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第六章 紗国
紗国王3
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玲陽が特注で準備してきてくれた馬車は、一国の王が乗るものにふさわしい物だと聞いていた。
実際アオアイで何度か国賓用の馬車に乗ったが、それと同等に思ったし、俺には十分美しく立派だと思ったものだ。
しかし、目の前にある紗国王の白く輝く馬車を見て、思わず息を呑んだ。
「阿羅彦様、突然におでかけと伺って愕きましたが、まさか、紗国王とお会いになっていらしたとは」
かなり焦った顔を見せたユーチェンは、百合彦の手を引いて現れた。
一度解いた外出着をまた正装に着替え、慌てて来たのだろう。
「俺も突然の訪問に驚いたよ」
「しかも、これからですか?本当に?」
元々色白のユーチェンがさらにその表を蒼白にして、少し震える声で囁いた。
「ああ、君は、城石家の娘だとか……紗国出身の者が阿羅国の王妃とは鼻が高い」
気さくな表情で紗国王はユーチェンに話しかける。
「はい、城石家の末娘でございます。私のこともご存じとは……光栄に思います」
スッと背筋を伸ばし、先ほどまでの慌てた姿を微塵も感じさせない立派な受け答えに、俺は思わず吹き出しそうになる。
「もちろんだよ、君の父には城で話すこともあるのだ。城石家は名門なのだからね」
「まあ、ありがとう存じます」
美しい礼をする母の姿を見て、真似るように百合彦も同じく礼をすると、それを見て紗国王は目を細めた。
「ほう……かわいらしい王子だ。阿羅彦殿は立派な跡取りに恵まれて幸せでしょう」
「ええ、異論はございません」
「さあ、私と共に馬車にのりましょう。阿羅国王妃と王子もぜひに」
「お受けいたします」
ユーチェンは百合彦を連れ、当然のようにエスコートされるがまま紗国王の用意した二番目の馬車に乗り込んだ。
俺は、「さあ」とにこやかに手を差し伸べる紗国王とともに1番豪華な美しい馬車に乗り込む。
中はかなりの広さで、設えも美しい。
決して華美ではない、歴史の深さからくる重厚感と趣味の良さが素晴らしい。
「阿羅国から他国へ渡る際には、紗国を通るとか」
「ええ、森のくぎりがちょうどよく紗国に面しているのですよ。反対側の海に抜けることもできるのですが、断崖絶壁で港を作ることができませんのでね」
「なるほど……まったくもって、想像のできない場所ですね……我もあの深く大きな森を飛翔していけるのだろうか」
紗国王は目線を上げて窓の外を見た。
そこからは少しだけ深い森の一端が見える。
「紗国王ともあれば、不可能なことはありませんよ。それに一度に飛ぶ必要はありません。途中で何度か休めばよいのです。持ち運びの天幕や道中の食事も持てば良いことです」
「ふむ……」
「ご興味がおありですか?」
「それは、とてもありますね。新しくできた国はどこからも出入りが難しい秘境で、しかも一番近い玄関口は我が国に面した森なのだから」
紗国王は片眉を上げておどけたように言った。
「それにね、紅葉が、あなたの国を非常に気にするのです」
「私や、私の国にどうしてそこまで」
「それは、私が聞きたいことです、妬けますよ、ほかの男子を気にするなどと」
そういって朗らかに言った。
あれこれと話すうちに、きゅっと静かに車が止まり、扉が静かに開けられた。
「さあ、我が紗国城にようこそ。歓迎いたしますよ」
紗国王は旧友のように親し気に微笑んだ。
実際アオアイで何度か国賓用の馬車に乗ったが、それと同等に思ったし、俺には十分美しく立派だと思ったものだ。
しかし、目の前にある紗国王の白く輝く馬車を見て、思わず息を呑んだ。
「阿羅彦様、突然におでかけと伺って愕きましたが、まさか、紗国王とお会いになっていらしたとは」
かなり焦った顔を見せたユーチェンは、百合彦の手を引いて現れた。
一度解いた外出着をまた正装に着替え、慌てて来たのだろう。
「俺も突然の訪問に驚いたよ」
「しかも、これからですか?本当に?」
元々色白のユーチェンがさらにその表を蒼白にして、少し震える声で囁いた。
「ああ、君は、城石家の娘だとか……紗国出身の者が阿羅国の王妃とは鼻が高い」
気さくな表情で紗国王はユーチェンに話しかける。
「はい、城石家の末娘でございます。私のこともご存じとは……光栄に思います」
スッと背筋を伸ばし、先ほどまでの慌てた姿を微塵も感じさせない立派な受け答えに、俺は思わず吹き出しそうになる。
「もちろんだよ、君の父には城で話すこともあるのだ。城石家は名門なのだからね」
「まあ、ありがとう存じます」
美しい礼をする母の姿を見て、真似るように百合彦も同じく礼をすると、それを見て紗国王は目を細めた。
「ほう……かわいらしい王子だ。阿羅彦殿は立派な跡取りに恵まれて幸せでしょう」
「ええ、異論はございません」
「さあ、私と共に馬車にのりましょう。阿羅国王妃と王子もぜひに」
「お受けいたします」
ユーチェンは百合彦を連れ、当然のようにエスコートされるがまま紗国王の用意した二番目の馬車に乗り込んだ。
俺は、「さあ」とにこやかに手を差し伸べる紗国王とともに1番豪華な美しい馬車に乗り込む。
中はかなりの広さで、設えも美しい。
決して華美ではない、歴史の深さからくる重厚感と趣味の良さが素晴らしい。
「阿羅国から他国へ渡る際には、紗国を通るとか」
「ええ、森のくぎりがちょうどよく紗国に面しているのですよ。反対側の海に抜けることもできるのですが、断崖絶壁で港を作ることができませんのでね」
「なるほど……まったくもって、想像のできない場所ですね……我もあの深く大きな森を飛翔していけるのだろうか」
紗国王は目線を上げて窓の外を見た。
そこからは少しだけ深い森の一端が見える。
「紗国王ともあれば、不可能なことはありませんよ。それに一度に飛ぶ必要はありません。途中で何度か休めばよいのです。持ち運びの天幕や道中の食事も持てば良いことです」
「ふむ……」
「ご興味がおありですか?」
「それは、とてもありますね。新しくできた国はどこからも出入りが難しい秘境で、しかも一番近い玄関口は我が国に面した森なのだから」
紗国王は片眉を上げておどけたように言った。
「それにね、紅葉が、あなたの国を非常に気にするのです」
「私や、私の国にどうしてそこまで」
「それは、私が聞きたいことです、妬けますよ、ほかの男子を気にするなどと」
そういって朗らかに言った。
あれこれと話すうちに、きゅっと静かに車が止まり、扉が静かに開けられた。
「さあ、我が紗国城にようこそ。歓迎いたしますよ」
紗国王は旧友のように親し気に微笑んだ。
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