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第五章 アオアイへ
訪れ4 R18
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俺はじっとその男を見つめた。
男がこんなにも乱れ俺を求めているのに、少しも心が動かされない。
「脱げと言われて、素直に脱ぐのだな」
「あ、あなたに言われたのなら……」
喘ぎながら、苦しそうにこちらに手を差し伸べて真っ赤な顔でヘラっと笑った。
媚びるその姿に嫌悪感を感じた。
「実に……見苦しいな」
「!」
男は衝撃を受けたようだったが、体の昂ぶりを抑えきれずに細かく震えた。
俺はもう一度男の股間に手をやり下履きの上から固くなったモノをこすりあげた、今度は速度を上げて。
「あっ……あっ!」
「ここもか?」
もう片方の手で右の乳首をひねりあげると、男はひと際大きな声を出した。
「皆に、その声が聞こえてしまっていいのか?」
俺は意地悪く聞いて、そして手を止めスッと立ち上がった。
「仕舞え」
男は息も絶え絶えに切なそうに見上げる。
寸止めされて今にも気が狂いそうになっているのがわかる。
「その、無様な姿を弟に見られたくなければ、身支度を整えすぐに立ち去れ、そしてもう二度と、玲陽に手を出すな。俺が許さない」
「な……」
急な俺の変化に戸惑って動けない男にもう一度念押しした。
「俺は、愛した男しか抱かない。俺はお前など愛していないし、この先お前を愛することもない。お前が淫らに俺を誘っても、無駄だ」
「そ、そんな……ではなぜ、私をこんなふうに」
俺はフッとこらえきれずに笑ってしまった。
俺の催淫に見事にあてられて、この男もかわいそうにと、そう思う気持ちも少しはある。
だが、こいつが玲陽にしたことを許せない。
「出ていけ。二度と阿羅国にかかわるな」
「……そんな……」
男ははらはらと涙を流し、そしてよろよろと衣を集めて立ち上がった。
俺はテーブルにあった鈴を鳴らした。
リンと高く響いた音で、静かに扉が開かれ迎賓館付きの使用人が姿を現した。
「この男の従者を呼べ」
「はい、かしこまりました」
使用人は何を見ても動じないという姿勢でにこやかに微笑むと静かに消えた。
まもなくバタバタと廊下を走る音が聞こえてきて、二人の男が勢いよく入室してきた。
「お前たちの主人は、他国の王との語らいの場で、いきなりこのようになった。なぜだろうか?」
「え……」
従者らは目を丸くして、主人を見た。
彼らの主人は床に座ったまま自ら脱いだ衣服を抱きかかえ、真っ赤な顔で息も絶え絶えだ、どう見ても尋常ではない。
「こ……このようなこと、許されるとお思いか!」
一人の大柄な男が俺にきつい視線を向けて怒鳴りつけてきた。
俺は「困ったねえ」と溜息をついて、そしてゆっくりと椅子に座った。
小さな使用人が熱い紅茶をもう一度入れてくれたので、ありがたくそれを手に取る。
「あ、あなた……他国の貴族に手を出したのですか!我らが主に何をしたのです!もしや、茶に一服盛ったのではありませんか?!」
「一服盛る?」
俺は不思議な言葉を聞いたかのようにゆっくりとティーカップをお皿に戻し、そして従者に向き直った。
「不思議なことを言うのだな。ここはアオアイだよ」
ハッとした顔の従者はお互いを見やった。
「ここが我が国ならばそう思われても不思議ではないだろうがね、なんせ沈滞石に囲まれたこの館で、よもや一服盛るなどあり得ないだろう。そうではないのか?」
「い……いや、しかし……」
「それに……すぐにそう思い当たるということは……よほどいつもの手として使い慣れているのだろうねぇ。例えば久しぶりに会いまみえる弟に一服盛るなんてのも、ラハームではありえるってことか?」
従者は一瞬怯んだが、ようやく上半身裸のまま赤く火照った体を晒す主人に服を着せようと動き出した。
「し、しかし、普通にしていてこのようにはなりますまい……」
