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第七章 阿羅国という国
エルフの長1
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エルフの里は圧巻だった。
雪を頂いてそびえる美しい山から、滝が一筋流れ、あたりを照らす光がそれに虹をかけている。
白亜の瀟洒な建物は連なるが、時折大木が出現し、その上にもツリーハウスが存在する、これぞファンタジーと言った具合だ。
さすがに瞠目し、一瞬息をするのも忘れ、それに見入った。
一体どのくらいの間、ここで彼らは暮らしているのか。
厳重に張られた結界の中で、彼らは守られ、そして穏やかに暮らしているのだろう。
行きかう者、我らを迎える者、皆が屈託のない笑顔を見せてくれている。
「長はこちらでお待ちです。阿羅彦様」
アロイスは優雅な動きで一礼し、俺たちを神殿に招き入れた。
人の背丈の3倍もあろうかという扉は音もなく開き、我々は歩を進め、中に入る。
その扉とて、彫刻が素晴らしい。
その一つ一つに圧倒され、言葉もない。
「ようこそおいでいただいた、我らが出向くよりも、お呼びしたほうが早いのではと、そう思いましてな」
広い謁見の間、遥か遠く玉座に座る金色に輝くエルフがいた。
「私が阿羅国の王、阿羅彦と申します。このように歓待され、胸を熱くいたしております」
「ふふ……うれしいことを言う。そこにおる我が甥がな、柄にもなく阿羅彦殿を褒めるのだ」
そして晴れやかに破顔した。
皺ひとつない美しい姿の長は、年齢不詳だが、笑顔は好々爺のようだった。
「して……我は阿羅彦殿と二人で話したい。アロイス、頼むぞ」
「了解いたしました」
アロイスは、俺の後ろで片膝をつき頭を垂れていたクレイダ、エクトル、玲陽、そしてアレクシスを連れて扉の向こうに消えた。
俺は遠くの長をじっと眺めた。
長は、誰もいなくなってすぐに立ち上がり、玉座を降り、すぐそばまでゆっくりと歩いてきた。
「すまぬな。人払いなど。しかし、これは阿羅彦殿のことを思ってのこと」
「ええ、お心遣い感謝いたします」
「少し歩かぬか」
「仰せのままに」
俺たちは並び立ち、ゆっくりと歩き出した。
謁見の間から出て、長い廊下を歩く。
壁はなく、両側に美しい庭が広がり、見たことのない花が咲き乱れている。
その様をなんとなく見ていると、エルフの長は静かな声で話し出した。
「甥の言うことを信じるとすると、そなたはカンビオンなのか?」
「カンビオン……」
「淫魔が人に産ませた子をそういうのだ。半分人だが半分魔物。つまり、そなたと同じだな」
「今の状態はそうかもしれませんが、私の実の両親は両方人です。私は自分がカンビオンとは思いません」
「なるほど、しかし、そなたのその光り輝く美しさ、にじみ出る知性。威厳、どれをとっても、カンビオンの特徴そのままだな」
「しかし、私の魂を作り替えたジルは、私に言いました。生まれた子が完全な淫魔になるよう、魂から人の部分を除き完全に淫魔の魂を持つ者になるよう、作り替えると……その話通りならば、カンビオンはそもそもいなかったのでは?」
「そうか……なるほどのう」
長は顎に手をやり、しばらく黙って庭を眺めた。
俺もおなじく庭を見る。
カンビオン……俺はその種を初めて聞いた。
人ても淫魔でもない者が生まれることもあったというのか。
その者はどんな生涯をたどったのだろうか?と、どこか不安に感じて空を眺めた。
雪を頂いてそびえる美しい山から、滝が一筋流れ、あたりを照らす光がそれに虹をかけている。
白亜の瀟洒な建物は連なるが、時折大木が出現し、その上にもツリーハウスが存在する、これぞファンタジーと言った具合だ。
さすがに瞠目し、一瞬息をするのも忘れ、それに見入った。
一体どのくらいの間、ここで彼らは暮らしているのか。
厳重に張られた結界の中で、彼らは守られ、そして穏やかに暮らしているのだろう。
行きかう者、我らを迎える者、皆が屈託のない笑顔を見せてくれている。
「長はこちらでお待ちです。阿羅彦様」
アロイスは優雅な動きで一礼し、俺たちを神殿に招き入れた。
人の背丈の3倍もあろうかという扉は音もなく開き、我々は歩を進め、中に入る。
その扉とて、彫刻が素晴らしい。
その一つ一つに圧倒され、言葉もない。
「ようこそおいでいただいた、我らが出向くよりも、お呼びしたほうが早いのではと、そう思いましてな」
広い謁見の間、遥か遠く玉座に座る金色に輝くエルフがいた。
「私が阿羅国の王、阿羅彦と申します。このように歓待され、胸を熱くいたしております」
「ふふ……うれしいことを言う。そこにおる我が甥がな、柄にもなく阿羅彦殿を褒めるのだ」
そして晴れやかに破顔した。
皺ひとつない美しい姿の長は、年齢不詳だが、笑顔は好々爺のようだった。
「して……我は阿羅彦殿と二人で話したい。アロイス、頼むぞ」
「了解いたしました」
アロイスは、俺の後ろで片膝をつき頭を垂れていたクレイダ、エクトル、玲陽、そしてアレクシスを連れて扉の向こうに消えた。
俺は遠くの長をじっと眺めた。
長は、誰もいなくなってすぐに立ち上がり、玉座を降り、すぐそばまでゆっくりと歩いてきた。
「すまぬな。人払いなど。しかし、これは阿羅彦殿のことを思ってのこと」
「ええ、お心遣い感謝いたします」
「少し歩かぬか」
「仰せのままに」
俺たちは並び立ち、ゆっくりと歩き出した。
謁見の間から出て、長い廊下を歩く。
壁はなく、両側に美しい庭が広がり、見たことのない花が咲き乱れている。
その様をなんとなく見ていると、エルフの長は静かな声で話し出した。
「甥の言うことを信じるとすると、そなたはカンビオンなのか?」
「カンビオン……」
「淫魔が人に産ませた子をそういうのだ。半分人だが半分魔物。つまり、そなたと同じだな」
「今の状態はそうかもしれませんが、私の実の両親は両方人です。私は自分がカンビオンとは思いません」
「なるほど、しかし、そなたのその光り輝く美しさ、にじみ出る知性。威厳、どれをとっても、カンビオンの特徴そのままだな」
「しかし、私の魂を作り替えたジルは、私に言いました。生まれた子が完全な淫魔になるよう、魂から人の部分を除き完全に淫魔の魂を持つ者になるよう、作り替えると……その話通りならば、カンビオンはそもそもいなかったのでは?」
「そうか……なるほどのう」
長は顎に手をやり、しばらく黙って庭を眺めた。
俺もおなじく庭を見る。
カンビオン……俺はその種を初めて聞いた。
人ても淫魔でもない者が生まれることもあったというのか。
その者はどんな生涯をたどったのだろうか?と、どこか不安に感じて空を眺めた。
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