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第九章 永遠に
梢紗
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もうすぐ日が暮れる。
ふと、空を見上げ梢紗を思った。
先触れがあった、今頃こちらに向かっているだろう。
今回のこと、梢紗の犠牲が無かったら、目の前で微笑む斉井も、そしてこの家自体も無かったかもしれない。
阿羅国と関わることで命を落とす者がいる……そうだとしたら。
使用人が新しく入れたお茶と、菓子を持ってきた。
「今夜はここで休まれるでしょう?」
「そうさせてもらおう、いつも世話になるな」
「何をおっしゃいますか……どうかご遠慮なく。そもそも阿羅彦様なら迎賓館にお迎えするのが筋ですのに」
「いや、私はこちらのほうがいいよ」
その言葉に斉井は息子と目を合わせ喜んだ。
俺はおいしそうな湯気の立つ湯呑を手に取った。
しかし、次の瞬間、ぎゅっと胸が締め付けられる苦しみを感じ、思わず湯呑が揺れた。
セサが即座に動き湯呑を持ち上げ、サリヴィスが私を抱えた。
胸の痛みは強烈で、息もできない。
「阿羅彦様! 我が君!」
「どうなされました!」
バタバタと人々は動き出したが、俺はその時ハッとした。
ーーこれは、絶望……なぜ? 今?
身体的に痛いのではない……これは……
そして一瞬『阿羅彦様』と、梢紗の声が聞こえた。
目の前に梢紗の笑顔が浮かんだ。
「……梢紗!」
俺は痛みでどうしようもない体から魔力を放出した。
白い光がおさまって、見えたのは地に倒れた梢紗。
俺の体を抱きしめていたサリヴィスも、俺の横で呆然している。
「梢紗?」
ピクリとも動かない梢紗をただ見つめた。
足を一歩踏み進める、ぱきんと小枝を踏んだ音が響いた。
見ると大きな馬車が2台、横転している。
7人の侍従の支度をした者が梢紗の周りで絶命している。
「まさか……梢紗様?」
サリヴィスの声でハッとなり、駆け寄り梢紗の上半身を起こした。
口と目、そして耳からも流血していて、すでに息はなかった。
どんなケガであろうとも、せめて生きていてくれたのなら、俺が治せたかもしれないのに。
「そんな……まさか、なぜ」
サリヴィスのつぶやきに応えることもできず、袖で梢紗の顔をぬぐった。
美しい顔が血で汚れていてはいけない。
お前は、玖羅紗にも負けない輝きを持った、そんな男だったのだよ。
サリヴィスがそっと手拭いを差し出した。
それを受け取り、顔を拭き、そして髪を整えた。
「お前……なぜ俺を呼ばなかった……」
紗国の風が俺の髪をさらい、梢紗の銀色の髪に触れた。
「なぜ!」
俺の叫びが山道にこだました。
ふと、空を見上げ梢紗を思った。
先触れがあった、今頃こちらに向かっているだろう。
今回のこと、梢紗の犠牲が無かったら、目の前で微笑む斉井も、そしてこの家自体も無かったかもしれない。
阿羅国と関わることで命を落とす者がいる……そうだとしたら。
使用人が新しく入れたお茶と、菓子を持ってきた。
「今夜はここで休まれるでしょう?」
「そうさせてもらおう、いつも世話になるな」
「何をおっしゃいますか……どうかご遠慮なく。そもそも阿羅彦様なら迎賓館にお迎えするのが筋ですのに」
「いや、私はこちらのほうがいいよ」
その言葉に斉井は息子と目を合わせ喜んだ。
俺はおいしそうな湯気の立つ湯呑を手に取った。
しかし、次の瞬間、ぎゅっと胸が締め付けられる苦しみを感じ、思わず湯呑が揺れた。
セサが即座に動き湯呑を持ち上げ、サリヴィスが私を抱えた。
胸の痛みは強烈で、息もできない。
「阿羅彦様! 我が君!」
「どうなされました!」
バタバタと人々は動き出したが、俺はその時ハッとした。
ーーこれは、絶望……なぜ? 今?
身体的に痛いのではない……これは……
そして一瞬『阿羅彦様』と、梢紗の声が聞こえた。
目の前に梢紗の笑顔が浮かんだ。
「……梢紗!」
俺は痛みでどうしようもない体から魔力を放出した。
白い光がおさまって、見えたのは地に倒れた梢紗。
俺の体を抱きしめていたサリヴィスも、俺の横で呆然している。
「梢紗?」
ピクリとも動かない梢紗をただ見つめた。
足を一歩踏み進める、ぱきんと小枝を踏んだ音が響いた。
見ると大きな馬車が2台、横転している。
7人の侍従の支度をした者が梢紗の周りで絶命している。
「まさか……梢紗様?」
サリヴィスの声でハッとなり、駆け寄り梢紗の上半身を起こした。
口と目、そして耳からも流血していて、すでに息はなかった。
どんなケガであろうとも、せめて生きていてくれたのなら、俺が治せたかもしれないのに。
「そんな……まさか、なぜ」
サリヴィスのつぶやきに応えることもできず、袖で梢紗の顔をぬぐった。
美しい顔が血で汚れていてはいけない。
お前は、玖羅紗にも負けない輝きを持った、そんな男だったのだよ。
サリヴィスがそっと手拭いを差し出した。
それを受け取り、顔を拭き、そして髪を整えた。
「お前……なぜ俺を呼ばなかった……」
紗国の風が俺の髪をさらい、梢紗の銀色の髪に触れた。
「なぜ!」
俺の叫びが山道にこだました。
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