闇ギルドの影は目的を果たすために戦い続ける

夜納木ナヤ

文字の大きさ
上 下
2 / 26
出会い~始まりと終わり~

ルームメイトとの誓い

しおりを挟む
 寮に帰ってもすることがないので、学園の施設を確認しておいた。
 食堂、図書館、実習室。
 どれも鍵がかけられていて、中に入ることは出来なかった。

 授業が速攻で終わったのは、単にうちの担任がめんどくさがりだったからではない。荷物の搬入は最短で入学式後当日と決まっているのだ。ほとんどの生徒はそのまま部屋にこもり、荷物整理に奮闘する。
 俺がなぜそれをしなかったかと言えば、必要がないからだ。

「205号室、ここか」

 白い床に白い壁。距離感を失いそうな真っ白な廊下を進んだ角に、俺の部屋はあった。
 ルームメイトはすでにいるようで、扉の下からは光が漏れていた。
 ここはノックをしてから入るべきだろうか?
 いやいや俺の部屋だ。そのまま入っても問題ないか?

 などと考えていると、扉は勝手に開いた。

「やはり君か。会えて嬉しいよ」

 金髪の美男子、レイモンド=サーティスは白い歯を覗かせてながら迎えてくれた。

「なぜ俺だと?」
「僕の後に教室を出た人物は他にいなかったからね。そうだ、休憩がてらお茶をしているんだ。君も一杯どうだい?」
「女子かよ」
「よく言われるよ。さあ、どうぞ」

 うやうやしくお辞儀をすると、俺は中に招き入れられた。
 いや、招き入れられたはおかしいか…俺は部屋に入った。

 部屋の真ん中には丸テーブルが置かれ、ティーポットにカップ、クッキーまで用意されていた。

「マジの休憩タイムかよ」
「すまない。毎日の習慣になっていてね」
「ま、いいけど」

 紅茶を飲むのは後にして、部屋の端にあったかばんを手にとった。

「君の荷物はそれだけだったようだが」
「一生ここで暮らすわけじゃないんだ。必要なら買いたすさ」

 中身は着替えと教科書だけだ。
 それよりも気になるのは、壁いっぱいに積み上げられているダンボールの山だ。当然俺のものではない。
 旅行に行く子供が、嬉しすぎて遊び道具を持てるだけに持ってきたような量だ。

「多すぎじゃないか?」
「そ、そんなことは…いやすまない。ここに来るのを楽しみにしていたのは認めよう」
「別に責めてるわけじゃない」

 やたら申し訳無さそうに言われたのでフォローはしておいた。
 
「そうか、ならよかった。それに僕はやはり嬉しいんだ」
「それはさっきも聞いたぞ」
「そうではない。君に出会えたことがだ」

 マジ顔だ。もしかしてこいつ、女より男が好きとかそんなんじゃないよな?
 念のために、寝る時は枕元に剣を置いておくか。

「僕は留学生だ。おまけに学年主席と来た。皆は特別な目で見てくる。だが君は違う、普通だ。むしろ冷たいぐらいだ」
「そっけなくて悪かったな」
「ははは、君は本当に冗談が上手いんだな」

 精一杯皮肉を込めたはずだったが、むしろ好意的に取られてしまったようだ。それからレイモンドは、俺に向かって手を差し出してきた。

「君とは長い付き合いになりそうだ。3年間よろしく頼むよ」
「ほどほどによろしく」

 俺達は握手を交わした。
 ねっとり掴まれたらどうしようかと思ったが、いたって普通の握手だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...