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第七章 阿羅国という国
阿羅国の春
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エルフの里に行ってから1年後…… その日は晴れて、そしてようやく雪解けの季節を実感していた。
「阿羅彦様」
呼びかけられて、顔をあげ手を止める。
一抱えのほどの籠を持った農園の者が、土がついたままの野菜を持ってにこやかに笑っていた。
「もうそんな時期か」
「はい!」
雪解けとともに芽を出す阿羅国の薬草がある、それはさっぱりとした味わいの山菜で、茹でて食べてもよいし、天ぷらでもよい。
毎年この時期の楽しみとして、皆で分かち合っているのだ。
「それでは今夜は恒例の夜会ですね」
「ああ、それもいいな。ちょうど玲陽も帰っているだろう?」
「はい、先ほど到着され、荷物の整理をしていらっしゃるようですよ」
「そうか、ではそうしてくれ」
「はい!」
執務室で助手をしてくれている3人の仲間が、書類整理の手を止め、こちらを見て微笑んだ。
「阿羅彦様は天ぷらがお好きですね」
「ああ、あれは本当にうまい、昔から好物なのだ」
「そういえば、念願の米ですが、紗国のユーチェン様のご実家より『種もみ』が到着したようですよ、この目録にございます」
「そうか!やっとか!」
「はい、稲作のことを知っている者が何人かおります。クレイダ様の牧場の横に、田を作るのが良いかもしれないということでした」
「あのあたりなら、水を引くのも容易だな」
「ええ、なんでも水はけのよい土なので、適しているとか」
俺は頷き、その目録を手に取った。
「昨年は麦がよく取れましたから、米も豊作になるとよいですね!」
助手らはくるくるとよく働き、楽しそうに俺の好みのことを知りたがった。
この者らは人ではなく魔物だ、クレイダの一族は結局はほとんどがこの阿羅国へと移り住んでくれたのだ。
その際に、他の魔物も呼び込んでくれた。
彼らは姿の異形なものもいるが、結局はそれほど人と変わらない、付き合えばそれがわかった。
ユーチェンなども慣れたもので、今更何を見ても驚かないし、子供たちもすぐに慣れ親しんだ。
変わった国だと、よその者は言うだろう。
異形の者を受け入れない者も、大勢いるだろう。
だが、俺は彼らを守る砦とならなければいけない。
かならず、守って見せる。
その時、扉が静かに開き、衣擦れの音がした。
「ああ、玲陽か」
「はい、阿羅彦様、先ほど戻りまして、荷をほどき、着替えをしてまいりました」
「ご苦労だった。世界中を回ったのだ、苦労したことだろう」
「いえ、そのようなことはありません。阿羅国のためにすこしでもと、努力いたしました、成果はまずますではないかと、思うのですが」
そう言って、微笑んだ。
元々彫刻のように美しかった玲陽は、エルフの里で見た時よりもさらに痩せ、青年から大人の顔となった気がする。
「無理を、したのでは?痩せたな」
「いえ、痩せてはおりませんが」
そう言って、腹を触る仕草をした。
「ちゃんと食べておるのか?」
「もちろんですよ、ああ、もしかして」
「なんだ?」
「1年前に立ち寄った実家で、久しぶりに剣の稽古をつけてもらいましてね」
「ほう」
「子供のころ、あこがれていた父の護衛なのです。彼と久しぶりに立ち会って、なんと申しますか、少し火がつきましてね」
そう言って、屈託のない笑顔で笑った。
「なるほど、それで、研鑽しておったのだな、旅の最中でも」
「はい、そうです」
俺は頼もしくなった玲陽を見て、その顔から憂いがなくなったことに気づいた。
「……父と和解したのか?」
「はい」
詳しくはここでは話せないが……という顔をした。
「良かったな」
俺は玲陽に微笑んだ。
「阿羅彦様」
呼びかけられて、顔をあげ手を止める。
一抱えのほどの籠を持った農園の者が、土がついたままの野菜を持ってにこやかに笑っていた。
「もうそんな時期か」
「はい!」
雪解けとともに芽を出す阿羅国の薬草がある、それはさっぱりとした味わいの山菜で、茹でて食べてもよいし、天ぷらでもよい。
毎年この時期の楽しみとして、皆で分かち合っているのだ。
「それでは今夜は恒例の夜会ですね」
「ああ、それもいいな。ちょうど玲陽も帰っているだろう?」
「はい、先ほど到着され、荷物の整理をしていらっしゃるようですよ」
「そうか、ではそうしてくれ」
「はい!」
執務室で助手をしてくれている3人の仲間が、書類整理の手を止め、こちらを見て微笑んだ。
「阿羅彦様は天ぷらがお好きですね」
「ああ、あれは本当にうまい、昔から好物なのだ」
「そういえば、念願の米ですが、紗国のユーチェン様のご実家より『種もみ』が到着したようですよ、この目録にございます」
「そうか!やっとか!」
「はい、稲作のことを知っている者が何人かおります。クレイダ様の牧場の横に、田を作るのが良いかもしれないということでした」
「あのあたりなら、水を引くのも容易だな」
「ええ、なんでも水はけのよい土なので、適しているとか」
俺は頷き、その目録を手に取った。
「昨年は麦がよく取れましたから、米も豊作になるとよいですね!」
助手らはくるくるとよく働き、楽しそうに俺の好みのことを知りたがった。
この者らは人ではなく魔物だ、クレイダの一族は結局はほとんどがこの阿羅国へと移り住んでくれたのだ。
その際に、他の魔物も呼び込んでくれた。
彼らは姿の異形なものもいるが、結局はそれほど人と変わらない、付き合えばそれがわかった。
ユーチェンなども慣れたもので、今更何を見ても驚かないし、子供たちもすぐに慣れ親しんだ。
変わった国だと、よその者は言うだろう。
異形の者を受け入れない者も、大勢いるだろう。
だが、俺は彼らを守る砦とならなければいけない。
かならず、守って見せる。
その時、扉が静かに開き、衣擦れの音がした。
「ああ、玲陽か」
「はい、阿羅彦様、先ほど戻りまして、荷をほどき、着替えをしてまいりました」
「ご苦労だった。世界中を回ったのだ、苦労したことだろう」
「いえ、そのようなことはありません。阿羅国のためにすこしでもと、努力いたしました、成果はまずますではないかと、思うのですが」
そう言って、微笑んだ。
元々彫刻のように美しかった玲陽は、エルフの里で見た時よりもさらに痩せ、青年から大人の顔となった気がする。
「無理を、したのでは?痩せたな」
「いえ、痩せてはおりませんが」
そう言って、腹を触る仕草をした。
「ちゃんと食べておるのか?」
「もちろんですよ、ああ、もしかして」
「なんだ?」
「1年前に立ち寄った実家で、久しぶりに剣の稽古をつけてもらいましてね」
「ほう」
「子供のころ、あこがれていた父の護衛なのです。彼と久しぶりに立ち会って、なんと申しますか、少し火がつきましてね」
そう言って、屈託のない笑顔で笑った。
「なるほど、それで、研鑽しておったのだな、旅の最中でも」
「はい、そうです」
俺は頼もしくなった玲陽を見て、その顔から憂いがなくなったことに気づいた。
「……父と和解したのか?」
「はい」
詳しくはここでは話せないが……という顔をした。
「良かったな」
俺は玲陽に微笑んだ。
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