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第七章 阿羅国という国
草原の民
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雪が降り始めた。
阿羅国の冬は厳しい、そびえ立つ周りの高い山から冷えた風が吹く。
寂し気な白に覆われ始めてから数日後、草原の民『イラフェ族』が大きな魔馬に乗って現れた。
アオアイで「俺に仕えたい」とそう言って俺に頭を下げた男の名はサリヴィス。
どうどうと響き渡る音がし、何事かと城の外を見ていると、いきなり森から出てきたその集団は、きちんと整列し足並みをそろえており、魔馬を操る能力の高さに驚いた。
魔馬はそこかしこにあるものではない。
たいていは不可侵の森深くに生息し、調教も困難だ。
彼らは草原を自由に動き定住しなかったが、移動に適した天幕、料理、猟、そして移動手段として魔馬を飼いならしていた。
赤色に光る魔馬の群は遠くから見ても人に恐怖を覚えさせる。
それはそこらの獣であってもそうだ。
彼らはいつもの草原を駆け巡る姿そのままで、なんと不可侵の森を駆け抜けて来たという。
「飛翔では馬を置いていくしかなかったので、馬を駆るしかなく、遅くなりました、我が君」
その旅の困難さは俺が一番わかる。
特にあの山を飛翔せずに徒歩で越えたとなると、誰一人として欠けずにここに到着したことだけでも奇跡だ。
サリヴィスは優雅にマントを翻し、膝を折り地に足を付けた。
さっそうとしたその様がとても凛々しく俺は気に入った。
「もう少し、時間がかかるのではないかと思っていたぞ、ずいぶんと早い到着だった、しかしギリギリだったな、雪がこれよりも降り積もっていたら、もっと困難だっただろう」
「ええ、いかに魔馬とて無理だったかもしれませんな」
ニカっと歯を出して笑ったサリヴィスは、総勢159人の草原の民を両手を広げて俺に差し出した。
「皆、あなたに会いたくて、ここまで文句も言わずついてきてくれた。彼らは皆優秀だ、剣も弓も。そして森の知識もある」
俺は大きく頷き、頭を垂れた皆を見渡した。
「顔を上げてくれ」
俺の言葉にパッと揃ったタイミングでこちらを見上げる彼らは、ほとんどが浅黒い肌に緑の目に白い髪だった、独特の分厚い毛皮の装束を纏い、背には弓矢を、腰には剣を差している。
「我らは、何代にも渡ってずっと、主を探してきた。その主のためならば、命も投げ出す。どうか、我らを受け入れてほしい」
サリヴィスのその言葉に、草原の民は皆、もう一度頭を下げた。
「君たちを受け入れるのはもう、決まっていたことだよ、だから、いつまでも頭をさげていないで、楽にするんだ。今宵は歓迎の宴といこう」
おぉという声がさざ波のように広がる。
屈強な草原の民は、クレイダやエクトルと同じぐらい体格が良く、並んでも全く違和感がない。
俺は、サリヴィスを手招きした。
白い歯を出して微笑んだサリヴィスは、悠々と俺のそばまで来た。
「紹介しよう、俺の右腕の玲陽、アオアイで会ったかもしれんな」
「ええ、あの時ご挨拶はいたしましたね」
玲陽も頬を染めて嬉しそうに微笑む。
「玲陽殿にはこれからも仲良くしてもらいたい」
二人は固い握手をした。
「それから、クレイダとエクトル、この二人は実は人とは違う」
「うむ、感じてはいたが……やはりそうか」
サリヴィスは大きな顎に太い指を指をやり、考え込んだ。
「魔物……と言っては失礼か」
「いや、アタシらは魔物だよ、だが、阿羅国の一員として生きている。どうか理解してもらいたい」
「俺たちはそんなことは気にしない。あなた方が何者であろうと、仲間は仲間だ、そうだろう?」
クレイダとサリヴィスは音を立てて手をたたき合い、握手した、なんとも豪快な仕草だが、彼らに合っている。
エクトルもそれに加わり、笑みを交わしあった。
「あとは、エルフのアレクシス、彼は私の補佐だ。そして、俺の執務の手伝いをしている文官たち、彼らも魔物だ。そして、右手に並んでいるのが、王妃ユーチェン率いる織物などを担当している女性たち、多くは人だ。そして左手にいるのは、牧畜や農業を担当している者、長はクレイダだ」
サリヴィスは彼らを丁寧に見渡し、大きく何度も頷いた。
「さすが阿羅彦様、このように分け隔てなく能力を認め、国を大きくされている。
我らも、国のお役に立てるよう、最大限努力する」
草原の民はまた、一斉に頭を垂れた。
