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56.吊り橋で出会った子ども①(怖さレベル:★★★)
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(怖さレベル:★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話)
『20代男性 木ノ下さん(仮名)』
……あ、どうも。
以前、ガソリンスタンドで散々な目にあった、って話をしたんですが……
今回も、性懲りもなく肝試しをした時の話でもしようかと思います。
ええ? 前回、さんざん懲りた、なんて言ってたって?
……はい、まったくその通りなんですが。
喉元過ぎれば熱さを忘れる、じゃないですけど、
俺たち、ほんと根っからのアホだったんですよね。
それで、そこに行くことになったのは、
ある秋の日のコトでした。
その日、いつかのような夕暮れ時。
いつものごとく、俺達はファミレスに集結していました。
特になにか生産的なことをするわけでもなく、
ドリンクバーで居座ることしばらく。
俺と水島が、遅れてやってくるという原をダラダラと待っていた時です。
「お、電話」
水島が、ドリンクバーで作り上げた
コーラミックスジンジャーエールに口をつけつつ呟きました。
「あー、誰から?」
「えーっとな……あ、原だ。アイツ、まだこっち来られねぇんかな」
元々、原は時間を守る、ということに無頓着な男です。
水島が呆れたように画面表示を見て、そのまま携帯を放り投げてきました。
「ちょっとトイレ行ってくるわ。話聞いててくれ」
「おー了解」
ひらひらと片手を振って席を立った水島を見送り、
振動を続ける携帯電話を通話モードに切り替えました。
「もしもし? おい、どしたー?」
『お? その声は木ノ下か。悪ィな、遅くなって。もーすぐ着けるんだけどさぁ。
そんでさ……木ノ下、お前、車持ってたよな?』
軽い謝罪の言葉の後、それが本題であるかのように、
原は唐突に尋ねてきました。
「中古の軽だけどな。……なんだ、どっか行きたいトコあんのか?」
『いースポット聞いたんだよ! どーせヒマしてるだろ?
これから一発、肝試しにでもシャレこもーぜ!』
「肝試しィ?」
俺が間抜けな声を上げると、
ちょうどいいタイミングで水島が戻ってきました。
「肝試し? あのスタンドのやつ、だいぶヤバかったけどなぁ」
『お、水島! ありゃあヤバかったよなぁ~。
オレ、あと十五分くらいで着くから、詳しく話すわ』
「おー、待ってるぜ」
プッ。
通話が終わり、水島がテーブルに伸びながらのんびりと言いました。
「原、肝試ししたいっつってんのか?」
「ん。なんか良いスポット聞いたんだってよ」
俺は憂鬱な気分を紛らわせようと、
氷を詰め込んでキンキンに冷えたアイスコーヒーをぐっと飲み干しました。
なんせ、ほんの二か月前、
あのガソリンスタンドでの恐怖体験をしたばかりなのです。
元来小心者の俺にとって、その時の出来事はなかなかのトラウマで、
昼間であってもあの辺りを通ることはなくなりました。
「良いスポット……ってドコだろうなぁ。
よく幽霊って水場に居つく、とか言うじゃん」
しかし水島は、わりと平然とした面持ちで携帯で検索をかけ始めています。
俺は今日のこれからを考え、深々とため息をつきました。
「……趣味悪ィな」
開口一番、俺の口からはため息が漏れました。
「そりゃー、心霊スポットだからな!」
助手席でケラケラと笑うのは、肝試しの提案をした張本人の原です。
「……でも、吊り橋か。けっこー全国的にヤバい所多いみたいだけど、
うちの地元にもこんなんあったんだなぁ」
そう、原が聞いてきた心霊スポットは『吊り橋』です。
山の中にある自然公園につながる、かなりの大きさの鉄の吊り橋。
橋自体は、地元でも名の知れた大橋らしく、
