【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

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136.理科室の人体模型・裏①(怖さレベル:★★★)

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(怖さレベル:★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話)
(10代男性 則本さん(仮))

えぇと、どーも、初めまして。

以前、オレの友だちの佐々川ってヤツが、
理科準備室でヘンテコな人体模型を見つけた、
って話をしたと思います。

オレが話すのは、その出来事があった次の日。
ええ、オレの腕が真っ赤な液体で濡れてた、その翌日ですよ。

いやぁ、あれには参っちゃいました。
まっさきに血かと思いましたし……幸い、水道ですぐ落ちたからよかったですけど。

サラサラしてて、ほんと水みたいだったんですよね。
水彩絵の具を、うすーく溶かした水、みたいな感じでした。

っていっても、それがオレの腕についてる理由はわからなかったし、
うす気味悪さは残ったんですけど……。

まぁ結局、あいつ――佐々川とも話をして、
例の準備室のできごとは誰にも言わないでおこう、
ってことで、あの日は別れたんです。

そんで、次の日。
オレはいつも通り、遅刻ギリギリで教室に飛び込みました。

「ふーっ、セーフ!!」

すべりこむようにして席へ飛びつくと、
トン、と頭頂部をつつかれたんです。

「おいおい、ケガしてもしらねぇぞ? もうちょっと余裕をみて登校してこい」
「あっ……先生」

声をかけてきたのは、うちのクラスの副担任。
つまり、例の理科の先生でした。

「……あ、ははっ。せんせー、5分前行動派だもんなー」
「そりゃあそうだ。それに遅刻ばっかしてると、女の子にモテないぞ」

とっさに軽口を返せば、
それを聞いた周囲のクラスメイトがクスクスと笑います。

へへ、と照れ隠しにほっぺたを掻きつつ、
オレは額に流れた冷や汗をそっとぬぐいました。

(やべぇ……一瞬、固まっちまった)

いつものようにおふざけを返したものの、
ちょっとぎこちなかったかもしれません。

でも、先生はまったく気にすることなく、
教壇の方へと戻っていきました。

(うーーん……)

副担任の様子は、いたって普段と変わりありません。
昨日、理科室前で取り乱していた様子は、まるでウソみたいに。

(ん、あれ……そういやぁ、佐々川が来てねぇな)

ななめ前の友人の席はからっぽです。

時間に間に合うようにバタバタと走ってきたため、
ロクに携帯を確認していませんでした。

オレは先生方の目から逃れるように、
コソコソと机の下でアプリを起動させました。

(えーっと? ……あ、きてる)

ヤツのアイコンから『熱をだしたから休む』という、
シンプルな内容が届いていました。

(熱かぁ……まさか昨日の。……いや、関係ねぇよな)

気を抜くと、昨日の理科準備室でのできごとが
ぶわっと脳裏によみがえります。

自分はわりと図太い方で、
ホラーとか恐怖映像を見ても、なんも気にせず眠れる方なんですよ。

でも、さすがに昨日のアレは実体験。

湯舟につかっていると、どうにも真っ赤な水が思い出されて、
結局ササッとシャワーを浴びるだけで済ませたくらいです。

「こら、則本! 携帯没収するぞ!!」
「あっ、いや、見てません見てません、って!!」

慌てて机の中に携帯をつっこんで、
両手を開いておどけておどけて見せます。

教室内に響く、俺への失笑とツッコミ。

そうだ、別になにも変わっていない。
先生も、クラスのみんなだって。

そう、オレはホッとひと安心したんです。



そして、その日の放課後。

オレは生あくびをしながらカバンを抱え、
さっさと帰ってゲームでもやろう、なんて考えつつ、
のんびりと教室から出ようとしました。

「おーい、則本」

しかし、もう職員室へ向かったはずの副担任が、
ふと入口から顔をのぞかせたんです。

「あー……先生、なんか用?」
「なんか用、ってなぁ……お前、今日の勉強はいいのか?」

ヤレヤレ、といつもの感じで肩を落として、
副担任は軽い感じで問いかけてきます。

オレは一瞬言葉に詰まったものの、

「えーっと……さ、佐々川が休みだし、今日はいいや!」

いたっていつも通り、なにごともない風を装って、
明るく断りの言葉を言い放ちました。

(つーか、昨日のアレ見て……平然と勉強なんかしてらんねぇよ)

怪しい人体模型を発見した理科準備室で、
なぞの言動をした先生と、二人っきり。

それがいくら三十分程度の短い時間であろうとも、
なんとなく――いや、かなりイヤなものがあります。

そんなオレの断りに、しかし先生は朗らかな笑顔で、

「逆に勉強がはかどるだろ? お前、だいぶ課題ためこんでるって聞いてるぞ」
「うっ……!」

たしかに、オレはテストの点数も悪いし、
課題や宿題の提出率も軒並み低いため、
受験を控えた身としては、非常にくるしい状況でした。

「今日だったら、マンツーマンで見てやれるけど……本当にいいのか?」
「ううっ……!」

脳裏には、昨日のあの不気味な人体模型がユラユラと揺れています。
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