「歓迎する、さあ、皆、立ち上がって宴の準備を」
皆の笑顔で寒さも吹き飛ぶ、そんな日となった。
阿羅国の冬は厳しい、そびえ立つ周りの高い山から冷えた風が吹く。
寂し気な白に覆われ始めてから数日後、草原の民『イラフェ族』が大きな魔馬に乗って現れた。
アオアイで「俺に仕えたい」とそう言って俺に頭を下げた男の名はサリヴィス。
どうどうと響き渡る音がし、何事かと城の外を見ていると、いきなり森から出てきたその集団は、きちんと整列し足並みをそろえており、魔馬を操る能力の高さに驚いた。
魔馬はそこかしこにあるものではない。
たいていは不可侵の森深くに生息し、調教も困難だ。
彼らは草原を自由に動き定住しなかったが、移動に適した天幕、料理、猟、そして移動手段として魔馬を飼いならしていた。
赤色に光る魔馬の群は遠くから見ても人に恐怖を覚えさせる。
それはそこらの獣であってもそうだ。
彼らはいつもの草原を駆け巡る姿そのままで、なんと不可侵の森を駆け抜けて来たという。
「飛翔では馬を置いていくしかなかったので、馬を駆るしかなく、遅くなりました、我が君」
その旅の困難さは俺が一番わかる。
特にあの山を飛翔せずに徒歩で越えたとなると、誰一人として欠けずにここに到着したことだけでも奇跡だ。
サリヴィスは優雅にマントを翻し、膝を折り地に足を付けた。
さっそうとしたその様がとても凛々しく俺は気に入った。
「もう少し、時間がかかるのではないかと思っていたぞ、ずいぶんと早い到着だった、しかしギリギリだったな、雪がこれよりも降り積もっていたら、もっと困難だっただろう」
「ええ、いかに魔馬とて無理だったかもしれませんな」
ニカっと歯を出して笑ったサリヴィスは、総勢159人の草原の民を両手を広げて俺に差し出した。
「皆、あなたに会いたくて、ここまで文句も言わずついてきてくれた。彼らは皆優秀だ、剣も弓も。そして森の知識もある」
俺は大きく頷き、頭を垂れた皆を見渡した。
「顔を上げてくれ」
俺の言葉にパッと揃ったタイミングでこちらを見上げる彼らは、ほとんどが浅黒い肌に緑の目に白い髪だった、独特の分厚い毛皮の装束を纏い、背には弓矢を、腰には剣を差している。
「我らは、何代にも渡ってずっと、主を探してきた。その主のためならば、命も投げ出す。どうか、我らを受け入れてほしい」
サリヴィスのその言葉に、草原の民は皆、もう一度頭を下げた。
「君たちを受け入れるのはもう、決まっていたことだよ、だから、いつまでも頭をさげていないで、楽にするんだ。今宵は歓迎の宴といこう」
おぉという声がさざ波のように広がる。
屈強な草原の民は、クレイダやエクトルと同じぐらい体格が良く、並んでも全く違和感がない。
俺は、サリヴィスを手招きした。
白い歯を出して微笑んだサリヴィスは、悠々と俺のそばまで来た。
「紹介しよう、俺の右腕の玲陽、アオアイで会ったかもしれんな」
「ええ、あの時ご挨拶はいたしましたね」
玲陽も頬を染めて嬉しそうに微笑む。
「玲陽殿にはこれからも仲良くしてもらいたい」
二人は固い握手をした。
「それから、クレイダとエクトル、この二人は実は人とは違う」
「うむ、感じてはいたが……やはりそうか」
サリヴィスは大きな顎に太い指を指をやり、考え込んだ。
「魔物……と言っては失礼か」
「いや、アタシらは魔物だよ、だが、阿羅国の一員として生きている。どうか理解してもらいたい」
「俺たちはそんなことは気にしない。あなた方が何者であろうと、仲間は仲間だ、そうだろう?」
クレイダとサリヴィスは音を立てて手をたたき合い、握手した、なんとも豪快な仕草だが、彼らに合っている。
エクトルもそれに加わり、笑みを交わしあった。
「あとは、エルフのアレクシス、彼は私の補佐だ。そして、俺の執務の手伝いをしている文官たち、彼らも魔物だ。そして、右手に並んでいるのが、王妃ユーチェン率いる織物などを担当している女性たち、多くは人だ。そして左手にいるのは、牧畜や農業を担当している者、長はクレイダだ」
サリヴィスは彼らを丁寧に見渡し、大きく何度も頷いた。
「さすが阿羅彦様、このように分け隔てなく能力を認め、国を大きくされている。
我らも、国のお役に立てるよう、最大限努力する」
草原の民はまた、一斉に頭を垂れた。
「歓迎する、さあ、皆、立ち上がって宴の準備を」
皆の笑顔で寒さも吹き飛ぶ、そんな日となった。
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