マニアな雑誌にも掲載されることもあるのだとか。
「でもなぁ……あそこが心霊スポットなんて初めて聞いたぞ」
と、後部座席の水島が両腕をブラブラと揺らしながら言いました。
彼はこの吊り橋にも来たことがあるらしく、すぐに場所はわかったのですが、
水島曰く「なんてことのない吊り橋と公園」なのだそうです。
「いやー、オレも聞いたことなかったんだけど、バイト先の先輩がさぁ」
と、原がニヤつきつつ、指を立ててきます。
こいつが言っている先輩というのは、
奴の三つ上の女性で、原が狙っている相手です。
「最近、ここらで目撃情報が多いんだってさ。
行ってみたいけど怖い、なんて言うからさぁ。
じゃあ、俺と行きましょう! つったんだけど断られちゃって」
「オイ……断れてんじゃねぇか」
「ハハッ、でも代わりに、
行った感想を教えてほしい、なんて言われちゃってさー!」
ヘラヘラと笑う奴は、いかにもな下心がミエミエでした。
「なんだよ。お前の都合かよ、オイ」
水島が、後部座席から原の頭を小突きました。
「いーじゃんいーじゃん! お前ら、どうせヒマしてただけだろ?」
「まーそーだけどな……つーか、最近って……そもそも何が出るんだよ」
俺はハンドルを握りながら、一番メインとなる部分について尋ねました。
「ん~……さあ、なんだと思う?」
勿体ぶった言い回しで、奴は両手を上に上げましたが、
「ウゼェ」
「さっさと言えよ」
俺たちの攻撃にあえなく撃沈し、あっさりと口を開きました。
「……人魂、だってさ」
「人魂ァ?」
人魂、というと連想されるのは、
火の玉のように夜闇に揺らぐそれ。
「そ。橋の上に霊感があるヤツが行くと、
十やそこらじゃきかねぇくらい見えるらしい」
「そんなに飛んでるって……ホタルとかそういうんじゃねぇの」
人魂の集団発光、なんていかにも胡散臭さ満載です。
俺が疑惑のまなざしを向けているのに気付いたか、
原はチッチッと指を揺らしました。
「そんな単純な光じゃねぇらしいぜ?
それに、他にも変なモン見たって目撃情報もあるらしいしな」
「変なモン?」
「ああ。……みょーな女とか、子どもとか」
「……子ども?」
水島がピクリ、と反応します。
>>
『20代男性 木ノ下さん(仮名)』
……あ、どうも。
以前、ガソリンスタンドで散々な目にあった、って話をしたんですが……
今回も、性懲りもなく肝試しをした時の話でもしようかと思います。
ええ? 前回、さんざん懲りた、なんて言ってたって?
……はい、まったくその通りなんですが。
喉元過ぎれば熱さを忘れる、じゃないですけど、
俺たち、ほんと根っからのアホだったんですよね。
それで、そこに行くことになったのは、
ある秋の日のコトでした。
その日、いつかのような夕暮れ時。
いつものごとく、俺達はファミレスに集結していました。
特になにか生産的なことをするわけでもなく、
ドリンクバーで居座ることしばらく。
俺と水島が、遅れてやってくるという原をダラダラと待っていた時です。
「お、電話」
水島が、ドリンクバーで作り上げた
コーラミックスジンジャーエールに口をつけつつ呟きました。
「あー、誰から?」
「えーっとな……あ、原だ。アイツ、まだこっち来られねぇんかな」
元々、原は時間を守る、ということに無頓着な男です。
水島が呆れたように画面表示を見て、そのまま携帯を放り投げてきました。
「ちょっとトイレ行ってくるわ。話聞いててくれ」
「おー了解」
ひらひらと片手を振って席を立った水島を見送り、
振動を続ける携帯電話を通話モードに切り替えました。
「もしもし? おい、どしたー?」
『お? その声は木ノ下か。悪ィな、遅くなって。もーすぐ着けるんだけどさぁ。
そんでさ……木ノ下、お前、車持ってたよな?』
軽い謝罪の言葉の後、それが本題であるかのように、
原は唐突に尋ねてきました。
「中古の軽だけどな。……なんだ、どっか行きたいトコあんのか?」
『いースポット聞いたんだよ! どーせヒマしてるだろ?
