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第八章 紗国の悪夢
手術
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佐加江の指導の元、清潔な白い着物に着替え身を清めた。
二度も清浄魔法をかけ、念には念を入れる。
ベッドの上には眠るユーチェン、全裸の上に薄い布をかけただけの姿だ。
佐加江が処方した麻酔で眠る姿をじっと見た。
その布には、ちょうど腹部にあたる部分が切り取られていて、患部が見えるようになっていた。
「お前もできるようになってほしい、体の中身を見れるようになれば、医師としてかなり助かるのではないか?」
「阿羅彦様、そう簡単に……」
「いや、これはさほど魔力もいらない、お前はあの高嶺を越えて我が国に飛翔してきたのだ、魔力の問題はまずない」
「はい……」
佐加江はごくりとつばを飲み込んだ。
「まず、手をこうかざして」
俺は手のひらをユーチェンの体の少し上にかざした。
佐加江も同じようにする。
「そして、手に薄く魔力をまとわせ、その魔力を徐々に広げ、対象の体の中に浸透していくような感覚をもってみてくれ」
佐加江はうなずき、しばし集中した。
きつく目を閉じ、口も一文字に結び、真剣な表情の彼を見守る。
「……あ……!」
しばらくして佐加江が声をあげた。
「み、見えました……」
「そうか、良かった」
「はい! これは革命です! 今年のアオアイの医学集会で発表できますよ!」
「そうか、それは良いことだ……それで、この腹のあたりだ」
「はい!」
前からユーチェンを診ていた彼は、患部を的確にさっとスキャンし、そして、青ざめた顔を俺に向けた。
「これは……」
「いますぐここを切除せねばと、素人の俺でも思うが、どうだ?」
「ええ、その通りです。しかし」
「話した通りだ、やれる気がする。どうせここには外科手術を行う道具も設備もない、だから俺に任せろ」
「……」
うろたえる佐加江にうなずいて、俺はユーチェンに再び向き合った。
先ほど確認した腹に手をあて、ただれて変色した部分に集中する。
そこだけを切り取るイメージでじっと見つめ、そして魔力を慎重に注いでいく。
徐々に病変だけが周りから離れていく、根気強く、丁寧に分断した。
切り取った部分からは出血があるが、健康な場所には出血もない、それを確認した俺は、それだけを、腹の皮膚を切ることなく、自分の手の上に転移させた。
俺の手のひらに突如現れた切り取られたそれを見て、佐加江は腰を抜かさんばかりに驚いたが、すぐに横に置いてあった白い皿にそれを受け取り、蓋をした。
「阿羅彦様……」
佐加江は血まみれとなった俺の手を拭きとったあと、清浄魔法をかけた。
「確認させていただきます」
「ああ」
佐加江はすっと右手を出し、腹部に当てた。
「なんと……きれいに……こんなことありえません……しかも、出血すらしておりません、すでに切り取った部分が癒えているではありませんか……」
「ああ、そういうイメージを持って行ったからな」
「とにかく、これでユーチェン様はご回復されるに違いないでしょう」
「そうだが、こういう病はあれだろう、再発というものがあるかもしれないだろう? 今後もよく見てやってくれ」
「はい……」
佐加江は目を丸くして俺を見た。
「阿羅彦様、あなた様は医学をご存じではないなど、悪い冗談でしょう?」
「いや、俺は本当に何も知らないよ。ただ、感じたことをしているまでだ」
そうして微笑んで彼の肩を叩いた。
「後は頼むよ。目を覚ましたら百合彦に会わせてやってくれ」
「かしこまりました」
佐加江は頭を深く下げて、俺を見送った。
二度も清浄魔法をかけ、念には念を入れる。
ベッドの上には眠るユーチェン、全裸の上に薄い布をかけただけの姿だ。
佐加江が処方した麻酔で眠る姿をじっと見た。
その布には、ちょうど腹部にあたる部分が切り取られていて、患部が見えるようになっていた。
「お前もできるようになってほしい、体の中身を見れるようになれば、医師としてかなり助かるのではないか?」
「阿羅彦様、そう簡単に……」
「いや、これはさほど魔力もいらない、お前はあの高嶺を越えて我が国に飛翔してきたのだ、魔力の問題はまずない」
「はい……」
佐加江はごくりとつばを飲み込んだ。
「まず、手をこうかざして」
俺は手のひらをユーチェンの体の少し上にかざした。
佐加江も同じようにする。
「そして、手に薄く魔力をまとわせ、その魔力を徐々に広げ、対象の体の中に浸透していくような感覚をもってみてくれ」
佐加江はうなずき、しばし集中した。
きつく目を閉じ、口も一文字に結び、真剣な表情の彼を見守る。
「……あ……!」
しばらくして佐加江が声をあげた。
「み、見えました……」
「そうか、良かった」
「はい! これは革命です! 今年のアオアイの医学集会で発表できますよ!」
「そうか、それは良いことだ……それで、この腹のあたりだ」
「はい!」
前からユーチェンを診ていた彼は、患部を的確にさっとスキャンし、そして、青ざめた顔を俺に向けた。
「これは……」
「いますぐここを切除せねばと、素人の俺でも思うが、どうだ?」
「ええ、その通りです。しかし」
「話した通りだ、やれる気がする。どうせここには外科手術を行う道具も設備もない、だから俺に任せろ」
「……」
うろたえる佐加江にうなずいて、俺はユーチェンに再び向き合った。
先ほど確認した腹に手をあて、ただれて変色した部分に集中する。
そこだけを切り取るイメージでじっと見つめ、そして魔力を慎重に注いでいく。
徐々に病変だけが周りから離れていく、根気強く、丁寧に分断した。
切り取った部分からは出血があるが、健康な場所には出血もない、それを確認した俺は、それだけを、腹の皮膚を切ることなく、自分の手の上に転移させた。
俺の手のひらに突如現れた切り取られたそれを見て、佐加江は腰を抜かさんばかりに驚いたが、すぐに横に置いてあった白い皿にそれを受け取り、蓋をした。
「阿羅彦様……」
佐加江は血まみれとなった俺の手を拭きとったあと、清浄魔法をかけた。
「確認させていただきます」
「ああ」
佐加江はすっと右手を出し、腹部に当てた。
「なんと……きれいに……こんなことありえません……しかも、出血すらしておりません、すでに切り取った部分が癒えているではありませんか……」
「ああ、そういうイメージを持って行ったからな」
「とにかく、これでユーチェン様はご回復されるに違いないでしょう」
「そうだが、こういう病はあれだろう、再発というものがあるかもしれないだろう? 今後もよく見てやってくれ」
「はい……」
佐加江は目を丸くして俺を見た。
「阿羅彦様、あなた様は医学をご存じではないなど、悪い冗談でしょう?」
「いや、俺は本当に何も知らないよ。ただ、感じたことをしているまでだ」
そうして微笑んで彼の肩を叩いた。
「後は頼むよ。目を覚ましたら百合彦に会わせてやってくれ」
「かしこまりました」
佐加江は頭を深く下げて、俺を見送った。
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