたる。俺のことも渉でいいぞ」

 坊主頭は胸をトンと叩くと笑った。
 でかい。遠目で見た時も思っていたが、近くにいると存在感は際立っていて、岩と対峙している様だ。
「徹に渉か。ぼちぼちよろしく頼む。あ、俺は黒沢カケル。好きなように呼んでくれ」
「ああ、なんでも頼ってくれ」

 本当にお人好しなんだな。

「二人とも城って苗字についているけど、名家の出なのか?」
「えーあーまあ。一番のへたっぴだけど」

 徹矢は気まずそうに笑った。
 あまり聞かれたくはなかったようだ。

「何言ってんだよ。今日は大活躍だったじゃないか」

 徹矢は渉に肩をポンポン叩かれて、迷惑そうにしながらも、少し嬉しそうに笑った。

「そ、そうか?」
「ああ、今日の実習はお前のおかげで…あ」

 二人は同時に俺を見た。
 何かまずいとことでもあったか?
 うーん…ああ、『実習』か。

「俺なら気にしていないから大丈夫だ。それよりももっと聞かせてくれ。実習が悪いことばかりじゃないと知りたい」
「そ、そうか…それなら、俺が得意なのは光魔術だ。発動中の術を摂理から切り離すんだ」
「切り離す…ってことは、例えば木だったら根元の上を切るとかそんなか?」
「ああ」

 はにかみながらも頷いた。
 そいつは『へたっぴ』とかって問題じゃない。
 厄介だ。

 もし影が俺から切り離されれば、何もできなくなる。
 要注意人物だ。

「そいつはすごいな。どんな術でも無効化できるんじゃないか?」
「いやさ、制限があるんだ」
「制限?」
「ああ。30秒しか持たないんだ。昔は3秒ぐらいだったからそれでも長くはなかったんだけどさ」

 十分長い。
 それだけあれば簡単に人一人は殺すことが出来る。

「それでも俺なんかよりよっぽど役に立つさ」
「渉の能力はどんななんだ?」
「怪力だ。効果は一瞬だが、指一本で岩を壊すぐらいは出来る」
「は?強くね?」

 岩を砕けるなら人の骨だって砕けるだろう。
 簡単に人を殺せるな。

「そんなことは…タメが必要になるから簡単に避けられる」

 その程度はデメリットでもなんでもない。
 相手を拘束するなリ、逆に範囲内に突っ込んでくるように誘導すればいいだけの話だ。

「そういえばカケルはどんな力を…」

 コンコンコン。
 また来客だ。

「立ち入り禁止の扉が開いた気配があったのだけど、誰かいるの?」

 声の主は真崎だった。
 もちろん、彼女がこのタイミングで来たのは偶然なんかじゃない。
 俺が呼んだのだ。

「ふたりとも、窓から逃げろ!」
「あ、ああっ、恩に着る」

 二人が出て行ったと同時に、扉が開き、真崎が顔をのぞかせた。

「あら、黒沢君一人なのね」
「ああ」
「そう、怪我をしているんだからあんまり動き回っちゃだめよ」

 廊下に聞こえるように会話を終えると、扉が閉じられた。

 さて、徹矢と渉。どうやって処分したものか…。     
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...