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第九章 永遠に
港町の秘密
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港町の調査から戻った跳光の長男・波大は、静かに書類を差し出した。
私はそれを開き、確かめる。
「……まさか……」
私は怒りのあまり震える手で書類を握りしめた。
「確かでございます」
「いや、そなたらを疑っているのではないよ」
落ち着かねばと、深呼吸し、そして波大を再び見た。
彼は私と同い年、跳光であることを周りに隠し、城の学び舎でも一緒に過ごした。
留学先のアオアイでも……だ。
幼馴染とでもいうか。
「波大を疑うはずない……だが……」
「このことが公になっていなかったのは、王子であったころの江利紗王が主導であったためです。王子の特権を使い秘匿していたのですよ」
「これは……もちろんだが……玖羅紗兄様も、それから、先代の父王も、知らなかったのだろうな?」
「ええ、おそらくは……あの方たちが、知りながらそのままにするはずはありません」
私は波大を見つめた。
「もう……取り返しがつかないではないか……こんな長きに渡り、このようなことをしていたとは……」
「いかがされますか」
「この門矢というのは……」
「ええ、あの門矢ですよ」
私はまたため息をついた。
江利紗王の母の実家・古伊家、その傍系にあたる門矢はそれほど歴史は古くはないが、商才があり、港町で発展しているなりあがりの貴族だ。
江利紗王との繋がりは血……しかし、いまのところそれだけだ。
確かに王からの指示がありやっていたこととせねば、単なる貴族の悪事を暴いただけとなる。
それではだめだ。
「江利紗王は、アオアイに発つ際、港町に行かれております、そこで会合を行いました」
私はちらりと波大を見る、彼は大きくうなずいた。
「見たのか?」
「はい、もちろん。そして聞きもしました」
「どのようなことを?」
「資金源としての人身売買、それを生産するための女たちの確保、それらの報告をお受けになっておられました」
「そうか……お前がそれを見たのだな?」
「はい、私が直接見ました」
「では、使えるな」
「はい」
波大はにやりと笑った。
少年時代、共に駆け回ったあのころのような笑顔に、私の心は少し救われた。
跳光家の者は決して紗国を裏切らない。
彼らは厳しく訓練をして、自分を律している。
そういう歴史から、彼らの見聞きしたものは何であれ証拠としての効力があるのだ。
ふと、脳裏に儚げな葵衣様が浮かぶ。
彼は江利紗王のお嫁様として界を渡ってきたお方だ。
行き違い、そして江利紗王のむごい仕打ち……それらを経て現在は阿羅国にかくまわれているが……
あの方はどうなるのだろうか。
魂を分け合った片割れが断罪されたとしたら……
顔を上げ、窓の外を見た。
きっと……阿羅彦様が守ってくださるに違いない。
そう思い、微笑んだ。
私はそれを開き、確かめる。
「……まさか……」
私は怒りのあまり震える手で書類を握りしめた。
「確かでございます」
「いや、そなたらを疑っているのではないよ」
落ち着かねばと、深呼吸し、そして波大を再び見た。
彼は私と同い年、跳光であることを周りに隠し、城の学び舎でも一緒に過ごした。
留学先のアオアイでも……だ。
幼馴染とでもいうか。
「波大を疑うはずない……だが……」
「このことが公になっていなかったのは、王子であったころの江利紗王が主導であったためです。王子の特権を使い秘匿していたのですよ」
「これは……もちろんだが……玖羅紗兄様も、それから、先代の父王も、知らなかったのだろうな?」
「ええ、おそらくは……あの方たちが、知りながらそのままにするはずはありません」
私は波大を見つめた。
「もう……取り返しがつかないではないか……こんな長きに渡り、このようなことをしていたとは……」
「いかがされますか」
「この門矢というのは……」
「ええ、あの門矢ですよ」
私はまたため息をついた。
江利紗王の母の実家・古伊家、その傍系にあたる門矢はそれほど歴史は古くはないが、商才があり、港町で発展しているなりあがりの貴族だ。
江利紗王との繋がりは血……しかし、いまのところそれだけだ。
確かに王からの指示がありやっていたこととせねば、単なる貴族の悪事を暴いただけとなる。
それではだめだ。
「江利紗王は、アオアイに発つ際、港町に行かれております、そこで会合を行いました」
私はちらりと波大を見る、彼は大きくうなずいた。
「見たのか?」
「はい、もちろん。そして聞きもしました」
「どのようなことを?」
「資金源としての人身売買、それを生産するための女たちの確保、それらの報告をお受けになっておられました」
「そうか……お前がそれを見たのだな?」
「はい、私が直接見ました」
「では、使えるな」
「はい」
波大はにやりと笑った。
少年時代、共に駆け回ったあのころのような笑顔に、私の心は少し救われた。
跳光家の者は決して紗国を裏切らない。
彼らは厳しく訓練をして、自分を律している。
そういう歴史から、彼らの見聞きしたものは何であれ証拠としての効力があるのだ。
ふと、脳裏に儚げな葵衣様が浮かぶ。
彼は江利紗王のお嫁様として界を渡ってきたお方だ。
行き違い、そして江利紗王のむごい仕打ち……それらを経て現在は阿羅国にかくまわれているが……
あの方はどうなるのだろうか。
魂を分け合った片割れが断罪されたとしたら……
顔を上げ、窓の外を見た。
きっと……阿羅彦様が守ってくださるに違いない。
そう思い、微笑んだ。
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