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第七章 阿羅国という国
訃報
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ある日の夕暮れ、それは突然の知らせだった。
息を切らして寝ずに飛翔してきたという玲陽の部下は、転がるようにして執務室に来た。
「阿羅彦様!」
俺と玲陽、そして執務室の助手たちは一斉に手を止め、汗と埃で真っ黒に汚れた飛翔隊
を見つめた。
「紗国の紅葉様が崩御なさいました!」
「は?」
俺は一瞬、その言葉の意味がかみ砕けずに、呆然としたまま動けなかった。
しかし、玲陽は違った、即座にユーチェンを呼びにやらせ、そして飛翔隊から詳細を聞き出してくれた。
紅葉は、船の転覆に巻き込まれ、儚く逝ったということだった。
そんな馬鹿なと、俺がつぶやくと、そのあとを追うように紗国王も危ない状態だと言う。
「船……この世界で船の事故は、よくあることか」
「阿羅彦様……どんなものにも事故はつきものです、確率の問題であれば、それほど多くはなくとも、全く避けられるものではないでしょうが」
そこまで言って、玲陽は一息ついた。
「しかし、王族が乗る船がこのようになることは……あまりありませんね……」
その時、走ってきたのだろう、悲壮な顔でユーチェンが扉を開けて入ってきた。
「ほんとうですか!」
「ああ、そのようだ」
「紅葉さまだけですか?それとも」
「紗国王も危篤のようだな」
ああ……とペタリと床に座り込んだユーチェンの腕を引き、助手らが椅子に座らせる。
「ユーチェン、玲陽、支度をせよ。急ぎ紗国へ参る」
「ハッ」
玲陽はすぐに書類作成にと入り、人数を確かめられた。
俺は総勢20名での弔問とした。
クレイダ、エクトルももちろんだ。
俺は、引き出しを開け、紅葉からもらった最後の手紙を開いた。
季節が変わるごとに送られてくる贈り物と手紙。
俺からももちろん返事はしていた。
花の香がまだ残る便せんを開くと、小さな字が並んでいる、丁寧な文字だ、性格があらわれているのだろう。
小さなかわいい顔を思い出した、結局一度しか会えなかった。
俺のことを心配して『僕のことを友として、何かあれば頼ってください』そう、言ってくれた、まだ少年の君。
約束通り、俺の秘密を墓に持って行ってくれた、最愛の人にも俺の秘密はおそらく打ち明けていないだろう。
かわいそうなことをした。
愛する人に秘密を持たせてしまった、真実を言えない苦しみを与えてしまった。
同じ、日本人としてこの世界で出会えた稀有な存在だったのに。
俺は彼に何をしてあげられただろうか?
水の事故は苦しむと聞く、どうか、せめて魂は安らかに……
暮れていき、闇色が空を支配しようとしている阿羅国の町を眺め、俺の心は深く沈んで行った。
息を切らして寝ずに飛翔してきたという玲陽の部下は、転がるようにして執務室に来た。
「阿羅彦様!」
俺と玲陽、そして執務室の助手たちは一斉に手を止め、汗と埃で真っ黒に汚れた飛翔隊
を見つめた。
「紗国の紅葉様が崩御なさいました!」
「は?」
俺は一瞬、その言葉の意味がかみ砕けずに、呆然としたまま動けなかった。
しかし、玲陽は違った、即座にユーチェンを呼びにやらせ、そして飛翔隊から詳細を聞き出してくれた。
紅葉は、船の転覆に巻き込まれ、儚く逝ったということだった。
そんな馬鹿なと、俺がつぶやくと、そのあとを追うように紗国王も危ない状態だと言う。
「船……この世界で船の事故は、よくあることか」
「阿羅彦様……どんなものにも事故はつきものです、確率の問題であれば、それほど多くはなくとも、全く避けられるものではないでしょうが」
そこまで言って、玲陽は一息ついた。
「しかし、王族が乗る船がこのようになることは……あまりありませんね……」
その時、走ってきたのだろう、悲壮な顔でユーチェンが扉を開けて入ってきた。
「ほんとうですか!」
「ああ、そのようだ」
「紅葉さまだけですか?それとも」
「紗国王も危篤のようだな」
ああ……とペタリと床に座り込んだユーチェンの腕を引き、助手らが椅子に座らせる。
「ユーチェン、玲陽、支度をせよ。急ぎ紗国へ参る」
「ハッ」
玲陽はすぐに書類作成にと入り、人数を確かめられた。
俺は総勢20名での弔問とした。
クレイダ、エクトルももちろんだ。
俺は、引き出しを開け、紅葉からもらった最後の手紙を開いた。
季節が変わるごとに送られてくる贈り物と手紙。
俺からももちろん返事はしていた。
花の香がまだ残る便せんを開くと、小さな字が並んでいる、丁寧な文字だ、性格があらわれているのだろう。
小さなかわいい顔を思い出した、結局一度しか会えなかった。
俺のことを心配して『僕のことを友として、何かあれば頼ってください』そう、言ってくれた、まだ少年の君。
約束通り、俺の秘密を墓に持って行ってくれた、最愛の人にも俺の秘密はおそらく打ち明けていないだろう。
かわいそうなことをした。
愛する人に秘密を持たせてしまった、真実を言えない苦しみを与えてしまった。
同じ、日本人としてこの世界で出会えた稀有な存在だったのに。
俺は彼に何をしてあげられただろうか?
水の事故は苦しむと聞く、どうか、せめて魂は安らかに……
暮れていき、闇色が空を支配しようとしている阿羅国の町を眺め、俺の心は深く沈んで行った。
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