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133.マクラが合わない話①(怖さレベル:★★☆)
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(怖さレベル:★★☆:ふつうに怖い話)
※虫系も関わる話です※
旅館とかへ行くと、すぐ眠れるタイプですか?
ホテルとか友だちの家とか、自宅じゃない場所だと、
どうしたって、環境も寝具もいつもと違いますよね。
ほら、マクラが合わない、なんてけっこう聞く話でしょう。
自分の家のマクラじゃないと熟睡できない、って人、
けっこう多いんじゃないでしょうか。
ま、かく言うオレはおおざっぱな性格のせいか、
ちっともそういうことはないんですが。
どんなマクラでも大丈夫だし、なんなら、
マクラなしでも眠れちゃう、っていうタイプでして。
まぁ……そのせいで、あんなことに巻き込まれちまったってワケなんですけど。
ええ……アレはまだオレが大学生だった頃の、秋ぐらいの話です。
バイト先と自分の家が遠かったもんで、
バイト先から徒歩5分の距離の友達の家に、
しょっちゅう押しかけてた時期があるんですよ。
そいつは一人暮らしだったもんで、どうやらヒマを持て余してたらしく、
オレが行くのはむしろ歓迎、って感じで、おたがい気兼ねなくよく遊んでいました。
ま、オレがバイト先から、弁当をいくつも持参してたから、
食費的な意味で、助かってたってのもあるでしょうね。
で、その日も、バイト終わりにそいつん家に行くことにしたんです。
歩きがてらメッセージを送れば、すぐに『OK』の返事がきて、
オレはいつも通り、弁当の他につまみやらお菓子やらをもって、
そいつの家のドアを叩きました。
「よっ、早かったな」
友だち――古暮は、最近ハマっているというネトゲ用のヘッドセットをつけつつ、
ニヤニヤとオレを部屋に招き入れました。
テーブルに持参した品々を載せていると、
古暮はそのままパソコンの前に移動して、ネトゲのプレイに戻っていきます。
コレはいつものことなので、オレは電子レンジで適当に弁当を温めつつ、
充電の切れかけたスマホを遠慮なくヤツの家のコンセントに突き刺していると、
「……あ? なんだこれ」
ソファのとなりに放り投げられている、毛布のかたまりに目が向きました。
「おい、古暮。これ、なんだよ?」
「あ? ……ああ、それか」
ヤツはきりのいいところでネトゲを終わらせた後、
テーブルをはさんでオレの向かいに座りました。
「それ、もらいモンなんだよ」
「もらい……モン?」
遠慮なく毛布を広げてみると、中にはマクラがひとつ。
デザインは、黄色地に花柄のポップなデザインです。
よくよく見ると、毛布自体も、同じ柄をしていました。
「なんだよこれ、女子のか? お前、いつの間に彼女つくったんだよ」
「ちげぇって! これ、アレだよ。ネトゲ仲間にもらったんだよ」
「……ネトゲ仲間ぁ?」
古暮は、ニヤニヤと笑みを深めつつ、目の前で指を振りました。
「おれ、ギルド内じゃかわいい女子で通ってるからさ~、同じギルドの女子仲間が、ひっこすんで処分に困ってるっていうから……そう言われちゃあ、引きとるしかねぇだろ?」
と、さも何の他意もありません、と言わんばかりの口調で言い切ったんです。
コイツは、いわゆるネカマというか、女子キャラを使用したうえで、
女子になりきってプレイしている、というのは聞いていました。
でも、まさかそこまでのめりこんでいたとは。
オレはあきれつつ毛布を元に戻したものの、
どうしてそれが、こんな端に放置されているのかが気になったんです。
「つーか、じゃ、どっか仕舞うとかすりゃいいだろ。もしくは使うとか」
「いやー、おれ、自分のはあるしさぁ。仕舞ったっていいけど、誰か来た時に使ってもらえるだろ。ま、こないだ妹が来たときソレ使ったら、マクラが合わねぇって文句言われたけどな」
「……あれ、お前の妹……ってマリちゃんだよな? あの子が?」
オレの持ってきた弁当に箸をつけつつ、古暮は首をひねりました。
「いやー、わりとどこでも寝れるタイプなんだけどなぁ。なんか、それ使うと眠れねぇんだと」
「お前、家族でキャンプへ行ったとき、マリちゃんがまっさきに寝付いちまったって言ってたモンなぁ」
「そうなんだよ。どこに旅行行っても、いっつも熟睡してるマリが言うくらいだし、マジで合わねぇんだろうな。だから、とりあえずそこへ置き去り」
と、古暮は冷蔵庫からコーラを取り出してガブガブと飲んだ。
「いーじゃん、捨てちまえば」
「バッカ、うちのギルドリーダーの私物だぞ。かってに捨てられっかよ」
古暮はニヤニヤと笑いつつ、さらに続けた。
「ま、それに女子のモンだし。とりあえず置いとけば、なんか華があってイイかなって」
「お前……そんなんだから彼女できねぇんだよ」
「うっせぇ!!」
なんて軽口をたたき合いつつ食事を終え、
その後、二人そろってダラダラゲームをして時間をつぶしました。
ほどよく夜も更けた頃、じゃ、寝るか、と
リビングのソファに陣取ったタイミングで、
「ほらよ」
と、さっきの黄色の枕と毛布を投げ渡されたんです。
※虫系も関わる話です※
旅館とかへ行くと、すぐ眠れるタイプですか?