これから一発、肝試しにでもシャレこもーぜ!』
「肝試しィ?」
俺が間抜けな声を上げると、
ちょうどいいタイミングで水島が戻ってきました。
「肝試し? あのスタンドのやつ、だいぶヤバかったけどなぁ」
『お、水島! ありゃあヤバかったよなぁ~。
オレ、あと十五分くらいで着くから、詳しく話すわ』
「おー、待ってるぜ」
プッ。
通話が終わり、水島がテーブルに伸びながらのんびりと言いました。
「原、肝試ししたいっつってんのか?」
「ん。なんか良いスポット聞いたんだってよ」
俺は憂鬱な気分を紛らわせようと、
氷を詰め込んでキンキンに冷えたアイスコーヒーをぐっと飲み干しました。
なんせ、ほんの二か月前、
あのガソリンスタンドでの恐怖体験をしたばかりなのです。
元来小心者の俺にとって、その時の出来事はなかなかのトラウマで、
昼間であってもあの辺りを通ることはなくなりました。
「良いスポット……ってドコだろうなぁ。
よく幽霊って水場に居つく、とか言うじゃん」
しかし水島は、わりと平然とした面持ちで携帯で検索をかけ始めています。
俺は今日のこれからを考え、深々とため息をつきました。
「……趣味悪ィな」
開口一番、俺の口からはため息が漏れました。
「そりゃー、心霊スポットだからな!」
助手席でケラケラと笑うのは、肝試しの提案をした張本人の原です。
「……でも、吊り橋か。けっこー全国的にヤバい所多いみたいだけど、
うちの地元にもこんなんあったんだなぁ」
そう、原が聞いてきた心霊スポットは『吊り橋』です。
山の中にある自然公園につながる、かなりの大きさの鉄の吊り橋。
橋自体は、地元でも名の知れた大橋らしく、
マニアな雑誌にも掲載されることもあるのだとか。
「でもなぁ……あそこが心霊スポットなんて初めて聞いたぞ」
と、後部座席の水島が両腕をブラブラと揺らしながら言いました。
彼はこの吊り橋にも来たことがあるらしく、すぐに場所はわかったのですが、
水島曰く「なんてことのない吊り橋と公園」なのだそうです。
「いやー、オレも聞いたことなかったんだけど、バイト先の先輩がさぁ」
と、原がニヤつきつつ、指を立ててきます。
こいつが言っている先輩というのは、
奴の三つ上の女性で、原が狙っている相手です。
「最近、ここらで目撃情報が多いんだってさ。
行ってみたいけど怖い、なんて言うからさぁ。
じゃあ、俺と行きましょう! つったんだけど断られちゃって」
「オイ……断れてんじゃねぇか」
「ハハッ、でも代わりに、
行った感想を教えてほしい、なんて言われちゃってさー!」
ヘラヘラと笑う奴は、いかにもな下心がミエミエでした。
「なんだよ。お前の都合かよ、オイ」
水島が、後部座席から原の頭を小突きました。
「いーじゃんいーじゃん! お前ら、どうせヒマしてただけだろ?」
「まーそーだけどな……つーか、最近って……そもそも何が出るんだよ」
俺はハンドルを握りながら、一番メインとなる部分について尋ねました。
「ん~……さあ、なんだと思う?」
勿体ぶった言い回しで、奴は両手を上に上げましたが、
「ウゼェ」
「さっさと言えよ」
俺たちの攻撃にあえなく撃沈し、あっさりと口を開きました。
「……人魂、だってさ」
「人魂ァ?」
人魂、というと連想されるのは、
火の玉のように夜闇に揺らぐそれ。
「そ。橋の上に霊感があるヤツが行くと、
十やそこらじゃきかねぇくらい見えるらしい」
「そんなに飛んでるって……ホタルとかそういうんじゃねぇの」
人魂の集団発光、なんていかにも胡散臭さ満載です。
俺が疑惑のまなざしを向けているのに気付いたか、
原はチッチッと指を揺らしました。
「そんな単純な光じゃねぇらしいぜ?
それに、他にも変なモン見たって目撃情報もあるらしいしな」
「変なモン?」
「ああ。……みょーな女とか、子どもとか」
「……子ども?」
水島がピクリ、と反応します。
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