「うん……そうだよねえ、実に不思議だ」
「失礼を承知でお尋ねします。あなたは催淫の魔術をお使いになったのでは?」
従者の問いに俺は軽く首を傾げた。
「さあ……そんな魔術があるのか?知らなかった」
「知らなかったなどと、しらじらしい」
吐き捨てるようにそういった従者らは、俺を睨みつけてきた。
「そろそろ……立場をわきまえてほしいのだが、どうだ?」
「……立場?」
一瞬怯んだ従者たちは、まるで正気を取り戻さない主人を抱えるようにして立ち上がらせ、そして俺に向き合った。
「あなたはご自分を他国の王と言われるが……それはまだ承認されたことではないのでしょう?今のところせいぜい、地方の豪族の主といったところではありませんか」
「それはそれは見くびられたものだね」
「こちらは名のある樹家です。ラハームでも指折りの高位貴族ですぞ」
「だから、わかってないのはそちらだよ」
「何をです」
「アオアイの王太子殿下がね、この後の宴で紹介してくれるのだよ、私のことを阿羅国の王としてね」
従者をハッと息をのんで二人で目を合わせた。
「つまり……その」
「ああ、阿羅国を国として認め、そして今後国交をという話になっている。認めてもらえたわけだ。つまりここにいる私は、そなたらからしたら、他国の王だ。こんなふうに突然訪ねてきて気楽に会おうとするのも、私の前で服を脱ぐのもどうかと思うのだが、わかってくれるかな?」
従者らは一瞬固まったが、すぐに状況を正しく理解し、直立すると頭を下げた。
「それと……今後一切うちの玲陽にちょっかいを出さないでほしい。言ってる意味はわかるね?」
「……っは」
「あれは樹家の者ではなく、今や阿羅国の臣下として私の元にいるのだ。そなたらが気軽に一服盛って眠らせて良い相手ではないよ。国際問題になるからね」
「……だ、だが、弟には違いないのだ」
喋りだした男を必死に止め、従者らは頭を低くしたまま退室の許可を求めた。
「ああ、いいよ、行きたまえ、こちらも宴に向かう準備があるからね、そしてくれぐれも、私の言葉を忘れないように、わかったね」
男がこんなにも乱れ俺を求めているのに、少しも心が動かされない。
「脱げと言われて、素直に脱ぐのだな」
「あ、あなたに言われたのなら……」
喘ぎながら、苦しそうにこちらに手を差し伸べて真っ赤な顔でヘラっと笑った。
媚びるその姿に嫌悪感を感じた。
「実に……見苦しいな」
「!」
男は衝撃を受けたようだったが、体の昂ぶりを抑えきれずに細かく震えた。
俺はもう一度男の股間に手をやり下履きの上から固くなったモノをこすりあげた、今度は速度を上げて。
「あっ……あっ!」
「ここもか?」
もう片方の手で右の乳首をひねりあげると、男はひと際大きな声を出した。
「皆に、その声が聞こえてしまっていいのか?」
俺は意地悪く聞いて、そして手を止めスッと立ち上がった。
「仕舞え」
男は息も絶え絶えに切なそうに見上げる。
寸止めされて今にも気が狂いそうになっているのがわかる。
「その、無様な姿を弟に見られたくなければ、身支度を整えすぐに立ち去れ、そしてもう二度と、玲陽に手を出すな。俺が許さない」
「な……」
急な俺の変化に戸惑って動けない男にもう一度念押しした。
「俺は、愛した男しか抱かない。俺はお前など愛していないし、この先お前を愛することもない。お前が淫らに俺を誘っても、無駄だ」
「そ、そんな……ではなぜ、私をこんなふうに」
俺はフッとこらえきれずに笑ってしまった。
俺の催淫に見事にあてられて、この男もかわいそうにと、そう思う気持ちも少しはある。
だが、こいつが玲陽にしたことを許せない。
「出ていけ。二度と阿羅国にかかわるな」
「……そんな……」
男ははらはらと涙を流し、そしてよろよろと衣を集めて立ち上がった。
俺はテーブルにあった鈴を鳴らした。
リンと高く響いた音で、静かに扉が開かれ迎賓館付きの使用人が姿を現した。
「この男の従者を呼べ」
「はい、かしこまりました」
