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第五章 アオアイへ
帰国へ
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よく晴れた日、アオアイからの出航となった。
美しいアオアイの街を振り向いて見上げる。
港の近くは平民たちが所狭しと屋台を広げ、朝早くから賑わっていた。
小さな獣人達がせわしなく働き、笑顔ですれ違う人々は挨拶を交わしている。
この国の平和を守るものは、心と魔力を鎮める石の存在、そして、皆が敬愛する王家の存在。
そのどちらかが欠けてもいけないのだろう。
俺の国は、まだまだ危うい。
「阿羅彦様」
後ろから声をかけられて振り向くと、真剣な顔をした玲陽とその部下が並んでいた。
今日これより再び紗国に向けて帰路につく我々と違って、彼らはこの後瀬国への便に乗る。
そして、外交の道筋をつけてくるのだ。
玲陽はきらきらと輝くように瞳をうるませ、そして力のこもった声で別れを告げる。
「阿羅彦様、必ずや阿羅国の地位の高め、そして利となるよう、働いてまいります」
「ああ、玲陽。お前のほかにはできるものはない。期待しているぞ」
「はっ」
玲陽ほか5名の部下は頭を下げ、腰を折った。
その時、涼やかな鈴の音が聞こえ、ふと目をやると、ひときわ大きな豪奢な馬車が港に入ってきた。
やがて俺の間の前で止まった馬車の扉を従者が開くと、マドア王太子がゆっくりと降り立った。
「……来てしまいましたよ。あなたが国に戻られる日がこんなにも寂しく思えるとはね」
そういって悪戯っ子のように声をあげて笑った。
その晴れやかな姿に天幕の下で働いていた平民や、港の者も皆が嬉しそうに手を止めじっと見つめている。
彼がいかに国民に愛されているか、その様を見るだけでもわかるというものだ。
「これはこれはマドア王太子殿下、わざわざのお見送りとはまた」
「ふふ……今度いらしたときにはぜひ、我が友らにも紹介したいと思うのですが、どうでしょうか?」
「友……ですか?」
「ええ、学園で共に学んだ学友です、それぞれの国で要職に就いているものや、就く予定の者ら、つまり彼らは世界の次世代の顔と言えましょう」
俺は微かに目を見開き、そして納得した。
こんな風に衆人環視の中、わざわざこのことを告げる意味は、アオアイ国として阿羅国の王を友人として認めたと、暗にそう表明しているのだ。
マドアのさりげない、だが、力強い助力に素直に嬉しいと思った。
「それはそれは……なんという光栄なことでありましょう」
「友らも、あなたに会えばきっと、あなたの魅力に取りつかれるに違いありませんよ」
「それならばいいのですが」
そういって固い握手をし、マドア王太子が見守る中、俺は船へと足を進めた。
緩やかな斜面を歩き、船への入口へ向かいながら、もう一度振り向くと、それに気づいたマドアは笑顔で手を振った。
昨日別れるときに、別れがたいと寂し気に眦に涙を浮かべていたのを思い出し、愛おしい思いで心が満たされる。
「マドア殿下は……阿羅彦様にご執心なのですね」
横に立つユーチェンがそっと俺に身を寄せ呟いた。
視線をやると、からかうように微笑んだ。
美しいアオアイの街を振り向いて見上げる。
港の近くは平民たちが所狭しと屋台を広げ、朝早くから賑わっていた。
小さな獣人達がせわしなく働き、笑顔ですれ違う人々は挨拶を交わしている。
この国の平和を守るものは、心と魔力を鎮める石の存在、そして、皆が敬愛する王家の存在。
そのどちらかが欠けてもいけないのだろう。
俺の国は、まだまだ危うい。
「阿羅彦様」
後ろから声をかけられて振り向くと、真剣な顔をした玲陽とその部下が並んでいた。
今日これより再び紗国に向けて帰路につく我々と違って、彼らはこの後瀬国への便に乗る。
そして、外交の道筋をつけてくるのだ。
玲陽はきらきらと輝くように瞳をうるませ、そして力のこもった声で別れを告げる。
「阿羅彦様、必ずや阿羅国の地位の高め、そして利となるよう、働いてまいります」
「ああ、玲陽。お前のほかにはできるものはない。期待しているぞ」
「はっ」
玲陽ほか5名の部下は頭を下げ、腰を折った。
その時、涼やかな鈴の音が聞こえ、ふと目をやると、ひときわ大きな豪奢な馬車が港に入ってきた。
やがて俺の間の前で止まった馬車の扉を従者が開くと、マドア王太子がゆっくりと降り立った。
「……来てしまいましたよ。あなたが国に戻られる日がこんなにも寂しく思えるとはね」
そういって悪戯っ子のように声をあげて笑った。
その晴れやかな姿に天幕の下で働いていた平民や、港の者も皆が嬉しそうに手を止めじっと見つめている。
彼がいかに国民に愛されているか、その様を見るだけでもわかるというものだ。
「これはこれはマドア王太子殿下、わざわざのお見送りとはまた」
「ふふ……今度いらしたときにはぜひ、我が友らにも紹介したいと思うのですが、どうでしょうか?」
「友……ですか?」
「ええ、学園で共に学んだ学友です、それぞれの国で要職に就いているものや、就く予定の者ら、つまり彼らは世界の次世代の顔と言えましょう」
俺は微かに目を見開き、そして納得した。
こんな風に衆人環視の中、わざわざこのことを告げる意味は、アオアイ国として阿羅国の王を友人として認めたと、暗にそう表明しているのだ。
マドアのさりげない、だが、力強い助力に素直に嬉しいと思った。
「それはそれは……なんという光栄なことでありましょう」
「友らも、あなたに会えばきっと、あなたの魅力に取りつかれるに違いありませんよ」
「それならばいいのですが」
そういって固い握手をし、マドア王太子が見守る中、俺は船へと足を進めた。
緩やかな斜面を歩き、船への入口へ向かいながら、もう一度振り向くと、それに気づいたマドアは笑顔で手を振った。
昨日別れるときに、別れがたいと寂し気に眦に涙を浮かべていたのを思い出し、愛おしい思いで心が満たされる。
「マドア殿下は……阿羅彦様にご執心なのですね」
横に立つユーチェンがそっと俺に身を寄せ呟いた。
視線をやると、からかうように微笑んだ。
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