ホテルとか友だちの家とか、自宅じゃない場所だと、
どうしたって、環境も寝具もいつもと違いますよね。
ほら、マクラが合わない、なんてけっこう聞く話でしょう。
自分の家のマクラじゃないと熟睡できない、って人、
けっこう多いんじゃないでしょうか。
ま、かく言うオレはおおざっぱな性格のせいか、
ちっともそういうことはないんですが。
どんなマクラでも大丈夫だし、なんなら、
マクラなしでも眠れちゃう、っていうタイプでして。
まぁ……そのせいで、あんなことに巻き込まれちまったってワケなんですけど。
ええ……アレはまだオレが大学生だった頃の、秋ぐらいの話です。
バイト先と自分の家が遠かったもんで、
バイト先から徒歩5分の距離の友達の家に、
しょっちゅう押しかけてた時期があるんですよ。
そいつは一人暮らしだったもんで、どうやらヒマを持て余してたらしく、
オレが行くのはむしろ歓迎、って感じで、おたがい気兼ねなくよく遊んでいました。
ま、オレがバイト先から、弁当をいくつも持参してたから、
食費的な意味で、助かってたってのもあるでしょうね。
で、その日も、バイト終わりにそいつん家に行くことにしたんです。
歩きがてらメッセージを送れば、すぐに『OK』の返事がきて、
オレはいつも通り、弁当の他につまみやらお菓子やらをもって、
そいつの家のドアを叩きました。
「よっ、早かったな」
友だち――古暮は、最近ハマっているというネトゲ用のヘッドセットをつけつつ、
ニヤニヤとオレを部屋に招き入れました。
テーブルに持参した品々を載せていると、
古暮はそのままパソコンの前に移動して、ネトゲのプレイに戻っていきます。
コレはいつものことなので、オレは電子レンジで適当に弁当を温めつつ、
充電の切れかけたスマホを遠慮なくヤツの家のコンセントに突き刺していると、
「……あ? なんだこれ」
ソファのとなりに放り投げられている、毛布のかたまりに目が向きました。
「おい、古暮。これ、なんだよ?」
「あ? ……ああ、それか」
ヤツはきりのいいところでネトゲを終わらせた後、
テーブルをはさんでオレの向かいに座りました。
「それ、もらいモンなんだよ」
「もらい……モン?」
遠慮なく毛布を広げてみると、中にはマクラがひとつ。
デザインは、黄色地に花柄のポップなデザインです。
よくよく見ると、毛布自体も、同じ柄をしていました。
「なんだよこれ、女子のか? お前、いつの間に彼女つくったんだよ」
「ちげぇって! これ、アレだよ。ネトゲ仲間にもらったんだよ」
「……ネトゲ仲間ぁ?」
古暮は、ニヤニヤと笑みを深めつつ、目の前で指を振りました。
「おれ、ギルド内じゃかわいい女子で通ってるからさ~、同じギルドの女子仲間が、ひっこすんで処分に困ってるっていうから……そう言われちゃあ、引きとるしかねぇだろ?」
と、さも何の他意もありません、と言わんばかりの口調で言い切ったんです。
コイツは、いわゆるネカマというか、女子キャラを使用したうえで、
女子になりきってプレイしている、というのは聞いていました。
でも、まさかそこまでのめりこんでいたとは。
オレはあきれつつ毛布を元に戻したものの、
どうしてそれが、こんな端に放置されているのかが気になったんです。
「つーか、じゃ、どっか仕舞うとかすりゃいいだろ。もしくは使うとか」
「いやー、おれ、自分のはあるしさぁ。仕舞ったっていいけど、誰か来た時に使ってもらえるだろ。ま、こないだ妹が来たときソレ使ったら、マクラが合わねぇって文句言われたけどな」
「……あれ、お前の妹……ってマリちゃんだよな? あの子が?」
オレの持ってきた弁当に箸をつけつつ、古暮は首をひねりました。
「いやー、わりとどこでも寝れるタイプなんだけどなぁ。なんか、それ使うと眠れねぇんだと」
「お前、家族でキャンプへ行ったとき、マリちゃんがまっさきに寝付いちまったって言ってたモンなぁ」
「そうなんだよ。どこに旅行行っても、いっつも熟睡してるマリが言うくらいだし、マジで合わねぇんだろうな。だから、とりあえずそこへ置き去り」
と、古暮は冷蔵庫からコーラを取り出してガブガブと飲んだ。
「いーじゃん、捨てちまえば」
「バッカ、うちのギルドリーダーの私物だぞ。かってに捨てられっかよ」
古暮はニヤニヤと笑いつつ、さらに続けた。
「ま、それに女子のモンだし。とりあえず置いとけば、なんか華があってイイかなって」
「お前……そんなんだから彼女できねぇんだよ」
「うっせぇ!!」
なんて軽口をたたき合いつつ食事を終え、
その後、二人そろってダラダラゲームをして時間をつぶしました。
ほどよく夜も更けた頃、じゃ、寝るか、と
リビングのソファに陣取ったタイミングで、
「ほらよ」
と、さっきの黄色の枕と毛布を投げ渡されたんです。
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