使用人は何を見ても動じないという姿勢でにこやかに微笑むと静かに消えた。
まもなくバタバタと廊下を走る音が聞こえてきて、二人の男が勢いよく入室してきた。
「お前たちの主人は、他国の王との語らいの場で、いきなりこのようになった。なぜだろうか?」
「え……」
従者らは目を丸くして、主人を見た。
彼らの主人は床に座ったまま自ら脱いだ衣服を抱きかかえ、真っ赤な顔で息も絶え絶えだ、どう見ても尋常ではない。
「こ……このようなこと、許されるとお思いか!」
一人の大柄な男が俺にきつい視線を向けて怒鳴りつけてきた。
俺は「困ったねえ」と溜息をついて、そしてゆっくりと椅子に座った。
小さな使用人が熱い紅茶をもう一度入れてくれたので、ありがたくそれを手に取る。
「あ、あなた……他国の貴族に手を出したのですか!我らが主に何をしたのです!もしや、茶に一服盛ったのではありませんか?!」
「一服盛る?」
俺は不思議な言葉を聞いたかのようにゆっくりとティーカップをお皿に戻し、そして従者に向き直った。
「不思議なことを言うのだな。ここはアオアイだよ」
ハッとした顔の従者はお互いを見やった。
「ここが我が国ならばそう思われても不思議ではないだろうがね、なんせ沈滞石に囲まれたこの館で、よもや一服盛るなどあり得ないだろう。そうではないのか?」
「い……いや、しかし……」
「それに……すぐにそう思い当たるということは……よほどいつもの手として使い慣れているのだろうねぇ。例えば久しぶりに会いまみえる弟に一服盛るなんてのも、ラハームではありえるってことか?」
従者は一瞬怯んだが、ようやく上半身裸のまま赤く火照った体を晒す主人に服を着せようと動き出した。
「し、しかし、普通にしていてこのようにはなりますまい……」
「うん……そうだよねえ、実に不思議だ」
「失礼を承知でお尋ねします。あなたは催淫の魔術をお使いになったのでは?」
従者の問いに俺は軽く首を傾げた。
「さあ……そんな魔術があるのか?知らなかった」
「知らなかったなどと、しらじらしい」
吐き捨てるようにそういった従者らは、俺を睨みつけてきた。
「そろそろ……立場をわきまえてほしいのだが、どうだ?」
「……立場?」
一瞬怯んだ従者たちは、まるで正気を取り戻さない主人を抱えるようにして立ち上がらせ、そして俺に向き合った。
「あなたはご自分を他国の王と言われるが……それはまだ承認されたことではないのでしょう?今のところせいぜい、地方の豪族の主といったところではありませんか」
「それはそれは見くびられたものだね」
「こちらは名のある樹家です。ラハームでも指折りの高位貴族ですぞ」
「だから、わかってないのはそちらだよ」
「何をです」
「アオアイの王太子殿下がね、この後の宴で紹介してくれるのだよ、私のことを阿羅国の王としてね」
従者をハッと息をのんで二人で目を合わせた。
「つまり……その」
「ああ、阿羅国を国として認め、そして今後国交をという話になっている。認めてもらえたわけだ。つまりここにいる私は、そなたらからしたら、他国の王だ。こんなふうに突然訪ねてきて気楽に会おうとするのも、私の前で服を脱ぐのもどうかと思うのだが、わかってくれるかな?」
従者らは一瞬固まったが、すぐに状況を正しく理解し、直立すると頭を下げた。
「それと……今後一切うちの玲陽にちょっかいを出さないでほしい。言ってる意味はわかるね?」
「……っは」
「あれは樹家の者ではなく、今や阿羅国の臣下として私の元にいるのだ。そなたらが気軽に一服盛って眠らせて良い相手ではないよ。国際問題になるからね」
「……だ、だが、弟には違いないのだ」
喋りだした男を必死に止め、従者らは頭を低くしたまま退室の許可を求めた。
「ああ、いいよ、行きたまえ、こちらも宴に向かう準備があるからね、そしてくれぐれも、私の言葉を忘れないように、わかったね」
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