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第七章 阿羅国という国
それぞれの役目
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アレクシスが里に出かけた翌日は、交易品をまとめあげたエクトルが、自ら飛翔隊を率いて紗国へと出発する日だった。
雪が降り続く阿羅国の冬だが、その日は奇跡的に晴れていた。
城の広場には、大きな荷物がいくつも並べられ、その一つ一つが丁寧に梱包されている。
彼ら魔族にとってはこれを運ぶことはさほど難しくないようだ。
見ると、ユーチェンとクレイダが、小さめの籠に真綿を敷き詰め、防水布を張って、さらに藁をどさどさと入れていく。
「何を入れようとしている?」
俺が声をかけると、クレイダが顔を上げた。
「ガッコだよ、アタシ気づいたんだ、どの国でも料理は確かにおいしかったが、卵や鶏肉にどうもコクがない、なんでだろうと考えてユーチェンと話してたらわかったんだ」
「このガッコという鶏を、私たち、知らないのですよ」
「なるほど……もしやガッコは不可侵の森の中だけに生きる獣なのか?」
「ああ、そうだと気づいてな。ならば、これを特産品として出荷してみようということだよ。まずは紗国の王に献上しようと思ってな」
エクトルは、姉のそばに寄り、10匹のガッコを籠に入れるのを手伝った。
「こいつらは寒さに強いから、凍死はしないだろうが……心配だ」
籠に収められたガッコたちをじっと見つめ、クレイダは心の底から心配げにそう呟いた。
「大丈夫だよ姉上」
エクトルは、道中も彼らのことを気に掛けると姉に伝え、肩を叩いている。
「紗国王は、我々から届く荷をとても楽しみにしておられるようだ。エクトル、頼んだよ」
「はい……阿羅彦様」
飛翔隊はみな、角を切った個所を隠すように伸ばした髪を、ゆるく結わえ、さらに頭巾をかぶり、その上から真綿の入った長いコートを着込んでいる。
その、魔族だけで構成された彼らは、屈強の戦士に見え、見るものを威圧してしまう。
しかし、よく見ると彼らの瞳は優しい光を灯している。
他国の者も、ぜひとも彼らの心根の優しさに気づいてほしいものだ。
「エクトル、気取られるなよ」
俺は、エクトルが魔族だと気づかれないよう、それだけを祈っていた。
彼はこの度、王族に一人で対峙する。
阿羅国からの品を紗国王に献上する役目だ。
「はい、必ず、玲陽様のように阿羅彦様のお役に立ってまいります。私が魔族だということは、角を切った時点で捨てたこと。他の人にはまずわかりません。魔の気配を隠すことには長けておりますから」
そう言って深くうなずき、そして、飛翔隊全体に号令をかけた。
皆がそれぞれの綱を肩にかけた、その綱が交易品の入った箱につながっているのだ。
「エクトル、気を付けて行ってこい」
「ハッ!」
飛翔隊は、全員がカッっと音を出して両足を引き締め、俺に敬礼をした。
ゆっくりとエクトルを先頭に真上に上がっていく。
空の上でもう一度陣形を取り直し、綱を引き締めた、そしてエクトルの号令がもう一度響き渡るとともに、猛烈な速さで飛翔して行った。
ここからまずあの急峻な山を越えなければならない。
加速する必要があるのだ。
俺はぐんぐん遠ざかる彼らの頼もしい姿を、いつまでも見守っていた。
雪が降り続く阿羅国の冬だが、その日は奇跡的に晴れていた。
城の広場には、大きな荷物がいくつも並べられ、その一つ一つが丁寧に梱包されている。
彼ら魔族にとってはこれを運ぶことはさほど難しくないようだ。
見ると、ユーチェンとクレイダが、小さめの籠に真綿を敷き詰め、防水布を張って、さらに藁をどさどさと入れていく。
「何を入れようとしている?」
俺が声をかけると、クレイダが顔を上げた。
「ガッコだよ、アタシ気づいたんだ、どの国でも料理は確かにおいしかったが、卵や鶏肉にどうもコクがない、なんでだろうと考えてユーチェンと話してたらわかったんだ」
「このガッコという鶏を、私たち、知らないのですよ」
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エクトルは、姉のそばに寄り、10匹のガッコを籠に入れるのを手伝った。
「こいつらは寒さに強いから、凍死はしないだろうが……心配だ」
籠に収められたガッコたちをじっと見つめ、クレイダは心の底から心配げにそう呟いた。
「大丈夫だよ姉上」
エクトルは、道中も彼らのことを気に掛けると姉に伝え、肩を叩いている。
「紗国王は、我々から届く荷をとても楽しみにしておられるようだ。エクトル、頼んだよ」
「はい……阿羅彦様」
飛翔隊はみな、角を切った個所を隠すように伸ばした髪を、ゆるく結わえ、さらに頭巾をかぶり、その上から真綿の入った長いコートを着込んでいる。
その、魔族だけで構成された彼らは、屈強の戦士に見え、見るものを威圧してしまう。
しかし、よく見ると彼らの瞳は優しい光を灯している。
他国の者も、ぜひとも彼らの心根の優しさに気づいてほしいものだ。
「エクトル、気取られるなよ」
俺は、エクトルが魔族だと気づかれないよう、それだけを祈っていた。
彼はこの度、王族に一人で対峙する。
阿羅国からの品を紗国王に献上する役目だ。
「はい、必ず、玲陽様のように阿羅彦様のお役に立ってまいります。私が魔族だということは、角を切った時点で捨てたこと。他の人にはまずわかりません。魔の気配を隠すことには長けておりますから」
そう言って深くうなずき、そして、飛翔隊全体に号令をかけた。
皆がそれぞれの綱を肩にかけた、その綱が交易品の入った箱につながっているのだ。
「エクトル、気を付けて行ってこい」
「ハッ!」
飛翔隊は、全員がカッっと音を出して両足を引き締め、俺に敬礼をした。
ゆっくりとエクトルを先頭に真上に上がっていく。
空の上でもう一度陣形を取り直し、綱を引き締めた、そしてエクトルの号令がもう一度響き渡るとともに、猛烈な速さで飛翔して行った。
ここからまずあの急峻な山を越えなければならない。
加速する必要があるのだ。
俺はぐんぐん遠ざかる彼らの頼もしい姿を、いつまでも見守っていた。
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